ヴィジュアル系バンドVersaillesのボーカリスト・KAMIJOがニューアルバム「Sang」を3月21日にリリースする。

重厚なオーケストラと攻撃的なバンドサウンドを融合させた本作は、幻のフランス王・ルイ17世を主人公にした架空のストーリーを下敷きにした作品。壮大な物語とまるで映画のサントラのような楽曲が1つになり、耽美的でドラマチックな世界観を描き出している。

完全限定受注生産豪華盤には本編CDのほか、全9曲の室内楽アルバム「Chamber Music Ensemble」、ミュージックビデオを収録したBlu-ray、写真集、ポスターなどをパッケージ。初回限定盤にはCD、DVDと「Sang」の物語を掲載したストーリーブックレットが同封される。またアルバム発売と同日に期間限定デュオ“KAMIJO＆初音ミク”によるシングル「Sang -Another Story-」のリリースも決定している。音楽ナタリーではKAMIJO本人にインタビューを実施。「Sang」の話を中心に、初音ミクとのコラボの経緯、3月24日からスタートする全国ツアー「KAMIJO Live Tour 2018 -Sang-」などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

大河ドラマのように楽しんでもらいたい

──ニューアルバム「Sang」が完成しました。壮大なストーリー性を備えた作品ですが、制作はどのように始まったのでしょうか？

まずは原作を書き上げ、それから楽曲を作っていきました。これまでは作品に込めたストーリーを表に出していなかったのですが、今回はアルバムのリリース前にブログですべての物語を発表しました（参照：ソロ発表から5年｜Versailles KAMIJOオフィシャルブログ「薔薇の棘でチクっと」by Ameba）。これまで僕の作品を聴いてくれていた方はもちろん、このアルバムで初めて聴くという方も、遅れを取ることがない状況を作りたかったので。

──楽曲に込めた謎をリスナーに読み解いてもらう方法もあると思いますが、今回は最初から物語の全貌を明らかにすることで、より幅広いリスナーに届けようと？

はい。「Sang」の物語が想像以上にしっかりした内容になったので、出し惜しみすることなく、どんどん出してしまったほうがいいなと思って。「Sang」はルイ17世が主人公の物語ですが、そのルイ17世自体をよく知らなくても楽しんでもらえると思います。NHKの大河ドラマって歴史がわからなくても楽しめるじゃないですか。今回はそういう形を取りたかったんですよね。

ソロでやりたかったことが実現できた作品

──「Sang」のストーリーの骨子を教えてもらえますか？

ルイ17世は幼い頃から幽閉され、10歳で亡くなったとされていますが、僕の物語の中ではまだ生きていて、今も王を目指しているんです。例えば「ベルサイユのばら」が好きな方はルイ16世が処刑され、マリー・アントワネット、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェがいなくなってしまって、とても寂しい思いをしたはず。でも「Sang」の中ではフランス王朝の血を引くルイ17世が存在していて、彼はベートーヴェンによって救い出され、現代にまで生き延びているんです。そういう物語には夢があるでしょう？ ルイ17世は僕にとって、フランスの最後の光なんです。

──ルイ17世を巡るストーリーの構想はいつ頃からあったんですか？

構想自体はかなり前からありました。僕がやっていたVersaillesはバラの末裔の物語を描いているバンドですし、その前にやっていたLAREINEは花の化身の生まれ変わりをテーマにしていたのですが、どちらもフランス革命とつながっているんです。意識的につなげようとしたわけではなく、自然とそうなっていったのですが、ソロ活動ではそれらをすべて表現しようと決めていて。今回の「Sang」ではソロのスタートの時点でやりたかったことがかなり実現できたと思っています。

──ということは、シングルとしてリリースされた「Castrato」「mademoiselle」「Nosferatu」も最初からアルバムの構想に組み込まれていた？

そうですね。シングル以外の曲では「Emigre」は今年発売したライブDVD「Epic Rock Orchestra at Zepp DiverCity Tokyo」の1曲目に別のタイトル（「Epic Rock Orchestra-prologue-」）で収録されています。そのほかはすべて新曲ですね。収録する予定だった曲を別のエピソードとして使うために外したり、僕としてはかなりコンパクトに仕上げたつもりです。「Sang I」「Sang II」「Sang III」は20分近い組曲になっているので、かなり壮大ですが。