ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい
恋とライブと孤独
「全国!ひゅーい博覧会」はもう1回やらなきゃ意味がない
──そもそも、この全都道府県ツアーをやろうと思った動機はなんなんですか?
僕はずっと文句言ってたんですよ。「帰りたい帰りたい」って(笑)。
──でももう始めちゃってるわけですよね。
そう。前にインタビューで僕が「毎日ライブしたい」って言いまくってたんですよ。そしたらスタッフが本当に毎日ライブを入れてくれました。ヘタなこと言うもんじゃないですね(笑)。
──つまりもとは、ひゅーいくん自身の……。
そう。僕が発端なんです。でも50公演、やだやだ言いながらやったんだけど、絶対にもう1回やりたいと思います。むしろもう1回やんなくちゃ意味ないなって。今回は花を咲かせるために種を撒きに行ったみたいな感覚だったんですよ。だって僕のことを知ってて来てくれるわけじゃなくて、僕から歩み寄って「石崎ひゅーいです、観てください!」っていうツアーだったから。だから花が咲く頃にもう1回行かないと意味ないなと思っています。
──「白いチューリップの種を撒いた」ってライブのMCで言ってましたね。
そうですね。それで「花が咲いたらもう1回来て、それを物販で3500円で売る」って。まあ売らないですけど(笑)。でも白いチューリップの花言葉って「失恋」とか「さよなら」みたいな悲しい意味で、それを再び取りに来るということは「もう一度会おうぜ」っていう意味なんです。そういうメッセージは残してきたつもりです。
──そのときまでに成長しないといけないということですね。それからツアー中はUstreamでライブを配信してましたよね。それはファンの人に伝えたいからですよね? 自分の姿を。
そうですね。47都道府県50公演をただ回っただけで終わらせないためにはどうすればいいか、ということをスタッフみんなで考えて。リアルタイムで追って見せていくっていうのを示したかったんですね。
──その間に、ライブの映像を自分で観たりしました?
はい。ライブが終わったあと、次の街に移動する車の中でスタッフと観てましたね。
──自分でついさっきやったものを観ていたわけですね。それはどんな感じでした?
僕、自分のことを聴くのも観るのも好きなので、「カッコいいな」としか思わない。「俺カッコいいな」って(笑)。でもこれだけあると、正直ダメなライブも何回かあって……。
──パワーが出切らないような?
はい。そういうときは観なかったです。いいときしか観ない(笑)。
本能98%、理性2%のライブが理想
──ひゅーいくんのライブは、基本的にいつも全力投球ですよね。ああいうスタイルはどうやってできたのかという話を聞きたいんですけど。
僕、茨城県の水戸出身なんですけど、高校生のときに水戸にハードコアシーンがあったんですよ。その頃、COCK ROACHっていうバンドがいろんなハードコアバンドを水戸に呼んでいて。そのCOCK ROACHの後輩として一緒にライブをやらせてもらってたから、そういう血があるんじゃないかな。歌うこと自体がエモーションとイコールになってるというか、ライブになると血が騒いじゃうというか。
──常に120%の力でライブをする感じですね。気が付いたらそれが自分のスタイルに?
そうなんですよ。もうそれがスタイルになっていたんです。
──どんなことを考えながらパフォーマンスしてるんですか?
無ですね。無に近い。ライブ前にはいろいろ面白いことをやろうって考えますけど、基本的にステージに立ったらもう何も考えない。これがいいライブをできる一番のポイントで。要するに自分を無駄がない精神状態にするというか。
──でも多少意識しなきゃいけないこととか、どうしてもあるんじゃないですか? 全体の流れだとか。
それを脳みその中の50分の1くらい意識しておくんです。それとエモーションが合致するときがくるんですね。いや、むしろ合致させるのかな。そういう感じですね、僕のやり方は。
──そういうライブって、どのぐらいの頻度であります?
正直なところ、そんなにできないです。でもだから続けていきたいのかな。なんとなく理想みたいなのもあるんだけど、まだまだ合致できてないなっていう感覚はあります。
──どういうライブができたら理想だと思います?
大前提として、まず歌がちゃんと聞こえるライブですね。あとは動物園で大勢の人が動物を観てるみたいな感じがいいかなと思っていて。みんなは動物園に来たお客さんで。
──(笑)。ひゅーいくんが動物? それくらい本能的にやったほうがいいということですか。でもそうすると50分の1の意識しなきゃいけないこととの兼ね合いが、また難しいですね。
そうなんですよ。それでヘンなことやっちゃうときもあって。
──考えすぎてもいけないし。
考えすぎたらダメなんですよね。絶対にダメ。考えちゃうんですけどね。
──とはいえ、きれいにバランスがとれてるひゅーいくんもあまり想像できないですけどね。
そうですね。だからできないのかもしれないです(笑)。
──でも「こういうふうに向かっていけばいいんだ」という糸口はつかんでるっぽいですね。
はい。気持ちの持っていき方の糸口ですね……今話していて思ったんですけど、よく考えたらこれ大きいなと思いますね。話してたら気付きました(笑)。
収録曲
- 夜間飛行
- 1983バックパッカーズ
石崎ひゅーい(いしざきひゅーい)
1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、高校時代より音楽活動を開始する。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビュー。11月には1stシングル「ファンタジックレディオ」と、初のライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」を同時リリースした。2013年2月から5月にかけて全国47都道府県ツアー「全国!ひゅーい博覧会」を開催。6月5日にはテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」をリリース。9月からは東名阪ワンマンツアーの開催も決定している。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。