ナタリー PowerPush - カジヒデキ

自主レーベルで新たな一歩 新作アルバム「BLUE HEART」

「ライブは必ず短パン!」

──ソロデビュー当初の頃の話になりますが、1996年に当時30歳直前で「最後の渋谷系!」といった感じでメディアに大量に露出する一方、「半ズボンを履いた30歳!」という衝撃も一部ではありました(笑)。でも今となっては30代、40代の半ズボンは普通の光景ですよね。

僕自身は当時から、そんなに特殊なことだとは思ってなかったんですよね。外国とか、普通におじいさんとかも半ズボン履いてかわいいな、リゾートっぽくていいな、みたいな感じがあったし、ファッションのアイテムの1つだとも思っていました。でも当時、大人でメジャーな週刊誌に「短パンを履いた30歳!」という打ち出しで取材されて、お台場でジャンプして写真撮ったこともありました(笑)。意外とビックリされてたんだなあって。2000年代に入って、短パンは一時期全然履いてなかったんですけど、アルバム「lolipop」(2008年)以降また、「やっぱり僕は短パンだな!」と思って、40歳になってからまた短パン頻繁に履くようになって、特に「ライブは必ず短パン!」って決めて履いてます(笑)。僕の正装であり、戦闘服でもあるんです(笑)。

インタビュー風景

──ライブのとき、いつも短パンのイメージがありましたが、それはイメージではなく事実だったんですね(笑)。ライブといえば2008年頃、何かのイベントで共演された小西康陽さんが、いくつかのメディアで「カジくんのライブが熱くてすごく感動した!」といったことを語られて、カジくんのライブパフォーマンスが改めて注目された時期がありましたよね。

知り合いのライターの方から、小西さんがブログか何かにそう書かれていた、というのを教えられて当時ビックリしました。とってもうれしかったですね。そのイベントのときまでは、そんなに一緒にDJすることとかもなかったんですけど、それを機会に一緒にDJさせていただいたり、おそれ多くも小西さんのNHKーFMの番組「小西康陽 これからの人生。」に、ピンチヒッターで登場させていただいたりと、ご一緒することが増えました。

──そのライブは相当盛り上がったんですか?

そのイベントは僕の出番前から、まずはMEGさんのライブがものすごい盛り上がりで、その後小西さんがアッパーな選曲のDJで盛り上げて、さらにそこにakikoさんがゲストで現れて、もうものすごく盛り上がってたんですよ。僕は、元々は弾き語りとDJで1時間ということだったので、普通のテンションで6曲くらいペロンと弾き語ってからDJしようか、くらいに気楽に考えてたんです。それがあまりに会場が盛り上がっていたから、初めに考えていた選曲の弾き語りではマズい!と青ざめまして……ペロンってやってすますわけにはいかなくなって(笑)。小西さんも僕を紹介するとき、ものすごくテンション高く「次は、カジくーんっ!!!」と煽ったから、「もうこれはやるしかないっ!」と(笑)。とりあえず「ラ・ブーム」をガガガー!と超ハイテンションで歌って、その次に「マスカット」をやって。そしたら勢い余って弦が切れて(笑)。で、最後の「シヴィラ(はある日突然に)」も超アッパーな感じでやって。DJではいわゆるインディロックを中心にかけたんだけど、それが本当に楽しかったんです。(レコードを)かけては前に出て踊ってかけては踊って、みたいのをやってたら、それを小西さんが観てて、「カジくんっていつもそんな感じ(ハイテンション)なの!? いや、すごい感動した!!」みたいな感じになってしまって(笑)。

仲間たちとの交流が生きたアルバム

──その一方で、若い世代との交流はどうですか? アルバムには住所不定無職のメンバーも参加していますけど。

住所不定無職のユリナさんは、プロデュースをしたときにいろんな声を出せるっていうことを知って、コーラスでの参加を依頼しました。彼女たちのポップセンスにはすごく刺激を受けましたね。ザ・ゾンビーズ子さんは若いのにロックの歴史に詳しいし、一方ユリナさんはアイドルもののおたくだったりして、そのバランスが面白いというか。ロックにこだわってる人はたくさんいるけど、彼女たちのようにポップにこだわってしかもそれがうまくいってる人たちは意外と少ないと思うんですよ。

──今回のアルバムでは「ポップアート」というのもキーワードになってますよね。

音楽とアートはいつも密接であってほしいと思うし、できれば生活はポップアートのように刺激的であってほしいんです。でも音楽はビジネスという側面が強いから、アートとばかりも言ってはいられないところがあるんですよね。なかなか難しい問題です(笑)。

──ひとつ前のアルバム(2010年「TEENS FILM」)で、カジくんと組んだriddim saunterは、イベント「BLUE BOYS CLUB」に登場した縁で?

イベントの1周年のときに出てもらって。知り合うきっかけはだいぶ前にチャーベくん(松田岳二)に紹介してもらったんですけど、確かに自分のイベントでより交流が深まった感じですね。ひと回りくらい違う世代とバンドを組んで、本当に面白かったです。僕が「ミニ・スカート」でデビューした頃、彼らは中学生ですしね。でも、そんな彼らが自分の音楽をリスペクトしてくれるのがうれしかったです。僕からリディムを見ると、新しいネオアコというかヒップホップ世代のソフトロックって感じで新鮮でしたね。そんな彼らが僕の日本語のポップスだとか、日本語のインディロックに反応してくれて、解散後みんな日本語で歌いだしたりもして。

──そういったいろいろな交流は、今回のアルバムに生かされましたか?

インタビュー風景

そうですね。カジリディム以外でも、例えば野宮真貴さんの30周年記念アルバムでプロデュースを1曲させていただいたりして、いわゆる渋谷系の人と作品作りができたこともアルバム制作に良い影響を与えてくれたと思います。

──ところでカジくんも昨年はソロデビュー15周年でしたよね。

15周年ライブの東京公演では、ゲストにSISTER JETやOKAMOTO'Sという若いバンドたちと、小山田(圭吾)くんや小西さん、かせきさいだぁという豪華で完璧なラインナップが揃ったので妙に気合が入りすぎて、ちょっとカッコつけすぎたライブになってしまったんですよね(笑)。お客さんに対するフレンドリーさに欠けたというか(笑)。で、そこが自分の中で納得いかなかったので、大阪公演はもっとお客さんが楽に観られるように、MCも多めに入れてやったんです。ゲストもNEIL & IRAIZAにヒダカ(トオル)くんだし、もっとホームな感じでできて。でも今度は逆にアンコールのときだったか、僕とヒダカくんが話しているときに、DJブースから堀江(博久)くんが、なんだかすごいヤジを飛ばしてきて、あんまり面白いから堀江くんもステージに呼んで話したりして盛り上がったんですよ。というのも、堀江くんはthe HIATUSとかバリバリやってるけど、僕のイベントはthe HIATUSのファンの方が来る感じでもないし、NEIL & IRAIZAの最初のほうから知ってるお客さんもいるけど、若くて堀江くんのことをよく知らないお客さんもいるのが、堀江くんの中でツボだったらしくて、なんだか勢いがついてとんでもないテンションになってしまって(笑)。あれはおかしかったなあ。

──今回のアルバムは、そんな堀江くんとチャーベくんのNEIL & IRAIZAが参加している曲もありますね。

堀江くんにはいつもやってほしいって思ってるんだけど、とても忙しい人だし、普段会う機会も少なくなってね。でも今回はうまくタイミングが合いました。

ニューアルバム「BLUE HEART」 / 2012年5月16日発売 / 2800円(税込) / AWDR/LR2 / BLUE BOYS CLUB / DDCB-12048

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CD収録曲
  1. トリコロール フィーバー
  2. ビーチボーイのジャームッシュ
  3. 君とサマーと太陽がいっぱい
  4. ヒツジ君とミツバチ君
  5. 春風がフュー
  6. 君は君を見てるだけ
  7. ブルージーンズ
  8. ホワイトシューズ
  9. 小さな光、新しい光
  10. フットボールの無い土曜日
  11. クローバーに囲まれた日
カジヒデキ「BLUE HEART TOUR」
  • 2012年7月13日(金)
    福岡県 福岡BEAT STATION
  • 2012年7月15日(日)
    大阪府 心斎橋Janus
  • 2012年7月16日(月・祝)
    愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2012年7月20日(金)
    東京都 渋谷CLUB QUATTRO
カジヒデキ

カジヒデキ

1967年生まれ、千葉県出身のシンガーソングライター。1989年結成の男女混成バンド・bridgeでベースを担当し、1993年3月に1stアルバム「Spring Hill Fair」をリリース。1995年のバンド解散を経て、1996年8月に「マスカットe.p.」でソロデビューを果たす。そのポップな音楽性とキャラクターが幅広い支持を受け、一躍“渋谷系”シーンの中心的存在に。他アーティストの楽曲提供やプロデュースなども多数手がけつつ、コンスタントにリリースを重ね、2008年公開の映画「デトロイト・メタル・シティ」に提供した「甘い恋人」はスマッシュヒットを記録した。2012年3月に自身のレーベル「BLUE BOYS CLUB」を立ち上げ、同年5月に約2年半ぶりのニューアルバム「BLUE HEART」をリリース。