ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい

人に寄り添う歌を歌いたい 新人新鋭シンガーソングライター出現

自分の歌を100万枚売りたい

──現在のソロアーティストに転向したきっかけは?

大学で組んだバンドは2年前くらいまで続けてたんですけど、売れてないっていうのもあって、やっぱりどんどん煮詰まっていって。そんなときに、よく出ていた横浜のライブハウスで須藤晃さん(音楽プロデューサー)と出会って、そこで運命が変わりました。バンド時代から力になっていただいてたんですけど、そのうち「1人でやれ」って背中を押してくれて、僕も思い切ってやってみようかなって。

──それでバンドは解散したわけですね。実際ソロになってからは、音楽性にも変化はありましたか?

全く違うってわけでもないんですけど、以前はバンドで音を出しているというフィルターみたいなものがあったのかなと。でもソロになった瞬間、それが自然と外れて、石崎ひゅーいというものに歌が寄ってきたっていう感覚はありましたね。

──少し話は戻りますが、須藤晃さんって尾崎豊さんを発掘されたことでも有名な方ですよね。

はい。僕も尾崎さんの曲をよく聴いていたし、須藤さんのことも著書を読んだりして知ってました。だから声をかけていただいたときは「おお!」って感じでした。

──ひゅーいさんにとって、須藤さんはどんな存在なんですか?

自分を信じる力をめちゃめちゃ与えてくれる人ですね。ああしろ、こうしろとは何も言わないんですけど、僕をすごく理解してくれて、いつも自信を植えつけてくれる。須藤さんがいなかったら、今の僕はないんじゃないかと思います。

──「自信を植えつけてくれる」とのことですが、普段のひゅーいさんって、あまり自信がないタイプなんですか?

はい、全然ないです(笑)。

──ところで、ソロに転身したのが26歳。現在は28歳ですが、そろそろ普通に就職しようかなとか、年齢的な不安はなかったですか?

すごくありましたね。でも同時に、このまま100人200人のお客さんの前でライブをしていくのもいいけど、もっと自分を試したいって気持ちも強くなってて。このままじゃダメだ、自分の歌でCDを100万枚売りたい、もっとでかいステージに行きたいっていう気持ちが年々強くなってたように思います。

──それで夢を諦めることはできなかったと。で、今ついにメジャーデビューへの道が開かれたわけですけど、インディーズとはやっぱり違います?

だいぶ違いますね。メジャーという場所にいるだけでモチベーションが上がるし、自信みたいなものも生まれるし。メジャーはずっと行きたいと思ってたところだったんで、決まったときは純粋に「やったー!」って感じでした。

曲は“出す”より“出てきた”ものが人間らしい

──普段、楽曲はどんなときに生まれているんですか?

作ろうと思って作るタイプではないですね。どっちかというと、日常で自分の中にどんどん溜まっていく感情を歌にしてるというか。どのタイミングでそれを出してるのかは全然わかんないんですけど、とりあえず出てきた言葉を膨らませていく感じですね。

──なるほど。

だから正直、僕はこれを伝えたい!っていうものが今はあまりないんです。それよりは、すごい身近な人への感情……例えば母ちゃんを喜ばせてあげたいとか、これを聴かせたら女の子にモテるんじゃないかとか。でっかいものじゃないんですけど、誰かしら人に対して作ってるものが多い気がします。曲は“出す”より“出てきた”ものが人間らしいと思うし、僕はそっちのほうが好きなんですよね。

──身近な人への感情ということですが、対象はどんな人が多いんですか?

わりと母親に対しての曲が多いのかな。あとは別れた彼女とか(笑)。

──これからも、そういう自分のプライベートが元になった作品を書いていくと思いますか?

多分そうなっちゃうと思います。むしろ体験してないことは書けないんで。

──でもひゅーいさんの歌詞って、全てがリアルで生々しいというよりは、どこかファンタジックな要素も含まれてるのかなって。

もしそう感じてもらえたなら、多分それは母親の影響だと思います。母は宇宙がすごく好きで、家も星まみれだったんですよ。

──星まみれ?

はい。天体望遠鏡が家にいっぱいあったり、壁に星のシールがたくさん貼ってあったり。ちょっと宇宙人みたいな人だったんですけど(笑)、僕が人生で一番影響を受けた人はやっぱり母なので、歌詞にもそういうファンタジックな感じが出ちゃうのかもしれないです。

石崎ひゅーい(いしざきひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名。高校時代より音楽活動を開始し、高校卒業後に大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年4月から行われたRakeの全国ツアーでは12会場でオープニングアクトを務めた。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューを果たす。