神山羊|メジャーデビュー作で示すJ-POPアーティストとしての覚悟

神山羊が3月4日にメジャーデビュー作となる1stシングル「群青」をリリースした。

タイトル曲が現在放送中のアニメ「空挺ドラゴンズ」のオープニングテーマに使用されているこの作品は、アーティストとしての新たな一歩を踏み出そうとする神山の意志や新しい試みがさまざまな形で込められた1枚となっている。

今回のインタビューでは神山に「群青」およびカップリング曲「スタンドバイミー」の制作過程や、各曲の歌詞やサウンドに秘めた思い、そしてリリースと前後して行われるツアーへの意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 須藤輝 ライブ撮影 / 鳥居洋介

目指したのはアニメをよりよく届けられるサウンド

──神山さんは今回のシングル「群青」でメジャーデビューされるわけですが、気持ち的に何か変化はありますか?

神山羊

制作に対するスタンスとしては何も変わっていないんです。ただ、メジャーという1つわかりやすい場所に来たことをきっかけに、もっと多くの人に自分の作品を届けたいなという意識にはなったかもしれません。

──もともとメジャーデビューしたいという気持ちはあったんですか?

音楽活動としては、最初はバンドをやっていて、それをやめてからボカロをやって、きっかけをいただいて自分で歌うようになって……という感じだったので、極端な話、僕はそこまで売れたいとか作品を評価されたいとか、そういう欲が強いタイプではもともとなくて。

──表題曲「群青」はアニメ「空挺ドラゴンズ」のオープニングテーマです。アニメのタイアップは初めてになりますが、やはり制作のスタンスは変わらず?

そうですね。基本的に、僕は作品を作るときは自分の中でお題を用意しているんですけど、それと同じようなスタイルというか、今回は原作マンガとアニメの要素をお題にして制作にとりかかった感じだったので。ただ、アニメをよりよいものにして視聴者の方々に届けられるようなサウンド作りを目指したところもあるので、そこは今までと少し違ったかもしれないですね。

──アニメの制作サイドから何かしらオーダーがあったりは?

方向性みたいなものは示していただきましたけど、正直、あんまりのんではいないですね(笑)。

──のんでいない(笑)。

いや、今の言い方は誤解を招きそうですね。なんというか、そのオーダーを自分の中で噛み砕いたものを先方に聴いていただいて、気に入ってくださったのでそのまま制作は進行して行きました。

──事実、「群青」はアニメの雰囲気にもよくマッチしていますし、楽曲としてもすごくキャッチーですよね。

ありがとうございます。

──ダンスミュージックとギターロックのミクスチャーをあくまでJ-POPとして聴かせるというか。これも神山さんのスタイルの1つですよね。

そうですね。いわゆるダンスロックなんですけど、今回に関してはダンスといってもヒップホップとかR&Bとか、そういうブラックミュージックの要素をゼロにしているんです。だから配分としてはギターロックに振っている感じですね。僕はいつも楽曲のイメージが一番伝わりやすくなる方法を考えているんですけど、この「群青」では青さとか若さとか未熟さみたいなものを表現したくて。そこに黒っぽい要素を入れるのは違うなと。

──確かにブラックミュージック成分が入ると大人っぽくなるかしれないですね。

そうそう。むしろ子供っぽく、無邪気な感じを出したくて。そういうのはギターの役目だなと思ったんです。

神山羊

僕は絶対にJ-POPのアーティスト

──アレンジも凝っていますよね。全体として四つ打ちのギターロックなのですが、例えば2番のAメロやDメロだけ切り取れば完全にクラブミュージックの手つきですし。

そうなんです。あとこの曲ではけっこうエグい音が出るEDMのシンセを使っているんですよ。たぶんクラブミュージックも聴く人にはわかるはず。もちろん別にわからなくても全然いいんですけど。

──シンセの、あのクセのあるメロディも耳に残ります。

うれしいです。そこが引っかかる感じにしたくて。なおかつ、それでダンスミュージックとギターロックをつなぐっていう狙いもあり。

──EDM的な要素でいうと、サビ前で普通にビルドアップしていますよね。

そうそう。ギターロックでビルドアップするっていう(笑)。けっこう、ライブでやることを意識して作っているんで、踊れるロック感みたいなものを強く残したかったんですよね。

──それでいて音数が極端に少ないので各楽器がよく聞こえて、特にベースが太い。

ベースはサカナクションの草刈愛美さんに弾いてもらってるんですけど、そのベースを印象的に聴かせたいというのもありました。ダンスロックといえばやっぱりサカナクションだし、僕自身、サカナクションの大ファンなので、めちゃくちゃ興奮しましたね。

──今おっしゃったようなダンスとロックのつなぎですとか、そういうバランス感覚が神山さんの持ち味であり、だから独特な音楽を作っていけるんでしょうね。

だとしたらうれしいです。でも、あくまでもキャッチーに聴かせたいというのが常に根底にあります。僕は絶対にJ-POPのアーティストなので。