ナタリー PowerPush - 片平里菜

「これから戦っていかなきゃ」メジャーデビューに対する覚悟明かす

今振り返ると楽しかった思い出しか出てこない

──全国ツアーのファイナル公演は4月30日、地元福島のライブハウスで行いました(参照:片平里菜、地元福島でアットホームなツアーファイナル実現)。この会場は昔からよくライブをしていたところなんですよね。

会場の福島Live Space C-moonは初めてライブをした場所で、自分の原点ですね。だから初ツアーの最終日に原点に戻ったっていう気持ちもあったし、新しい自分になれたような気もしたんです。

──当日は僕も会場にいましたが、片平さんが1時間くらいのライブをするのを観るのはこれが初めてで。この1年間何度かライブを観てますけど、あの日は特にお客さんとのコミュニケーションの取り方が上手になったなと感じました。それってやっぱりツアーでいろんな場所を回ってきた成果なのかなと思ったんですが。

片平里菜

本当ですか? うれしい。以前はお客さんの反応をステージから観るのが怖くて、なるべくなら暗いほうがやりやすかったんですけど、ツアーをするにあたって自分の中で課題を作ったんです。それは、もっとお客さんと距離を縮めて帰ること。各地に仲良しの人を増やしたいっていう気持ちがあって、それにはこの20本のツアーを通じて自分が変わらないとダメだなと思ったんです。だから殻を破らなきゃっていう思いで毎回臨んだ結果かもしれないですね。

──でもその殻を破る作業自体はつらくなかったと。

はい、楽しんでましたね。そもそもいろんな場所に行きたかったのもあったし、各地で自分のことを待っていてくれる方も少なからずいたんで、安心できたのもありますし。

──しかも最後に一番安心する場所でがっつりライブができて。実はこの日のライブのMCで片平さん、本音を漏らしてるんですよ。

えっ? なんて言ってました?

──「ツアーというものが本当に人生初で、しかも1人だったので心細かったんですけど」って、ポロッと言ってるんです。

うん……確かに心細かったんですよね。今振り返ると楽しかった思い出しか出てこないんですけど。

──やっぱりツアー中はそういう気持ちも若干あったんでしょうね。

あったと思います。特に帰り道ですね。岡山から東北に向かう1人の道中が、長くって大変でした。あと、初めて行った九州が楽しすぎて、帰るときに「ああ、もう旅が終わっちゃうのか」って。寂しかったな。

自分の曲がいろんな人の曲になるのは不思議

──5月に入ると、業界関係者向けにコンベンションライブが行われました。ここで正式に8月7日にメジャーデビューすることが発表されたわけです(参照:片平里菜、思い出の1曲で8月にメジャーデビュー決定)。

そっか、そんなペースだったんだ。あの日はまだツアーの余韻が残ってる状態で。でもステージに立って、初めてプロとして気が引き締まったというか、ちゃんとやっていかなきゃいけないなと改めて思いましたね。

──それまでは「立ち向かっていかなきゃ」「戦っていかなきゃ」と思ってはいても、どこか現実的じゃない部分もあった?

片平里菜

あったかもしれないですね。ツアーは趣味ではないけど、そういう楽しみの要素も強かったので、そのぶんコンベンションで気が引き締まって。いろんな音楽関係者さんの顔を見て、さらに周りのスタッフさんのがんばりを見て、自分ももっとがんばらなきゃって思ったんです。うん、なんかデビューまでのカウントダウンが始まったなって。

──ちょっと前までは全国のお客さんの前で歌ってたのに、その2週間後には知らない大人たちがたくさんいる前で歌ったわけですし(笑)。

でも楽しかったですよ、あの日も。

──客席側のこちらはドキドキしましたよ。あの場にいた人の大半が片平さんのライブを観るわけですし、どういうリアクションをするのか気になってたんです。

そうなんですね。親心みたいな?(笑)

──あははは(笑)。そうかもしれない。でも1曲終わったあと、大きな拍手が聞こえて僕もちょっとホッとしました。で、この日は海外のギターブランド・エピフォンが片平さんを日本人女性初のエピフォンアーティストとして公認したことも発表されました。

本当にありがたいですね。話が来たときはびっくりしたし、しかもエピフォンは自分の中で憧れのブランドだし、憧れのアーティストさんも使ってるし。「私でいいの?」みたいな気持ちがあったので、自分より若い子にも影響を与えられるようにもっとギターの練習をがんばらなくちゃなって思いました(笑)。

──それこそ、先日まで一般公募していた「“コピ里菜”ライオット」にもつながりますし(参照:片平里菜×SOLコラボで「“コピ里菜”ライオット」実施)。

本当にそうですね。ギターも触ったことない子が、一生懸命私の曲を練習している姿を想像すると、なんかもうかわいく思えてきて。純粋にうれしいです。

──自分の曲をコピーしてもらうのは、どういう感じですか?

「夏の夜」はまだ人前で歌ったことがない頃に作った曲で、最初は自分のためだけの曲でしかなかったんです。それを考えると、自分の曲が自分だけのものじゃなくなって、いろんな人の曲になるのは不思議ですよね。あとコピーして何回も練習すると、実際に歌うことで歌詞の意味を考えたりして、それまで気付かなかった曲のよさもわかってもらえるんじゃないかな。そうやっていろんな人の体にこの曲が入っていくっていうのは、すごいことだと思います。

片平里菜(かたひらりな)

1992年5月12日生まれ、福島出身・在住のシンガーソングライター。2011年9月、「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞する。翌2012年にはソニーWALKMAN「Play You. Label」第1弾アーティストに抜擢され、山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースのもと楽曲制作。7月にはメジャーデビュー前にもかかわらず「NANO-MUGEN FES.2012」に出演し、話題を集めた。2013年1月にアジカン山田プロデュースによる楽曲「始まりに」を配信リリース。同年4月には20公演にわたる初の全国弾き語りツアー「片平里菜 飾らない笑顔で 弾き語りツアー2013」も敢行した。5月にはギブソン社傘下のギターブランド・エピフォンが片平を日本人女性初のエピフォンアーティストとして公認したことも発表され、大きな反響を呼んだ。そして8月7日、ポニーキャニオンからシングル「夏の夜」でメジャーデビューを果たした。