音楽ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯
4人で振り返る“新しいデビューアルバム”
筋肉少女帯が前作「蔦からまるQの惑星」以来、約4年4カ月ぶりのニューアルバム「THE SHOW MUST GO ON」を完成させた。大槻ケンヂが作詞を担当したももいろクローバーZのカバー「労働讃歌」、アーバンギャルドの浜崎容子がゲスト参加した「霊媒少女キャリー」などを収録した本作には、昨年の結成25周年を経てたどり着いた、最新型の筋少が表現されている。
今回のインタビューではメンバーの大槻ケンヂ(Vo)、橘高文彦(G)、本城聡章(G)、内田雄一郎(B)が全員集合。「THE SHOW MUST GO ON」を中心にしながら、現在のバンドのモードをたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 森朋之
「筋少はこういうバンドなんだな」って自分たちも確認できた
──ニューアルバム「THE SHOW MUST GO ON」が完成しました。約4年4カ月ぶりのアルバムということですが、そんなに経った感じはしないんですよね。
大槻 この間に「4半世紀」(「公式セルフカバーベスト 4半世紀」)もあったし、各自いろいろCDを出してますからね。
橘高 とはいえ4年4カ月っていえば、中学生は高校生になり、大学生は卒業して社会に出るほどの時間だから。そこはもう、「お待たせしてすみませんでした」という気持ちはありますよ。筋少もフェスとかに出て、若いお客さん、10代の人たちも観に来てくれるようなってますからね。その人たちにとっての4年はデカいだろうな、と。
──このアルバムは期待を裏切らない素晴らしさだと思います。現在の筋肉少女帯のモードが強く反映されている作品だと思いますが、メンバーの皆さんの手応えはどうですか?
橘高 去年がデビュー25周年だったから、約1年かけて筋少の活動をいっぱいやったんですね。同時に“筋肉少女帯 拡散波動砲”という名義で、それぞれが別にやっているバンドにほかのメンバーがゲストとして参加するということもあって。そういう経験の中で「筋肉少女帯はこういうバンドなんだな」って自分たちも確認できたんですよね。そのせいなのか、客観的に見て「筋少らしいアルバムができたな」と思いましたね、今回は。それを意図していたわけではないんだけど、去年1年の活動が効いたのかなって、制作が終わったときに感じました。
──確かに筋少の“らしさ”は強く出てますよね。
本城 ありがとうございます。去年1年やってみて、個人的には「ファンの皆さんに支えられてるな」ということがヒシヒシと伝わってきて。それを曲作りにも活かせたなと思うし。レコーディングに入ってからも、「まだまだ新しいアプローチができる」という手応えもあったんですよね。例えば「ムツオさん」とか。
内田 え、そこ?
橘高 「ムツオさん」は空バカ(空手バカボン)っぽいなって思ったけどね(笑)。
本城 ああいう曲をこのバンドでやることはなかったので。でも、いざやってみると、すごく筋少っぽくなるっていう。まだまだいろんな可能性があるし、30周年に向かっていけるなという手応えはありました。
これはKISSというよりも永ちゃんじゃないか?
──異色の楽曲「ムツオさん」のことは後ほど詳しくお聞きしたいと思います。内田さん、大槻さんはどうですか? 今回のアルバムに対して。
内田 相変わらず、あまり打ち合わせもなく制作に入ったんですけど、全体的に勢いがあって、ちょっとハード寄りかなって思います。「ムツオさん」は別にして(笑)。25年経ってさらに勢いを感じさせる、新しいデビューアルバムなんじゃないかなって。
橘高 おっ!
内田 「まだやるの?」っていう人もいるかもしれないけど(笑)、すごくイイ感じですね。
大槻 僕らは26年前に「仏陀L」というアルバムでデビューしたんですが、言うならアングラパンクだったんですよね、当時は。その後、いろいろとバンドスタイルの変遷があったわけですが、今の筋少はアングラパンクもありつつ、ゴージャスなヘヴィメタルの部分も持ってると思うんですね。その後者の部分が、再結成以降、強く押し出されてるのかなという感じがあって。今回のアルバムは1曲目からそれが出ていて、26年の時の流れを感じるというか、思えば遠くへ来たもんだとシミジミ思いましたね、うん。
──2006年の再結成以降に筋少を知った人は、ヘヴィメタルをルーツに持っているバンドだと捉えているかもしれないですよね。
大槻 まあ、今もアングラだけどね。さっき話に出ていた「ムツオさん」とかもさ、聴いた人が「ムツオさんって誰だろう?」って調べると、「はあ……?」ってことになると思うんですよ。以前から知ってる人は「変わってないな、このバンドは」ってニンマリするだろうし(笑)。そういう要素はたくさんありますよ。例えば「涅槃で待ってろ」(「ニルヴァナ」)という歌詞も、若い人には……。
本城 わかんないだろうね。
橘高 それも各自で検索してもらって。筋少からの宿題です(笑)。
大槻 本当は「おやじ、涅槃で待つ」だけどね。
──そうですね(笑)。じゃあ、「吉原炎上」もわからないかも。
大槻 でも、僕も五社英雄監督の映画は観たことないんですよ。
本城 あ、そうなんだ。
大槻 友近さんがモノマネしてるのも見たことない(笑)。あの曲はね、「ブラタモリ」で吉原の特集をやってたんですよ。で、「面白いなー。昔すごい場所があったんだな」って思って。この曲はおいちゃん(本城)が「KISSみたいな曲」って持ってきたんです。仮のタイトルも「KISS」で。
橘高 アメリカンハードロック的なリフだったからね。
大槻 でも僕はそれを聴いて、「いや、これはKISSというよりも永ちゃんじゃないか?」と思って。
橘高 それでどうして「吉原炎上」なんだ?っていうね(笑)。
本城 でも、永ちゃん感は十分出てるよね。ライブではぜひ、タオルを投げてもらいたい(笑)。
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- ニューアルバム「THE SHOW MUST GO ON」2014年10月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 「THE SHOW MUST GO ON」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / TKCA-74148 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3086円 / TKCA-74152 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- オーディエンス・イズ・ゴッド
- 労働讃歌
- ゾロ目
- 霊媒少女キャリー
- ムツオさん
- みんなの歌
- 月に一度の天使(前編)
- 愛の讃歌
- 月に一度の天使(後編)
- 恋の蜜蜂飛行
- 吉原炎上
- 気もそぞろ
- ニルヴァナ
初回限定盤 DVD収録内容
- ゾロ目(MUSIC VIDEO)
- LIVE映像7曲(全曲初映像化!)
2014.4.12 筋少2枚組ダブルジャケット 1枚目
「レア過ぎ盤、、、鉄道少年の飼い犬はペテンその他」at TSUTAYA O-EASTより- ペテン
- 鉄道少年の憩
- 飼い犬が手を噛むので
- ベティー・ブルーって呼んでよね
- モコモコボンボン(Vo.内田 Ba.大槻 Ver.)
- リテイク
- ヘドバン発電所
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表。2014年には4年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「THE SHOW MUST GO ON」をリリースする。