ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯

オーケン&うっちーが振り返る4半世紀

急激に忙しくなると精神的にどうかしてしまう人は多いよね

──復活後の筋少のメンバーのインタビュー本「筋肉少女帯自伝」を読んで思ったのが、新生UWFで前田日明が浮いていく感じに似てるのかなと思ったんですよ。

大槻 なるほどねえ!

──「あいつはメディアにばっかり出て! 俺たちは道場に来て練習してるのに!」みたいな。

大槻 そうだよ! そんな感じだった?

内田 それはありますね。まあ、忙しかったからしょうがないんだけど。

大槻 テンパッてたんだよね。

吉田豪

──前田日明サイドとしては、「俺は宣伝のためにやってるんだよ!」みたいな思いもあるだろうし。

大槻 あの頃、僕はもっと「筋少の宣伝のためにタレント業やってるんですよ」って発言すればよかったんだね。

内田 でも、有頂天という先輩がいたから多少はね。

大槻 えー(笑)。あっ、バンドがスケジュールもないのに、なんでケラさんは芝居で半年スケジュール押さえられてるんだってヤツですか。

内田 芝居がガーンと入っちゃうから、バンドの活動ができない。

大槻 「ケラさんという先輩がいたから」(笑)。いや、そんな、先輩に悪いよ(笑)。

内田 いたから、それを見て、オーケンもがんばってるのねとは思うが……その頃は、橘高くんもなかなか病があって来れなくなって。

──「筋肉少女帯自伝」を読んでビックリしました。あんなに大変だったんだって。

内田 で、2人いない。

大槻 おいちゃん(本城聡章)もメンタルな問題があったようななかったような。

内田 まあね。

大槻 急激に忙しくなると心のキャパシティを超えちゃうんですよ、情報量がね。そうすると、ちょっと精神的にどうかしてしまう人っていうのは多いよね。ヤングはね。それは一般のお仕事でも誰でもそうでしょうけど。内田くんはそこらへん、自分に鍵をかけるというか、うまいんだよね。

──リアルにのほほんとできる人というか。

大槻 それツッコんでやってくださいよ!

起死回生を狙って大失敗するんですよ

──ソロなり、最初の特撮もそうですけど、常に内田さんとは一緒だったイメージがありますけど。

大槻 ソロのときは最初そうでしたね、内田くんに弾いてもらってたな。そのあと佐藤研二さんとかいろんな方とやりますけどね。

内田 その94年ぐらいのときに橘高もソロを出してて、それにも引っ張られました。

──どっちにも顔を出せるメンバーとして。

内田 誘いやすいんでしょうね。

大槻 今もいっぱいやってますからね。

内田 ね、ちょっとやりすぎだよな。

──幻の筋少の第3期になるはずだったのも、この2人で。

大槻 ああ、新筋肉少女帯ね。

内田 よくご存知ですね、そのへんの微妙なことも。

大槻ケンヂ(Vo)

大槻 あれは2番目に潰れた事務所の社長が「大槻のソロの契約を取ってきた。でも、それは筋肉少女帯という名義じゃないとできないって条件なんだ」と。「じゃあ内田くんもいればオリジナルメンバーだから、筋肉少女帯を新しくやりましょう」みたいなことを言ってたら、しばらくして急に社長が「あ、あれは別に筋少じゃなくていいから」「はあ?」みたいな。それが特撮になって。

内田 ちゃんとみんなで話してないことだから、各人でやっててわけがわからないんだよね。

大槻 そうだったね。

──内田さんもよく理解しないままだった、と。

内田 そのへん僕は聞いてなくて。別プロジェクトをやりつつ、みたいな感じで。で、社長も暗躍してるわけではなく、社長は社長で思惑があったんだろうけどっていうところですけど、幻すぎるよね。

大槻 潰れかけた事務所の社長っていうのは、起死回生を狙って変なことするんですよ。WJみたいな。

内田 X-1だよ。

──ダハハハハ! 金網でガチをやるぞ、と(笑)。

大槻 X-1をやろうとするんですよ。ボロい金網でね。

──大失敗するに決まってるのに。

大槻 そう、みんなそう。ド真ん中のつもりで。

内田くんは特撮に乗り気じゃないなと思ったんだよね

──それによって、一時は大槻さんと内田さんの間に決定的な溝ができちゃうわけじゃないですか。

大槻 そうですね。僕は今だから言うけど、あのとき内田くんは特撮に乗り気じゃないなと思ったんだよね。

内田 うん(あっさりと)。

大槻 あ、そうだったんだ。ハッキリ認められた。

内田雄一郎(B)

内田 だからもともとの90年代の筋少と呼ばれるメンバーがなし崩しに終わっちゃって、ライブパフォーマンス的には非常によかったんですよ。だけど、なんとなく感じがよくないなっていう中で、なんとなく終わってったようにバラけてしまって、さっきの社長が言ってた幻の話でさらにグチャグチャになってしまって、これはちょっと申し訳ないな、と。お客様に対してこれはわけがわからない状況になってしまってるなというのを、ふつふつと引きずってたわけですよ。で、オーケンはきっとその頃は、新しくバンドやろうって前向きだったんだけど、僕はちょっと引いてたってことですね。で、特撮はエディがやるというので。だけど、どうしても引っ掛かってるところはあって、悶々としていましたね。

大槻 でもあれから特撮のアーリー(ARIMATSU)は今や世界のアーリーになり、VAMPSで世界を飛び回り、ナッキー(NARASAKI)はももいろクローバーZをはじめ、人気作曲家となり、なんか面白いよね。

内田 面白いよね。

大槻 で、内田くんは筋肉少女帯になり。

──本城さんと筋少を受け継ぐことになって。

内田 形的にそうしとくのがいいかなっていう。

──留守を守るような感じで。

内田 うん。別に何もしないんですけどね。

ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」/ 2013年5月29日発売 / 3000円 徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73905
収録曲
  1. 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
  2. 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
  3. 日本印度化計画
  4. 踊るダメ人間
  5. 釈迦
  6. 香菜、頭をよくしてあげよう
  7. 機械
  8. 再殺部隊
  9. 蜘蛛の糸
  10. キノコパワー
  11. パノラマ島へ帰る
  12. くるくる少女
  13. 孤島の鬼
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。