音楽ナタリー Power Push - 木村カエラ
新しい仲間と見つけた“PUNKY”な私
視野を広げて周りの声を聞きすぎてた
──リードトラックにもなっているH ZETT Mさんプロデュースの「BOX」、すごくいいですよね。メロディはストレートで伸びやかなんだけど、その後ろでヒイズミさんと柏倉さんがめちゃめちゃやり合ってるのが最高だなって。
あれね、ホントにレコーディングの姿見てられないですよ。「キャシー、腕取れちゃうんじゃないの?」っていうぐらい叩きまくってるんで(笑)。しかも、2人であれを演奏してブースから戻ってくると、ガッツがあるかないかでテイクのよし悪しを判断してるんですよ。「何この人たち? 暑苦しいよー」って思いつつ(笑)、天才肌の2人がやってるからいいかって思うし、今言っていただいたように、歌メロが流れるようなメロディなんで、2人がやり合ってても大丈夫かなって。
──“ガッツ”っていうのも、やっぱり「人の熱量」って話につながりますよね。同じくH ZETT Mさんプロデュースのタイトルトラック「PUNKY」にもそれが出てると思うし。
「PUNKY」はいただいたデモの中で私が一番気に入った曲だったんです。「サビが1回しか出てこないとか変態すぎる。絶対やりたい」って。で、まだ「PUNKY」っていうタイトルが決まる前から、この曲のデモを聴いてると、ずっと「Sid&Nancy」っていう言葉が頭を回ってたんです。だから、自分の中ではなんとなく見えてたはずなんだけど、それを形にできていなくて、ジャケットを撮ったときに、一気に「パンク」っていう方向に収まっていったんだと思うんです。今は逆になんで気付かなかったのかなって思うんですけど(笑)。
──視界が狭くなっていたのが、撮影をきっかけにバッと開けたのかもしれないですね。
自分に目を向けられてなかったのかなって思うんですよね。もともとは自分のアルバムに「KAELA」って付けちゃうぐらい自分のことしか見えてなかったのに、初めて武道館をやったぐらいから視野が広くなって、今度はそれを狭めることができなくなってたんだと思うの。視野を広げて、周りの声を聞きすぎた結果、「打ち込みのほうがいいのかな?」って思っちゃったりもしたのかなって。でも、自分から旅に出て、ヒイズミさんに近くにいてもらって、過酷な状況にして(笑)、自分の持ってる個性で立ち向かわざるを得ない状況にすることで、もう一度自分に目を向けられた。もちろん、周りに対する感謝は忘れずに、でもちゃんと自分を見て作ることが大事で、結局そういうことを歌ってたんですけど、途中まではそれにも気付いてなかったんですよね。
──「PUNKY」の「自分らしくあれというRebelling」「個性を隠し生きたらつまんない」って、まさにそういう歌詞ですもんね。なおかつ、「PUNK」ではなく「PUNKY」なのも、すごくカエラさんらしい。
「PUNK」っていうタイトルはまんますぎるし、かわいくないと思ってて、「PUNKY」で調べてみたら、「熱がある状態」とか「火口」って意味で、今の私にぴったりだなって。表には出ていなくても、自分の中にある強い思いに気付けるかどうか。やろうと思えば爆発することもできるし、ずっと眠ってることもできちゃう。まさに「PUNKY」だなって、それでこのタイトルにしたんです。
シャムキャッツと「せーの!」でやりたい
──新鮮な顔ぶれとしては、シャムキャッツが「好き」を提供していて、演奏でも参加していますね。
レコーディングの最後のほうに、「何が足りないだろう?」って話になって、やっぱり、みんなで「せーの!」で演奏するものがやりたいと思ったんです。演奏が雑でもよくて、それを熱量として感じられる曲を作りたいと思ったので、シャムキャッツに声をかけさせてもらいました。最初にいただいたデモテープはそこまでパンク色が強くなかったんですけど、メロディがすごくきれいで、「すみません、これでもうちょっとパンクにするとどんな感じですか?」って聞いたら、すぐにこれを出してくれて、歌詞も30分くらいでバーッと書きました。それをいっせーのせでやって。あんまりやるとうまくなっちゃうから、早く録って早く終ろうって感じで、すごく楽しかったです。
──歌詞も一気に書いたんですね。
ホントに30分で書いて、1回も書き直してないです。これは「BOX」の言うことを聞かなかった男の子の歌なんですよ。「BOX」で「心はごみ箱じゃないよ」って言ってるのに、この男の子は好きな女の子を忘れようとして、自分の気持ちを飲み込んじゃう。そうしたら吐き気を催して、やっぱり好きな気持ちが出ちゃうっていう。「ほら、だから言ったでしょ?」みたいな、そういうつながりをイメージしていたので、すぐに書けたんです。
──ちなみに、シャムキャッツのことはどういう経緯で知ったんですか?
私のレーベルにもともとバンドマンだった方が入って、シャムキャッツと対バンしたことがあるらしく、「カエラさんに合うと思うんです」って言われて。
──え! そうなんですね!
一緒にいると音楽好きなのがすごい伝わってきて、レコーディングになるとキラキラしてますよ(笑)。
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- ニューアルバム「PUNKY」 / 2016年10月19日発売 / ELA
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / VIZL-955
- 通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64563
- 下記サイトにて配信中!
- iTunes Store
- レコチョク
- mora
CD収録曲
- There is love
[作詞:木村カエラ / 作曲:蔦谷好位置 / 編曲:横山裕章] - 僕たちのうた
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:H ZETT M] - EGG
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:横山裕章] - THE SIXTH SENSE
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:會田茂一] - オバケなんてないさ
[作詞:まきみのり / 作曲:峰陽 / 編曲:H ZETT M] - SHOW TIME
[作詞:木村カエラ / 作曲:AxSxE / 編曲:H ZETT M] - 好き
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:シャムキャッツ] - 恋煩いの豚
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:小松清人] - PUNKY
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:H ZETT M] - BOX
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:H ZETT M] - 向日葵
[作詞:木村カエラ / 作曲:岸田繁 / 編曲:徳澤青弦] - Happyな半被(Bonus Track)
[作詞:木村カエラ / 作曲・編曲:AxSxE]
初回限定盤DVD収録内容
- EGG(music video)
- BOX(music video)
- BOX(making movie)
- LIVE「GO!SHOW TIME」at 渋谷公会堂 (2015.9.9)
KAELA presents PUNKY TOUR 2016-2017
STUDS TOUR supported by クラシエ naive
- 2016年10月18日(火)東京都 赤坂BLITZ
- 2016年10月19日(水)東京都 赤坂BLITZ
- 2016年10月24日(月)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2016年10月26日(水)新潟県 新潟LOTS
- 2016年11月11日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2016年11月14日(月)愛知県 DIAMOND HALL
- 2016年11月16日(水)兵庫県 チキンジョージ
- 2016年11月17日(木)大阪府 なんばHatch
DIAMOND TOUR
- 2017年1月28日(土)埼玉県 戸田市文化会館
- 2017年1月29日(日)宮城県 電力ホール
- 2017年2月5日(日)石川県 金沢市文化ホール
- 2017年2月11日(土・祝)神奈川県 神奈川県民ホール
- 2017年2月25日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2017年3月1日(水)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2017年3月3日(金)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2017年3月5日(日)愛媛県 西予市宇和文化会館
- 2017年3月6日(月)大阪府 フェスティバルホール
木村カエラ(キムラカエラ)
1984年生まれ、東京都出身の女性シンガー。テレビ番組「saku saku」への出演をきっかけに、2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビュー。2005年3月発売の3rdシングル「リルラ リルハ」が大ヒットを記録し、一躍全国区の人気を獲得する。2006年には再結成したサディスティック・ミカ・バンドにボーカルとして参加した。2007年6月に初の東京・日本武道館公演を成功させたほか、2009年7月に神奈川・横浜赤レンガパーク野外特設ステージにてデビュー5周年記念ライブを行い約2万2千人を動員。同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場し、ヒット曲「Butterfly」を披露した。2013年からはビクターエンタテインメント内にプライベートレーベル「ELA」を設立し、コラボカバーアルバム「ROCK」を発表する。デビュー10周年となる2014年6月には横浜アリーナで2DAYSの大規模ライブを行い、同年12月にオリジナルアルバム「MIETA」をリリース。2016年10月に9thアルバム「PUNKY」を発表した。