音楽ナタリー PowerPush - TAISEI(SA)×カジヒデキ対談
同級生2人が語る青春時代とそれぞれの道のり
今年7月に東京・日比谷野外大音楽堂での初ワンマン開催を控えるSAが、ニューアルバム「BRING IT ON!」を4月8日に発表する。
1980年代半ば、高校生バンドにして全国のパンクスから絶大な支持を集めるも、わずか3年あまりで活動を止めたSA。中心メンバーであるTAISEI(Vo)は上京し、ハードロックバンドBAD MESSIAHでの活動を経て、1999年に再びSAとしての活動をスタートさせた。彼はBAD MESSIAHを始めるまでの2年間、ファッション系の専門学校に通い、そこでカジヒデキに出会ったという。パンク界のレジェンドと“渋谷系”の代表格がどのような青春時代を送ったのか。ナタリーではSAのルーツの一端を探るべく、2人の対談をセッティングした。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 上山陽介
“第2希望”で出会った2人
──お2人はかつて同級生だったと聞きましたが、当時のことを詳しく教えてもらえますか?
TAISEI ファッションの専門学校でバンタンデザイン研究所ってのがあって、そこで1年間一緒だったよね。
カジヒデキ そうだね。1987年だっけ。
──時期的にはSA初期の活動が終わった頃?
TAISEI うん。それまでは地元の岐阜にいたんだけど、次は東京で勝負したいなと思って。「東京に出るにはどうしたらいいだろう。ひとまず専門学校だな」と。本当は文化(服装学院)に行きたかったんだけど、落ちて(笑)。同じクラスにカジくんがいたんだけど、カジくんも第1希望はMD(マーチャンダイジング科)じゃなかったんでしょ?
カジ そうそう、僕もまったく同じ。文化に落ちてバンタンに入って、ファッションデザイン科がよかったんだけど……。
TAISEI 2人とも落ちてMDに入ったの(笑)。「第2希望は何ですか?」って言われて、なんだかわかんないけどMDって書いてたらそっちになっちゃった。
──カジさんはその頃、伝説のゴス / ポジパン期ですよね。
カジ そうです(笑)。Neurotic Dollを辞めたすぐあと。
TAISEI それ、同じクラスになってからけっこうイジったもんなあ(笑)。
──お2人とも音楽と同時にファッションに興味を持っていたということですね。
カジ パンクが好きだとやっぱりファッションにはおのずと興味が湧くんですよ。TAISEIくんはとにかくおしゃれで。SAのことは噂で聞いてたんだけど、当時はOiパンクというよりもモッズ寄りのファッションだったよね?
TAISEI うん。カジくんは上から下までクリストファー・ネメスだったんだよね。こんなでっかい靴どこで売ってんの?みたいな靴履いて。
同期のアーティスト&デザイナーたち
──学校では仲良しだったんですか?
TAISEI けっこうよかったよね。いつもいる仲間が6、7人いたのかな。ファッションはもちろん、音楽が好きな連中が集まってた。ハマちゃんっていうDamned好きでベースが弾ける奴がいて、僕とカジくんと3人で一緒にバンドやるかって話もあった。SAのあとは俺こういうふうになるのかーと思ってたら、2人とも2年になったらいねえんだもん(笑)。
カジ はははは(笑)。
TAISEI 僕はちゃんと卒業したんですよ。ほとんど学校行かなかったけど。
──同級生や近い学年でほかに今も活躍されている人は?
TAISEI バンタンにはいなかったけど、文化あたりだと洋服屋は多いね。ヒカル(BOUNTY HUNTER)とか高橋盾(UNDERCOVER)は同期じゃないかな。
カジ 桑沢(デザイン研究所)だとスチャダラパーとか。
TAISEI 桑沢とかセツ・モード(セミナー)とかよ、入れねえんだよ。頭よくねえと(笑)。
カジ そうそう。桑沢に行った人たちとかうらやましかったね(笑)。小山田(圭吾 / Cornelius)くんがセツだった。
──バンタンにも特有のムード、バンタン感みたいなものもあったんですか?
TAISEI 劣等感はあったね、ちょっとだけ(笑)。
カジ でもバンタンは特に音楽好きな人が多かったと思う。たまたま僕らの周りに集まってただけかもしれないけど。
TAISEI なんかみんなでつるんで酒ばっか飲んでた記憶があるなあ。カジくんは今でこそ北欧の人だけど(笑)、けっこう居酒屋で飲んでたよね。
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収録曲
- RISE TO ACTION
- GO ALL THE WAY
- 青春に捧ぐ part2
- あったけぇうるせぇ R&R バンド
- 雄叫び
- BELIEVE IN MAGIC
- 破滅型ダンディー
- YOUR DOOR
- グロリアス・ボーイ
- OKEY-DOKEY
- SA リマスターアルバム「GREAT OPERATION FOR REVIVE」2015年4月8日発売 / 2592円 / PINEAPPLE RECORDS / PAC-010
- SA リマスターアルバム「GREAT OPERATION FOR REVIVE」
収録曲
- DON'T DENY, GIVE IT A TRY!!
- THIS IS ALL I NEED
- DEATH OR SUBMISSION
- DIE WITH HONOR
- BORIN' BORIN'
- DRAWING YOUR FLAG
- FOR THE UNITY
- CHAIN
- KNOW RIGHT FROM WRONG
- LOOK UP TO THE SKY
- FOR WHO, FOR WHAT
- UPSTART BOYS
- BORSTAL BREAKOUT
- REVENGE OF GUTTER BOY
- runnin' BUMPY WAY <Ver.mov!>
- DELIGHT <Ver.mov!>
- FIGHT BACK TEARS
- PUMP IT UP
SA(エスエー)
1984年、当時高校生だったTAISEI(Vo)が中心となり結成したパンクバンド。キャッチーなメロディで人気を集めるも、3年弱で解散する。その後TAISEIのソロプロジェクトとして1999年に再始動。NAOKI(G)の加入をきっかけにバンドとして活動し始め、KEN(B)、SHOHEI(Dr)を迎えた4人編成となった。高い演奏力を持って繰り出されるパンキッシュナンバーと、熱いパフォーマンスで老若男女からの支持を集めている。2015年4月にニューアルバム「BRING IT ON!」をリリースし、同年7月には東京・日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブを行う。
カジヒデキ
1967年千葉県出身のシンガーソングライター。1989年結成の男女混成バンド・bridgeでベースを担当し、1993年3月に1stアルバム「Spring Hill Fair」をリリース。1995年のバンド解散を経て、1996年8月に「マスカットe.p.」でソロデビューを果たす。そのポップな音楽性とキャラクターが幅広い支持を受け、一躍“渋谷系”シーンの中心的存在に。他アーティストの楽曲提供やプロデュースなども多数手がけつつ、コンスタントにリリースを重ね、2008年公開の映画「デトロイト・メタル・シティ」に提供した「甘い恋人」はスマッシュヒットを記録した。2012年3月に自身のレーベル「BLUE BOYS CLUB」を立ち上げ、同年5月に約2年半ぶりのニューアルバム「BLUE HEART」をリリース。以降、2013年2月に「Sweet Swedish Winter」、2014年8月に「ICE CREAM MAN」とコンスタントにアルバムを発表している。