音楽ナタリー Power Push - 上白石萌音

歌うように演じ、演じるように歌う

上白石萌音がミニアルバム「chouchou」をリリースした。

興行収入150億超えの驚異的な大ヒットを記録している映画「君の名は。」でヒロイン役を演じ、注目を浴びている上白石萌音。今春に公開された映画「ちはやふる -上の句/下の句-」に出演したほか、映画「溺れるナイフ」の公開を11月5日に控えるなど、女優としてのキャリアを重ねる中でのメジャーデビューとなる。今作は映画をコンセプトにしたカバー集で、映画「君の名は。」の主題歌「なんでもないや(movie ver.)」や、映画「赤い糸」の主題歌「366日」など6曲を収録。小さい頃から歌うことが大好きだったという彼女の豊かな歌唱力と、自身が持つ“声で演じる力”はどのように培われたのか。女優に声優、歌手とさまざまな活動を繰り広げている彼女に、歌手デビューに際しての思いなどを語ってもらった。

取材・文 / 上野三樹 撮影 / 笹原清明

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歌は生活の一部

──映画「君の名は。」が大ヒットし、映画「溺れるナイフ」の公開も目前というタイミングでこうして歌手デビューされるということに、まず驚きました。

私自身もすごいタイミングだと思います(笑)。デビューのタイミングを計画的に進めていたわけではなくて、偶然こうなったんですけど、ご縁みたいなものを感じています。映画「君の名は。」でいろんな方に私の声を認識していただいたあとでCDが出せるのはありがたいことです。先日ようやく私も「chouchou」の音源を聴いたんですけど、「いよいよリリースされるんだ!」って感じがしました。

──今作の完成はご自身としても感慨深いものだったんですね。

歌は2、3歳くらいから大好きでずっと身近にあったもので。あまり歌ってないときは周りに心配されるくらい、私の生活の一部なんです。それがこうして1つの形になったというのは人生の中で大きな分岐点というか、何かが始まる瞬間だなという気がしています。

──2、3歳で歌が好きになるきっかけが何かあったんですか。

上白石萌音

言葉を覚えるのもわりと早かったみたいで2歳になる前にはもうペラペラしゃべっていて、その頃から歌を歌い始めたみたいです。海を見たら海の歌を歌って、チューリップが咲いていたらチューリップの歌を歌って、それくらいずっと歌ってる子でした。今もそうなんですけど(笑)。私の生活からは切り離せない歌が、歌手デビューすることで広がるんだなという気持ちです。

私の人生を変えた曲「On My Own」

──16歳で映画「舞妓はレディ」の主演を務めましたが、そのオーディションのときに今作にも収録されている「On My Own」を歌ったんですよね。その時点ではどういう夢を抱いていたんでしょうか。例えばミュージカル女優を志望されていたとか?

ミュージカル女優を志望していたわけではなかったのですが、ミュージカルの教室に通っていたことはあったんです。なのでJ-POPを聴くよりも前にミュージカルを好きになって、よく舞台も観に行ってました。「舞妓はレディ」のオーディションを受けるときに「ミュージカル映画だよ」と言われ、「私の大好きなものだ!」と思いました。「On My Own」はオーディションで「なんでもいいから何か歌えますか」と言われて歌いました。もし何か歌うことになったら必ず「On My Own」を歌おうって決めていたんです。そのときの歌が映画に出演するきっかけになりましたし、「『舞妓はレディ』に出演できていなかったら今の私は何をしていたんだろう?」と思うくらい人生が変わったので、まさに私の人生を変えた曲なんですよね。

──映画「舞妓はレディ」では登場していきなり歌うシーンがありましたが、どんな経験でしたか。

上白石萌音

あのシーンは同録(映像と音声を同時に録ること)で一発録りだったこともあって、あんなに緊張感を持って歌ったのは人生で初めてでした。楽しくて歌っていたことが仕事になるというのは、今までにないくらいに怖かったし、一瞬、歌いたくないと初めて思ったんです。「歌で人に感情を伝えるにはどうしたらいいんだろう?」って考えると、どうやって息を吸って吐くのかさえわからなくなってしまって。でも、ボイトレをずっとしていただいていた先生が「楽しむことを忘れちゃダメだよ、歌が大好きでしょ?」って言ってくれたことで、撮影もうまくいって、「歌が大好きっていう気持ちを持っていたら、これからずっと何事もなんとかなるのかもしれない」って思えたんです。「舞妓はレディ」に出演させていただいたことで、歌がこんなに深いものだったんだということを知りましたし、人に聴いてもらえるように歌う鍛錬をしたことで、歌に対する考え方はガラッと変わりました。

──女優としてのキャリアを重ねる中で、歌手としての活動をスタートするきっかけをつかんだんですね。

そうなんです。自分だけの趣味から人に披露するものに変わった大きな分かれ道でした。でもやっぱり根底にあるのは歌が好きという気持ちですし、そこは変わっちゃいけないと思います。

1stミニアルバム「chouchou」 / 2016年10月5日発売 / 1800円 / ポニーキャニオン / PCCA-04426
1stミニアルバム「chouchou」
収録曲
  1. 366日(映画「赤い糸」主題歌)
  2. Woman“Wの悲劇”より(映画「Wの悲劇」主題歌)
  3. 変わらないもの(劇場版アニメーション「時をかける少女」挿入歌)
  4. On My Own (映画「レ・ミゼラブル」劇中歌)
  5. なんでもないや(movie ver.) (映画「君の名は。」主題歌)
  6. SMILE(映画「Modern Times」挿入歌)
上白石萌音(カミシライシモネ)
上白石萌音

1998年生まれ。第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞し、芸能界デビューを果たす。2011年にNHK大河ドラマで女優デビュー。2014年公開の映画「舞妓はレディ」では映画初主演を務め、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめとする各賞を受賞した。2016年には映画「ちはやふる -上の句/下の句-」や、「君の名は。」に出演。また11月5日には映画「溺れるナイフ」の公開を控えている。女優として活動する傍ら、2015年から歌手として都内のライブハウスにてアーティスト活動を始め、2016年10月にカバーミニアルバム「chouchou」をリリースしてメジャーデビューを果たした。