ナタリー PowerPush - KAMIJO
挑戦たっぷりの2カ月連続シングル全曲解説
「このKAMIJOはひさしぶりだなあ」と思いながら歌った
──カップリングの「Trésor」についても聞かせてください。
生アコーディオンとバイオリンだけをバックに歌ってるんですけど、音色とプレイがこの歌詞の情景を明確に表現していて。最後のサビ前の凛としたアコーディオンなどは、ホントに紙芝居が目に浮かぶようですね。この楽曲はルイ17世がヴァンパイアになる前の話だったので、いい意味で明るいというか、僕もダークじゃない歌い方で歌いました。僕のこういった声の出し方、歌い方が好きな方はすごくいると思うんですが、自分でも「このKAMIJOはひさしぶりだなあ」と思いながら歌ってましたね。
──まずはアコーディオンが登場したことに驚きました(笑)。
バンドの音も一切入っていないですからね(笑)。でも、これこそ「Symphony of The Vampire」の第3楽章の最後にオルゴールと一緒に鳴っているメロディなんですよ。「悲しいから笑っていた 嬉しいから泣いていた」という、あのときと同じ歌詞で、彼がいかに人間らしかったかというのを表現したくて。悲しいときに作り笑いをしてがんばってみたり、うれしいときに涙を流したりという、当たり前の感情を持つ、純真無垢な少年だったということですね。「Symphony of The Vampire」の中ではそこまで具体的に示してはいなかったんですが、ここで初めて、その歌詞の意味がわかってもらえるかなと。
「追憶のモナムール」のこだわりポイント
──そして「追憶のモナムール」は、シンフォニックなメロディックメタルチューンですよね。
実は「追憶のモナムール」が最初のシングル候補だったんですよ。めちゃくちゃいい曲だし、きっとこれを聴いたファンの方のほとんどが、「追憶のモナムール」をなぜタイトル曲にしなかったのかって言うと思うんですけど、それでいいんです。この曲がタイトル曲だと普通すぎる。そこに僕の余裕を感じてもらえれば。
──サウンドにもユニークなアイデアが盛り込まれていますよね。
イントロで聴けるストリングスのスピッカートのアイデアは、実はだいぶ前からありまして、いつか使いたいなあと思ってたんですけども、今回書いたメロディにちょうど合ったんですね。それとすごくこだわったポイントがあるんですが、冒頭のサビはマイナーコードで始まるんです。でもそれ以外のサビはメジャーコードで始まるんですよね。最初にメジャーから入ったら、ちょっと憂いが足りなかったのでマイナーにしたというのもあるんですけど、曲中の部分もマイナーにしてみたらずっと違和感があって。ホントにコード1つで楽曲の印象が変わるんですよ。あとは楽曲構成も、ホントにKAMIJOって感じにできてますね(笑)。
──間奏前後の構成は特に面白いですね。サビが終わって、ギターソロに入り、展開があって、クワイアパートに入り、本格的な間奏に入る。予想だにしない流れなんですよね(笑)。
そういう畳みかけるようなドラマチックな曲展開も、自信を持って「聴いてくれ」って言えるところですね。途中のクワイアも僕の求めていたみんなで歌う感じが出せたと思います。
──歌詞には“シャンゼリゼ通り”という具体的な場所が出てきますが、これは現代の情景を描いたものと解釈できそうですね。
僕はパリのシャンゼリゼって聞くと、女性をイメージするんですよね。モナムールというのは、フランス語で私の愛する人という意味ですけど、この曲は愛する女性をなくしてしまった主人公の気持ちを歌った、ちょっと悲しいラブソングなんです。なぜシャンゼリゼなのか、そこにはいろんな秘密があるんですけど(笑)、それはまた数カ月後にわかると思います。
──1人でシャンゼリゼを歩く……きっと何かが起こるんですね。
ええ(笑)。それとラブソングを書く上で、あまりなよっとしていない、相手を失ってとても悲しいけれども強い主人公をすごく描きたかったんですよ。歌詞に「降るはずのない雨が頬を伝い落ちた」「降るはずのない雨に頬が濡れていた」とありますが、つまり、泣いたことを認めない。そこがうまく表現できたかなというのはありますね。Versailles時代もLAREINE時代も、切ない、苦しいといった、相手をずっと思う気持ちを表した楽曲は書いてきましたけど、今回はそれを包み隠せるような強さと言いますか、男性視点の切ない歌詞という自分の解釈で書いたんですよ。なかなか男性視点でこういうラブソングを書くのって難しいんですよね。主人公自身も魅力的でなければならないし、切ない気持ちも伝えなきゃならない。ただ泣きじゃくって、寂しいよ、切ないよというものは、僕が歌わなくてもいい。それに言いすぎたり伝えすぎたりしてしまうと、共感ではなくて同情を呼んでしまいますからね。ラブソングの歌詞にはギリギリのラインがあるんです。
「闇夜のライオン」は始まりを告げるファンファーレ
──そして、翌7月には「闇夜のライオン」がリリースされます。こちらはどういった楽曲になりますか?
なんと言えばいいんだろうな? サビに行くまでに、5回ぐらい転調するという(笑)。「闇のファンファーレ」っていう1行の持つパワーをすごく感じられる曲になってますね。僕のメロディだなって思えるもので……どう表現をしたらいいかなあ。王道と言ってしまうとそこで終わってしまうし。でも、王道か。
──大きな枠で言えばそうかもしれませんね。
でも、王の歩く道ですからね。そのぐらいの意味を込めたものと捉えていただければ。いろんなチャレンジもしているんですけど、一言で言うと……いや、一言じゃ言えないな(笑)。
──いろんなものが凝縮された楽曲ですよね。
BPMが190なんですけど、いわゆるメロディックスピードメタルのリズムではなく、ちょっとダンサブルなリズムにしているんですね。これはまたライブに向けた話なんですけど、「闇夜のライオン」は、始まりを告げるファンファーレといったイメージなんですね。以前、帝国のようなものを作っていきたいというお話もしたと思うんですが(参照:KAMIJO「Symphony of The Vampire」インタビュー)、僕が作るそういった集合体は人の心を領土にする幻想国家だなと思ったんですね。聴いてくださる方々の心を侵略していく、そういう攻めの姿勢がこの楽曲には反映されていると思います。先頭に立って、僕がこれからライブ活動なり、さまざまな形で皆さんを引っ張っていきたいなという願いも込めていますね。
──なるほど。そうした姿勢で攻めていくKAMIJOさんが、この曲で特に伝えたいものはなんなんでしょう?
奮い立たせる……ということですかね。すべての作品がそうなんですけど、この曲は特に合図でありたい。それこそファンファーレですね。仕事でも遊びでもゲームでもなんでもいいんですけど、勇気を振り絞れるような楽曲になるといいですね、皆さんにとって。
KAMIJO 2ヶ月連続シングル・リリース第2弾「闇夜のライオン」(7/16発売)のトレーラー映像!
- ニューシングル「Moulin Rouge」 / 2014年6月18日発売 / ワーナーミュージック・ジャパン
- 初回限定盤A [CD+DVD] / 1944円 / WPZL-30864~5
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 1944円 / WPZL-30866~7
- 通常盤 [CD] / 1296円 / WPCL-11862
初回限定盤A,B CD収録曲
- Moulin Rouge
- Trésor
通常盤CD収録曲
- Moulin Rouge
- Trésor
- 追憶のモナムール
- Moulin Rouge(instrumental)
- Trésor(instrumental)
- 追憶のモナムール(instrumental)
初回限定盤A DVD収録内容
- 「Moulin Rouge」ミュージック・ビデオ
- 「Trésor」ミュージック・ビデオ
初回限定盤B DVD収録内容
- スペシャルインタビュー+ジャケット撮影風景+ミュージック・ビデオのメイキング映像+スペシャルメッセージ映像などを収録
- ニューシングル「闇夜のライオン」 / 2014年7月16日発売 / ワーナーミュージック・ジャパン
- 初回限定盤A [CD+DVD] / 1944円 / WPZL-30890~1
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 1944円 / WPZL-30892~3
- 通常盤 [CD] / 1296円 / WPCL-11938
初回限定盤A,B CD収録曲
- 闇夜のライオン
- BASTILLE
通常盤CD収録曲
- 闇夜のライオン
- BASTILLE
- 運命(Versaillesのセルフカバー)
- 闇夜のライオン(instrumental)
- BASTILLE(instrumental)
- 運命(Versaillesのセルフカバー)(instrumental)
初回限定盤A DVD収録内容
- シングル曲「Moulin Rouge」ミュージック・ビデオ+トレイラー映像集(「Symphony of The Vampire」3種類、「Moulin Rouge」2種類、「闇夜のライオン」)
初回限定盤B DVD収録内容
- KAMIJOオフ・ショット映像+スペシャルインタビュー+ミュージック・ビデオのメイキング映像などを収録
KAMIJOシングル「闇夜のライオン」発売記念アコースティック・ライブ&バースデーイベント
- 2014年7月20日(日)東京都 タワーレコード新宿店7F イベントスペース
START 18:00
KAMIJO(カミジョウ)
1999年、ヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとしてSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEADMASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月にファンに惜しまれつつ活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」で満を持してソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、6月、7月に2カ月連続でシングルを発表する。