音楽ナタリー Power Push - J

10thアルバムがカッコいい理由

Jがニューアルバム「eternal flames」を9月2日にリリースする。通算10枚目のソロアルバムとなる今作は、彼の挑戦が詰まった1枚だ。この作品について本人に話を聞いた。

取材・文 / 荒金良介 撮影 / 佐藤類

カッコいいと思うサウンドを詰め込んだ

──今作を聴いた簡潔な感想を言うと、ものすごくカッコよかったです!

ありがとうございます。自分でも本当にカッコいいアルバムを作りたいと思ってレコーディングに入りましたから、うれしいです。

──Jさんが思うカッコいいアルバムというのは、具体的には?

J

カッコよさにもいろんな角度があると思うんですけど、今回は、“やり続けてきたからこそ鳴らさなきゃいけない音”というのを意識しました。自分にとって通算10枚目のソロアルバムになるけど、10枚目ってある意味節目だったりするじゃないですか。だからこそ、自分がやり続けてきた音を改めて強く鳴らさないといけないと思って。今、自分自身がカッコいいと思うサウンドをギュウギュウに詰め込みました。それと同時に、力まず自然なフォームで作るってことも意識してね。

──「カッコよさにもいろんな角度がある」とおっしゃいましたが、ソロを始めた頃と今で、カッコよさの基準に変化はありますか?

変わらないもののほうが大きいかもしれない。自分がソロアルバムを初めて作ったのは1997年で、そのときはLUNA SEAのメンバーがそれぞれソロ活動をしたんです。ソロを始めたのはLUNA SEAからの反動もあっただろうし。その当時、僕は「自分はこういう奴なんだ」という、名刺代わりの作品を作りたかったというのも大きくて。そして、ソロではどういう音楽をやりたいかと考えたときに、自分が影響を受けてきたロックミュージック、つまり自分のルーツに忠実にありたいと思ったんです。それはいまだに変わらない。

──そうなんですね。

そういう意味では、自分が好きなロックバンドって、ずっと自分たちのサウンドを鳴らし続けているバンドなんです。普遍的なものを鳴らし続けるというか、俺はそういうバンドたちのカッコよさに惹かれて音楽を始めたし、ベースを弾き始めましたからね。

──Jさんが惹かれたバンドというと?

最初のきっかけはSex Pistolsでした。リアルタイムではなかったけど、そのインパクトは心に焼き付いてます。ほかにはU2とか……根本にあるものが変わらないバンドが好きですね。でも本当にやればやるほど、根本にあるものが変わらないっていうことがいかにすごいことなのかを感じるんですよ。バンドってアイデアや瞬発力次第で一瞬はものすごい力を出すことができると思うんです。最大瞬間風速っていうのかな。その最大瞬間風速を、どれだけ長い間吹かせ続けるか、それはバンドの力量やパワーに比例するんだと思う。そういう意味で、最大瞬間風速をキープしながら続けているバンドには敬服するし、刺激を受けますね。

──Jさんも最大瞬間風速をキープし続けているように感じるのですが、それは並大抵の努力ではないと思います。

そう言われると、うれしいですね。それを、挑戦したくなるっていうか。まあ結局は自分が楽しいから続けているというのもあると思うんですけど。理屈抜きに。

揺れ動かない普遍的なもののカッコよさ

──では今、音楽の楽しみをどこに見い出してますか?

このアルバムを作ってるときは挑戦の連続だったんですけど、それが楽しかったですね。どれだけ今の自分をこの作品に焼き付けることができるかなと考えながら、いろいろなことをしていました。今回リード曲が「I know」なんですけど、普通だったらもっと速いテンポの派手な曲をリード曲に選ぶだろうし……。

──飾り付けの多い楽曲を選びがちですよね。そういう意味では「I know」をリード曲に持ってくるのは、確かに1つの挑戦かもしれませんね。

ね? もちろん、そういう飾り付けの多い曲も大好きだけど、僕の中のロック観はそれだけじゃない。テンポはミディアムでも熱量は変わらずにスリルがあり、本当にカッコいいサウンド、そういうものをちゃんと形にしたかった。激しさだけに逃げたくないというか……激しい音も大好きなんですけど。

──ええ、わかります。

でもそれだけじゃなく、本当に普遍的な曲を作りたかったというか。ここまでやってきて「シンプルな中にもキラッと光るものがある、そんな曲が作れないと、なんかペラいな」という気持ちがあったんです。この10枚目のアルバムというタイミングでそういう曲をどうしても作りたくて。

──このタイミングで地中深くに根を張った、太い幹のような作品を作りたかった?

ですね。今の自分にとって、それをできることが一番カッコいいことだなと。純粋にいい曲を作り上げたかったし、いちメロディメーカー、いちコンポーザーとして、まだまだ挑戦したいっていう気持ちがあったんです。そして今回それが形になって、10枚目にして初々しい気持ちになりました。このフレッシュな感じに少し照れもあるんですけど(笑)。でもね、ここまでガムシャラに突き進んできたからこそ感じられることでもあると思うんですよ。これまでの積み重ねの先にあったものというか。

J

──なるほど。「I know」は、内側から思いがあふれ出てくるような味わい深い曲です。

このアルバムを象徴する曲の1つだと思います。

──今作はこれまで以上にJさんの色や節を感じさせる内容に仕上がってますよね。

自分がカッコいいと思うもの、今まで以上にさらに進化したもの、そういう曲で埋め尽くしたいと思ってました。これだけ熱い血が通ってる曲達でアルバムを埋め尽くすことができたのはよかったです。今回のレコーディングって不思議だったんですよ。いつもはアルバムの始めから終わりまでの道筋が見えているんだけど、今回は最終的にどういうアルバムになるのかずっと探り続けていた気がして。

──そうだったんですね。

1曲1曲の個性が強かったから。でも最後にパズルがバババッと合うようなスピード感で1枚に仕上がったんですよ。それが自分にとって本当に不思議で。できあがったものを聴いて、ベスト中のベストを作り上げられたっていう達成感はあるかな。毎回「前作よりもカッコいいものを作るぜ」とは思うその挑戦の連続なわけだから、こういう達成感を得られたという意味でも本当に愛おしいアルバムですね。

ニューアルバム「eternal flames」2015年9月2日発売 / cutting edge
スペシャルボックスセット [CD+DVD+バンドスコア+写真集] 10800円 / CTZD-20034/B
「eternal flames」
CD+DVD / 4104円 / CTCD-20035/B
CD / 3240円 / CTCD-20036
CD収録曲
  1. Verity
  2. my answer
  3. I know
  4. Immortal galaxy
  5. never gonna die
  6. with you
  7. wall
  8. Rollin'
  9. dream on
  10. Jayne
  11. Believer
DVD収録内容
  • I know(Music Video)
  • Documentary Film ※スペシャルボックスセットのみ収録
J LIVE TOUR 2015 - Live On Instinct -
  • 2015年9月5日(土)宮城県 Rensa
  • 2015年9月6日(日)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年9月12日(土)香川県 DIME
  • 2015年9月13日(日)広島県 CAVE-BE
  • 2015年9月19日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2015年9月20日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2015年9月23日(水・祝)北海道 cube garden
  • 2015年9月26日(土)石川県 Kanazawa AZ
  • 2015年9月27日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2015年10月3日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2015年10月4日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2015年10月10日(土)東京都 赤坂BLITZ
J(ジェイ)
J

1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる東京・日本武道館でのライブを敢行。また楽器メーカーESPから発売されているJオリジナルモデルのベース販売数は累計で5万本に達し、世界でもっとも売れているアーティストモデルのベースとなっているなど、現在も次世代のベーシストに影響を与え続けている。2008年にLUNA SEAが“REBOOT”(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2015年9月、通算10枚目のオリジナルフルアルバム「eternal flames」をリリースする。