KDDIが「もう、ひとつの世界。」をコンセプトに掲げた新たなサービスプラットフォーム「αU」をローンチ。「αU metaverse」「αU market」「αU live」「αU wallet」「αU dotadp」「αU research」「prompt αU」といった多岐に渡るサービス / 活動を通して、Web3.0時代におけるバーチャルとリアルの可能性を追求していく。
3月12日にαU metaverseにて水曜日のカンパネラによるバーチャルライブおよびミート&グリートの開催を控える中、R&Dコレクティブ(※1)のαU researchと、花譜らを擁する音楽レーベル・KAMITSUBAKI STUDIOによるコラボレーションプロジェクト「prompt αU」が始動。プロジェクトの所長には、KAMITSUBAKI STUDIOの統括プロデューサーであるPIEDPIPERが就任した。そして、このプロジェクト名を冠した展覧会「αU research × KAMITSUBAKI STUDIO presents prompt αU」が3月31日まで東京・渋谷ZERO GATEにて行われている。
展覧会では、KAMITUBAKI STUDIOのクリエイティブ表現において欠かすことができない要素であるテクノロジーにフォーカスを当て、αU researchによる技術開発を連動させた新規コンテンツを含む、さまざまなクリエイターの作品を楽しむことができる。本特集ではPIEDPIPERに展覧会の見どころについて語ってもらったインタビューと、花譜のコメントを紹介する。
※1. 「Research and Development」の略で「研究開発」を意味する言葉。
取材・文 / ナカニシキュウ
αU metaverse特集
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PIEDPIPER インタビュー
最先端のエンタメを追求するプロジェクト
──今回、KDDIのαU researchとPIEDPIPERさん率いるKAMITSUBAKI STUDIOによる共同研究開発プロジェクト・prompt αUなるものが始動しました。その第1弾アウトプットとして3月8日から31日にかけて「αU research × KAMITSUBAKI STUDIO presents prompt αU」という展覧会が行われているわけですが、「そもそもprompt αUっていったいなんなの?」というところを最初に伺えますか?
そうですね、KDDIさんと組むことになった経緯から言うと……今回一緒にprompt αUを立ち上げたKDDIの担当の方がもともとKAMITSUBAKI STUDIOや花譜を好きでいてくれて、ビジネス以前に表現の部分で共感してくれていたところがあったんですね。ライブにも毎回遊びに来てくれていたり。なので、前々から「何か一緒にやりたいですね」という話はしていたんですよ。その中で、僕らが通常のライブ制作以外に並行して推し進めていたWeb3.0系譜の試み……NFTだったり、XR表現やIP作りだったりという研究開発みたいなところと、KDDIさんのαUという試みとの接点が増えてきたので、「技術実験をベースにいろいろとコラボしてやっていこう」というものがprompt αUになります。
──KAMITSUBAKI STUDIOのコンテンツ力とKDDIの技術力を掛け合わせることで、それぞれ単独では実現の難しい最先端のエンタメを作り出していこうという取り組みになるわけですね。
はい。特に、今回の展覧会でメインコンテンツとなるイマーシブライブがその典型になりますね。花譜の「不可解弐Q1」とte'resaの「IMAGINARY WORLD」という、過去に行ったバーチャルライブをリビルドしてイマーシブ化するというものなんですが、これなどはまさにKDDIの技術力があって初めて実現するものと言えると思います。
──そのイマーシブライブというのは、従来のバーチャルライブとは具体的に何が違うんでしょうか。
ひと口にバーチャルライブといってもいろいろな形があるんですが……僕らがやってきたバーチャルライブは「バーチャル空間上に構築したライブ空間を中継して動画配信するもの」という位置付けになっていまして。その一方で、「メタバース空間にユーザー自体が入り込んで自由に歩き回ったりしながらそこで行われるライブを観る」という切り口の……例えばVRChatで観るようなものもバーチャルライブと呼ぶわけです。ただ、それをやろうと思ったらどうしても画質を落とすなどの妥協をしなければいけなかったりするので、KAMITSUBAKI STUDIOとしてはこれまでその方向性は追求してきませんでした。
──つまり、“映像作品寄りのライブ”としてのクオリティに重点を置いていたから……。
“参加性”というものはあまり重視していなかったわけです。それに対して、今回のエキシビジョンで体験していただくものは、ユーザーが歩き回ることは現状できないんですけども、いろんな角度から観られたり拡大できたりといったインタラクティブ性を付与したものになっていまして。
──なるほど。それを“イマーシブライブ”と呼称しているわけですね。
はい。今はまだできないんですけど、例えば投げ銭ができる仕組みなど、いろいろなインタラクティブな機能も今後追加していく構想があるみたいなので、動画を配信して「以上、終わり!」という方向のものとは違うものになっていくのかな、という感じですね。ちょっとゲームをプレイする感覚に近いのかもしれないです。
ようやくタイミングが巡ってきた
──そもそも今回、prompt αUとしての最初のアウトプット手段に“展覧会”という形を選んだのはなぜなんでしょう?
いきなり最新技術を盛り込んだフルサイズのライブや演劇といったショーを作り込もうと思っても、やっぱりなかなかハードルが高いわけですよ。それよりもまずはこういった、ある意味体験としての試行錯誤が許されるエキシビションという形態で見てもらうやり方が適しているんじゃないかなと思いまして。
──完成されたものを提示するには時間も労力もかかるから、まず「KAMITSUBAKI STUDIOとKDDIが組んだらこんなに面白いことになるよ」という“可能性”を断片的に見てもらおう、ということなんですね。
KAMITSUBAKI STUDIOとしてもこれまでに展覧会と言われるものをけっこうやってきているんですが、会場面積の問題もあって、どちらかというと物販がメインの“催事”に近いものだったんですね。本格的なエキシビションというものはやってきていないんです。その点、今回はかなり広い会場を確保できまして、3フロアでやるんですよ。なのでいわゆる展覧会と言いますか、作品の展示だったり実験的な技術のショーケースという側面が強くなっていて。もちろんKAMITSUBAKI所属のアーティストを大々的に打ち出していく目的もあります。
──なるほど。
あともう1つは、これまで僕らがやってきたことって、どうしても1日とか2日で終わってしまうタイム感の催しが多かったんですよ。ライブが特にそうなんですけど。それをもうちょっと、1カ月とかそのくらいのスパンで「その期間内であればいつ来てもらっても大丈夫ですよ」というようなユーザー体験を提供できるコンテンツをやっていきたい思いもあったので。
──PIEDPIPERさんとしては、ずっとやりたかったことの1つでもあるわけですね。
そうです。もともと展覧会とかそういったものはすごく好きだったので、「ようやくそのタイミングが巡ってきた」という感覚はありますね。ただ、やってみたらこれはこれでやっぱりすごく大変なので、ちょっと頻繁にはできそうにないなと(笑)。そういう意味ではけっこうレアなイベントになるかもしれません。
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展覧会「prompt αU」の見どころ