神山羊|“おとな”と“こども”の間で見る夢

神山羊が10月23日に2ndミニアルバム「ゆめみるこども」をリリースした。

2014年よりインターネットシーンを中心に「有機酸」名義で活動していた神山。2019年4月にミニアルバム「しあわせなおとな」でデビューを果たし、今回1作目と対になる作品として「ゆめみるこども」を発表する。音楽ナタリーでは「ゆめみるこども」制作意図や各楽曲の魅力に迫るべく、神山にインタビューを実施。本作での挑戦やアートワークへのこだわりに加え、J-POPシーンの現状とそこに自身がどのように挑んでいくのかなど、話題は多岐にわたった。

取材・文 / 奥冨直人 撮影 / 鳥居洋介

「しあわせなおとな」と「ゆめみるこども」の関係性

──デビュー作「しあわせなおとな」と今回の「ゆめみるこども」は、タイトルからも想像できる通り、対になる作品なんですよね。

神山羊

そうですね。「しあわせなおとな」を作る前から、2枚目に出す作品と対になるものを作ろうと決めていて。

──なぜ“おとな”が1作目、“こども”が2作目になったんでしょう?

今の自分はもう大人で、子供の頃というのは回想の中にあるものだから。そしてその中でまた、子供だった自分が大人になって、大人になった自分が子供の頃を回想して……そういうループを描きたかったんです。

──「ゆめみるこども」の収録曲についてもお話を聞かせてください。「しあわせなおとな」を踏まえたうえで、新作の1曲目「Child Beat」を聴くと意外なアプローチで驚きました。かなり高速なビートの曲ですよね。

クラブミュージックのトラックをロックサウンドで作ってみたくて、ジュークというジャンルを目指したんです。サビを歌謡曲っぽい感じにしてみたり、転調する部分も含めてオリジナリティを出しつつ、短くまとめました。

──2分ほどの短い曲ですよね。冒頭でこの曲が入ることで飛び出している感じというか、勢いを感じました。

飛び出し感は意識していますね。1曲目に置くことで威力を発揮する機能性を持った曲です。

神山羊

毒を仕込んだ「アイスクリーム」、延長線上にある「CUT」

──2曲目の「アイスクリーム」はミュージックビデオもリリース前に公開され、すでに話題を集めています。クラブミュージックのアプローチだった「Child Beat」とは打って変わって、パワーコードギターのロックなんですよね。

ストレートなギターロックは自分のルーツにある音楽なんですけど、それを今の僕が作ったらきっと新しいエッセンスを加えることができるんじゃないかなと思って作った1曲です。

──ミュージックビデオはアニメーションで、イラストはイラストレーターの北田正太郎さん、動画の制作はCEKAIの窪田慎さんが担当されています。「ゆめみるこども」の“こども”らしさを表現するために、このようなアニメーションになったのでしょうか?

アニメーションは今までも東洋医学(イラストレーター)と一緒にやってきてはいたんですけど、今回の「アイスクリーム」は絵本のような世界観を出したくて、北田さんと窪田さんにお願いしました。教育アニメとかにもありそうなタッチでありながら、とがっている部分があるというか、ところどころに毒が仕込まれていて。これを観た子供が大人になって改めて観てみたら「こんなヤバいメッセージもあったんだ!?」と気付くような、そういうところが気に入っていますね。北田さんがそういう作風の方なので、イメージだけ伝えてお任せで作っていただきました。

──大人の色気を持った「CUT」の世界観とは真逆ですね。そして「CUT」のMVのチームも面白いですよね。ディレクターはDAOKOのライブ演出などを手がける佐伯雄一郎さん、スタイリングは服部昌孝さん、クリエイティブはmagmaが手がけていて。このMVで印象的に使われているRGBライトは河野未彩さんがディレクションしています。

このクリエイター陣のすごさが伝わるといいなと思っています。なかなかこんなクリエイティブチームを集めて作品を作るなんてことできないですからね。ありがたいです。「CUT」は今までやってきたことの延長線上にある曲で、今までの神山羊の曲を好きな人でもスッと聴きやすいと思うので、ファンの方には映像にも注目してもらいたいですね。

鍵になるのはダンス、ロック、ポップスの配分

──そしてアルバムは「bunny」からダンスミュージックの要素が強まっていきますよね。

神山羊

はい。「bunny」は今回の作品で一番いろんなギミックを取り入れた曲で、EDMでドロップに入るときのあの感じをNASAのスペースシャトルの発射音をサンプリングして作っていて。ライブではものすごい量のスモークを出したいです(笑)。

──スペースシャトルの発射音をこんなふうに取り入れるなんて大胆ですね。

僕のトラックはサンプリングした環境音を使うこともよくあるんですけど、「bunny」のスペースシャトルはかなりハマったなと自分でも思います。「CUT」もハサミの音をサンプリングして使っています。

──そういう話を聞いてから、改めて神山さんの作品を聴くと新たな発見がありそうですね。ポップスを軸にいろんなジャンルの要素を取り入れていて、「bunny」までの3曲ですでに神山さんの音楽的なキャパの広さが伝わります。

ありがとうございます。今回は特にダンスミュージック、ポップス、ロックの3つのジャンルを軸にしていて、自分としてはその割合の配分を楽しんでいる感覚です。