Guiano|ボカロPを経てシンガーソングライターへ 初のセルフボーカルアルバムで見せる20歳の現在地

Guianoが3月24日にアルバム「A」をリリースした。

2014年にボカロPとしてデビューし、その後数々の作品を発表してきたGuiano。2020年にはボカロPとしての活動に区切りを付け、シンガーソングライターとしての活動を本格始動させた。そんな彼が発表したニューアルバム「A」は、全13曲を収録した初のセルフボーカルアルバム。ゲストには花譜や理芽といった、同じKAMITSUBAKI STUDIO所属のバーチャルシンガーが参加している。

本作の発売を受けて、音楽ナタリーではGuianoにインタビュー。アルバム「A」に込めた思いや、シンガーソングライターとしての活動を本格始動させた背景、20歳になった今感じていることなどを語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 草場雄介

父親にDTMを教わって

──Guianoさんが音楽に目覚めたのはいつ頃ですか?

Guiano

中学1年生のときに、「けいおん!」を観たのをきっかけにアコースティックギターを買ってもらったんです。でもギターは3日坊主で辞めちゃって、しばらく弾いてなかった。その後、不登校になってしまう時期があって、家で勉強をするようなタイプでもなかったから「何か特技を見つけなきゃ」と思ったときに、父親が趣味でやっていたDTMを教わったんです。父親にDTMを教えてもらいながら、買ってもらったギターも再開して音楽を作り始めました。

──お父さんはDTMでどういう音楽を作っていたんですか?

あくまで趣味の範囲だったので、作品を発表しているとかではなかったんですが、歌謡曲をいじってストリングスの音源で再生したり、ちょっと変わった音楽の楽しみ方をしていました。

──Guianoさんがボカロ曲を初投稿したのが13歳のときですから、DTMを始めてから初めてのボカロ曲を投稿するまでの期間が短いですよね。

確か1年経たないくらいなので、今振り返ってみると初投稿までが早いですね。ただ単に不登校だったからやることがなくて、家でずっとDTMをいじっていただけなんですが(笑)。

──ボカロ曲にはもともと触れていたんですか?

小学5年生で「千本桜」に出会ってからボカロにハマって、ハチさん、wowakaさん、DECO*27さんとかを片っ端から聴いてました。自分が好きな音楽がボカロだったこともあって、自分で曲を作るときも自然とボカロを選んだんだと思います。

13歳の少年が考えた一生使える名前

──Guianoさんの名前は、「Guitar」と「Piano」を組み合わせた造語ですよね。13歳のGuiano少年は何を思ってこの名前にしたんでしょうか?

一生使える名前にしたかったんです。大人になって変えるつもりもなくて、これからずっと使える名前で音楽に関連する、シンプルなものを考えて「Guiano」にしました。当時は平仮名表記で「ぐいあの」だったんですが。

──13歳の時点で「一生使える名前」を意識しているのはすごく達観していると思うんですよね。多くの中学生は、ついそのときの勢いで名前を付けてしまいがちじゃないですか。

僕もネットゲームとかでは、あとあと恥ずかしくなるような名前を付けていたんですよ(笑)。自分でも経験があったから、自然と音楽に使う名前には気を使えたんですよね。やっぱり痛くなくて、誰とも被らない名前を付けたかったので。

──今振り返ってみても、当時の自分の感覚からそう変わってませんか?

当時の自分に「ナイス」と言いたいですね。Guiano、いい響きだと思うんです。当時と変わらずこの名前には愛着があります。

Guiano

ライブに憧れて歌い始める

──ボカロPとして音楽活動を始めたGuianoさんが、自身で歌う楽曲を本格的に投稿し始めたのは昨年4月の「透過夏」からです。ご自身で歌う決断の裏にはどういう思いがあったのでしょうか?

ボカロを辞めるとか、そういうネガティブな理由ではなくて、単純に自分で歌ってみたくなったという一心ですね。飽き性なのもあって、いろいろな表現に手を出したくなるんですよ。その1つが自分で歌うという方法だった。

──もともと歌うのは好きなタイプだったんですか?

好きだったのかな……(笑)。そこまで意識して考えたことがなかったかもしれないです。ただ自分の歌が作品になるとは考えていなかったですね。アコギを弾きながら口ずさむことはあっても、中高生の僕は自分の歌がボーカロイドに取って代わるものになるとは全然考えていなかったんですよ。

──「ボカロに取って代わるものにならない」と思っていた考えを変えるきっかけになったことは何かありますか?

1つ大きな理由を挙げるとすればライブへの憧れですね。歳を重ねるごとに音楽を聴く範囲が広くなっていって、大きな会場でライブをするアーティストさんを観て「これをやってみたい!」と思ったんです。ボーカロイドで曲を作っているだけだと、なかなか大きな舞台でライブをすることが難しいと思うんです。だから自分で歌うのが手っ取り早いなと。

──「ボカロPとしての活動に区切りを付ける」と明言されているだけで、ボカロ曲の投稿を辞めるわけではないんですよね?

そうですね。あくまで今は自分が歌う表現に興味が向いているだけで、飽きたらまたボカロでも曲を作ったりすると思います(笑)。変に自分に制限はかけたくないんですよね。好きなときに、好きな表現で音楽を作れるのが一番幸せだと思います。

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「音楽は敵だ!」