ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯

オーケン&うっちーが振り返る4半世紀

筋少は弾数合わせでメジャーデビューしたんだと思う

大槻 例えばデビューに関しても、僕が言うといろんなレコード会社から話があって、VAPレコードの人がTOY'S FACTORYっていうのを立ち上げるから、ライダースとジュンスカともう1バンド必要みたいなことを言っていて、渋谷の喫茶店でダラダラしゃべってて、しゃべることがないんで、「こないだの『BOMB』の菊池桃子、最高ですね」みたいなエロ話を振ったら。

──同じVAPだから(笑)。

大槻 いや、それ忘れてて。そしたら「桃子は我が社のアーティストで」とか、ちょっと怒られた感じになって。

──いきなりしくじって(笑)。

大槻 で、VAPの人がもう帰ろうとするんで、「あの、僕らのレコーディングどうなったんでしょう?」って言ったら、「3月レコーディング、6月デビューでいいんじゃない?」って言われて、それでデビューが決まったの。僕はそういうふうに言ってたんですが、内田さんは?

内田雄一郎(B)

内田 その頃はオーケンがデビューに関してすごくナーバスになっていたんで。1年ぐらいあったのかな、そういうあやふやな時期が。

大槻 わりと内田くんは焦ってなかったように見えました。

内田 いや、呑気でしたよ。

──大槻さんには焦りが見えましたよね、とにかくデビューしたいっていう。

大槻 だってデビューしないと大学も中退が決まってたから、親に怒られちゃうもん! ウッチーのところは怒られないのかなーと思ったんだよね。

──当時、「宝島」で「どこかメジャーデビューさせてくれ!」って大槻さんがアピールしてるインタビューを読んだ記憶がありますよ。

大槻 ああ、そうかもしれないな。内田くんは将来を不安がらないように見えるけど、僕は将来が不安でたまらないタイプだから、そこの違いはありますよね。エディ(三柴理)はまたちょっと違う感じだったからな。エディぐらいになるとピアノでなんらかの仕事はあるからね。

──大槻さんはまだ文章も書いていない、一番あやふやな時期で。

大槻 そうですよ。

──トイズもここまで大きくなるとは誰も思ってない頃ですからね。

大槻 うん、思ってなかった。トイズはホントに手作りな感じというか、VAPの中の1レーベルだったんで。これを言うとまた話を盛ってるって言われるんだけど、あのときはトイズはジュンスカをデビューさせたかったんですよね。

──でしょうね。

大槻 で、ライダースと筋少は弾数合わせだったと思うんだよ。そしたら意外に筋少がグーンときたんだよね。ちっちゃなフロアで、我々も若かったからかわいがってもらって、トイズはアットホームでしたよ。

内田 創生期のメンバーってことで。

大槻 カフェの店舗立ち上げみたいな感じでね。そのあといろいろレコード会社を渡り歩くことになったんだけど、トイズ以外はちゃんと会社っぽかったりしたときに戸惑ったりしましたよね。

伊豆に建てたスタジオが全然よくなくて

──レコード会社移籍っていうのは実際どういうタイミングでするものなんですか?

内田雄一郎(B)

内田 それは、やっぱり売上が落ちて。きっとあれは急降下してたんですよね、バンドブーム自体。

大槻 トイズから移籍するときね。

──後輩にミスチルが入り、そういう側の時代になり。

内田 それより前に事務所がヤバくなってきたわけですよ。バブリーだったんで、手を広げすぎてしまって。僕の印象だと、社長が「ヤバいからおまえらもがんばってくれよ」ってハッパをかけようとしたんだけど、そしたら「あ、もうダメなんだ、じゃあ事務所やめなきゃ」ってメンバーは思ってしまって事務所をやめたっていう認識なんだけど、オーケンはちょっと違うらしい。

大槻 いや、そんなところだよ。

内田 社長はホントにやめさせようと思ってたわけじゃないんだけど、そう言っちゃったからなんとなく。

大槻 ただ、あのままあの事務所にいても、どのみちあそこは潰れてたよね。

──より未払いが溜まって大変なことになってましたよね。

大槻 うん、大変なことになってる。

──社長が副業でいろいろやりすぎたんですよね。

大槻 何をやってたのかわかんないんだよね。

内田 スタジオ建てた。でも伊豆だから、温泉地で全然よくなくて。

大槻 トイズは「ウチらがしばらく面倒見るからいなさい」って言ってくれてたんだよね。だけど、我々も若くて新天地を求めよう的な気持ちがあったのかね。

内田 いや、だからトイズ預かりのかたちで2枚アルバム作ってるの。

大槻 ああ、しばらくいたわ! トイズに。

内田 だから2年間はその時期がある。

大槻 そうだった、そしてその2年間が僕の一番のタレント時代ですよ。

ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」/ 2013年5月29日発売 / 3000円 徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73905
収録曲
  1. 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
  2. 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
  3. 日本印度化計画
  4. 踊るダメ人間
  5. 釈迦
  6. 香菜、頭をよくしてあげよう
  7. 機械
  8. 再殺部隊
  9. 蜘蛛の糸
  10. キノコパワー
  11. パノラマ島へ帰る
  12. くるくる少女
  13. 孤島の鬼
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。