JAM Project コンセプトEP「THE JUDGEMENT」インタビュー|結成22年目のあくなき挑戦──新章へと踏み出したJAM Projectの“今”に迫る (2/3)

歪んだギターが全然入ってない

──先ほど「シアトリカル」という言葉が出ましたが、ほかにどんなコンセプトがありましたか?

影山 できるだけハーモニーを聴かせたいというのはありました。あとサウンドプロデューサーをお願いした志保ちゃんはクラシックを学んできたサウンドクリエイターなので、曲中にテンポが変わるとかそういうことが自然とできる。ロックの人はなかなかそういうわけにはいかない。

──そのおかげか、今回はこれまで彼女が関わった曲以上に寺田さんの色が出ていて、いわゆるJAM Projectっぽいバリバリのロックっぽさは薄いですよね。具体的に言うとギターの音色が目立ってなくて驚きました。

影山 言われてみたらそうかも(笑)。

きただに バイオリンやチェロのほうが目立ってますもんね。

福山 歪んだギターが全然入ってない。

影山 志保ちゃんに「ある程度好きにしていいよ」とお願いした時点でこんな感じになるのかなと思いましたけど。

きただに 今回の彼女は単に全曲編曲というだけでなく、もっと深く関わってますよね。Zoomミーティングにも歌の収録にも毎回参加してましたし。

影山 コンセプトを決める段階から参加してもらったしね。

奥井 志保ちゃんは劇伴もやってるし、ヨガの先生とヒーリングミュージックを作ったりもしていて。作る音楽の幅がすごく広いんですよ。

──特にEP前半はバラエティに富んでいるのを強く感じました。オーケストラのような壮大さの「Inception」で始まって、次の表題曲「THE JUDGEMENT」はケルト風味。そしてストーリーが本格的に描かれ始める3曲目からはエレクトロニックな「Karma~the dark side of human nature~」と重苦しい「3 seconds to midnight」が続くという。それぞれ制作時の思い出を振り返ってもらってもよいでしょうか。

影山 「Inception」は昔の映画が始まる前のオーバーチュアのイメージです。「ベン・ハー」とか「2001年宇宙の旅」みたいな。

──神の声が入っていたり、全英詞だったりと特別感がありますね。

影山 神の声をやってくれたRichard Kimは、オリジナルアルバムの前作「The Age of Dragon Knights」の表題曲でも歌ってくれた人です。もともとはアメリカのオタコンのオーガナイザーチームの1人で、ずっと友達なんですけど、普段からあんな威厳のある声でしゃべっていて(笑)。

きただに めっちゃええ声ですよね。英語での歌については……必殺のカタカナ英語です。

影山 作詞で協力してくれたSerena Leeがスタジオに入って、逐次ダメ出しされながら歌っていきました。

遠藤 この曲はライブの最初にいつも入っているような曲のイメージで制作していました。そういう曲はコーラスをすごく重ねているので、ソロで歌うというよりはコーラスワークを大事にすることを意識して収録に臨んだのを覚えています。

奥井 コーラスについては、今回は全曲大変だったよね。私はコーラス出身なので楽しかったですけど。

“マジでキレる3秒前”の歌

影山 次の「THE JUDGEMENT」は今回のストーリーを総括するような位置付けの曲です。アニメで言うと主題歌みたいな曲を作ろうという話が出て、最後に作りました。

──表題曲なので最初に作られたと思っていました。

きただに もともとはもっとロックっぽいアプローチで作っていました。

影山 後半がバラードメインになるだろうから、速い8ビートの曲がいいんじゃないかって。

きただに でも井上さんや志保ちゃんからの意見もあり、「なんか違う。もっと民族的な雰囲気……ケルトかな」というふうに舵取りが変わっていきました。

──次の「Karma~the dark side of human nature~」は欲望のままに生きる人間が破滅への道を突き進む様子を歌った曲です。

きただに ヒカルドが出したデモをベースに志保ちゃんが作った曲に合わせ、自分が追加で作った曲を組み合わせてできました。

──きただにさんが作られたのはテンポアップするところからですか?

きただに はい。そこから僕とヒカルドのラップっぽいものが入って。

──今までのJAM Projectにはなかった曲調と歌ですよね。その前の皆さんの悪そうな声と対照的でインパクトもあるし。

きただに ああいう声はけっこう好きなんですよ(笑)。

奥井 悪い人類の声ね。「3 seconds to midnight」は世界終末時計がモチーフのタイトルで、あれって基本的には「X minutes to midnight」って表現するんですよね。でもこの曲ではもう悪い人間に対して神の怒りが発動する段階だから3秒前という。

影山 マジでキレる3秒前や。

奥井 (笑)。ノアの方舟を扱った海外の映画があるんですけど、それを参考に観て作詞しました。神の審判がくだって追い詰められた人間がどうなるかという描写がすごかったです。人が人じゃなくなっていくというか。もう地獄ですよね。

──5曲目の「MOTHER」も奥井さんの作詞ですね。

奥井 これは人類の多くが滅んで静かになった地球がテーマです。「エヴァ」の最後のほうのシンジくんと1つになるシーンみたいなイメージで。

影山 さすがキングレコード(笑)。

奥井 長い時を経て、傷ついた体も癒えた母なる地球が神様に対して「そろそろ人類を許してはどうですか?」と訴える風景を書きました。

きただに 人類がほとんどいない世界ということで、僕の場合はアメリカのドラマ「ウォーキング・デッド」のイメージがあったんですよね。このEPではゾンビは出てきませんけど。

奥井 ちょっと世界感が違うね。

影山 ゾンビはねえ。

きただに だからゾンビは関係なくって(笑)。それで「ウォーキング・デッド」では生き残った数少ない人類同士が無線で通信するじゃないですか。あれが最後の「Hello Hello キコエマスカ?」になったんです。

──そんな元ネタがあったとは。「Hello Hello」から始まるフレーズが4回繰り返されますが、あれはすべてきただにさんの歌唱ですか?

きただに あそこは加工されているのでわかりづらいですが、男性4人がそれぞれ歌っています。

影山 コンピューターでいじると全部きただにに聴こえた。

福山 俺、遠ちゃんだけわかった。

遠藤 マジ?