誰かと歌うと全身が沸き立つ瞬間がある
──「まほう」という曲は花譜さんと同じKAMITSUBAKI STUDIOに所属する理芽さんと一緒に歌われていますね。花譜さんにとって「誰かと一緒に歌うこと」の面白さ、醍醐味はどんなところにあると感じていますか?
神椿の仲間やキズナアイさん、最近では佐倉綾音さんとか、いろんな方と一緒に歌わせていただくことが増えて、とにかく楽しいです。レコーディングのときは皆さんの声がすでに入った状態のものを聴きながら歌えることが多くて。私はすごく触発されやすいんだなと気付きました。ライブでも同じなんですけど、一緒に歌っている声を聴きながら「うわああ、キタキタキタ!」みたいに全身が沸き立つ瞬間があって、自分のバイブスがパラメータを突っ切っていくような感覚! それが本当に気持ちよくて。あと「きっとここはこう歌うんだろうな」みたいな勝手な妄想をしてると、実際には「え、何今の歌い方! 好きすぎるのだが!?」みたいな驚きがたくさんありました。歌いながら声出そうになりますね。「オイオイオイオイそれはヤバイって!」みたいな感じで。とにかくめちゃくちゃ楽しいです。ちなみに「まほう」の中で理芽ちゃんの好きポイントを挙げるなら、「ああ もしかーしてー」のところです。
──「まほう」という曲は「音楽は魔法」という言葉で締めくくられます。花譜さんは「音楽は魔法」だと思いますか? 思うとすれば、音楽のどういうところが「魔法」だと考えますか?
絶対に自分を受け入れてくれるとわかっているものがあるだけで、すごく救われる瞬間というのがあって。音楽は自分の中だけでならどんなに都合のいい解釈をしてもいいし、現実逃避にしてもいいし、とにかく今欲しい言葉をくれるんです。でもそれってすごく独りよがりでわざとらしいな、痛いなと思って、ふと我に返ってすごく虚しくなってしまう瞬間もあって。自分の願望とか意思と関係なく、たやすく解けてしまう感じも魔法っぽいです。
花譜はみんなのもので、みんなも花譜
──今はオリジナル曲やカバー曲を動画でいつでも公開できる時代ですが、花譜さんはアルバムで曲を届けるということにどういう魅力を感じていますか?
私が好きなアーティストのCDを買うのは、まさしく魔法みたいな音楽に質量が欲しいみたいな……うまく言えないですけど、形になったほうがより執着心が生まれるというか、自分のもの感が強くなるんです。今の時代、サブスクがあってすごく便利で、いろんな音楽をすぐ聴けて、なんとなく音楽を聴くみたいな時間もめちゃくちゃ増えて、それはすごくいいんです。でもGEOでCD5枚を1000円で借りるときにメチャクチャ時間をかけて選出していたあの頃の高揚感はもうきっとこの先ない! 友達とのCD貸し借りのときにケースに挟む手紙交換もない! みたいなところで、なんとも言えないセンチメンタルを感じます。あと歌詞カード、大好きです。スペシャルサンクスに書かれている「and you」、大好き。なんか私がCDを買いたい理由に脱線してしまいましたが、「魔法」を買っていただいた方には、思う存分自分だけの音楽だ、魔法だと思って執着して、大事にしていただきたいです!
──音楽のリリースのみならず、“音楽的同位体”として「CeVIO AI」とコラボした歌唱ソフトウェア「可不」が発売されるなど、花譜という存在が与える影響はますます大きくなっています。今後の目標や挑戦してみたいことはありますか?
歌がうまくなりたい! ライブがしたい! 観測者(花譜のリスナーの総称)の皆さんとお話がしたい! 神椿の仲間ともっとコラボしたい! 英語の曲をたくさん歌えるようになりたい!
──「不可解弐Q1」のMCで「花譜というのがかりそめの体なのだとしても、私の中にある熱い気持ちは嘘じゃないと思います」と話していました。花譜というバーチャルな存在と現実にある自分という存在、その距離感をどう感じていますか?
花譜を取り巻くものすべてがバーチャルとリアルの境界線にまたがっていて、そこに私も一緒にグニョングニョンになっているの、面白いです。あと“みんなの花譜”だと思います。花譜を形作る方、みんな花譜です。このインタビューを読んでくれている皆さんもまた、花譜なのです。そういうことだと思います。
──すごく難しい聞き方をしますが、今の“あなた”にとって花譜はどういう存在ですか?
「誇り」です!!