音楽ナタリー PowerPush - 石橋凌

“ネオレトロ”モードで体現した本当の音楽

自分の表現したい音楽を作ってくれるメンバー

──実際今作は「表現者」からテーマを変えず、つまりそこからブレてない。

それは今回も一緒にやってくださったミュージシャンたちが僕のやりたいことをよく理解してくれてるから、こういうふうに形になったんだと思ってます。僕が思い描いていた以上に豊かなものにしてくれたから。

──池畑潤二(Dr)、渡辺圭一(B)、藤井一彦(G)、伊東ミキオ(Key)、梅津和時(Sax)というメンバー以外には考えられない。

石橋凌

そうですね。それはなぜかと言ったら、皆さん、僕が幼少の頃から聴いてきた素晴らしい音楽を僕以上に深く聴いているので、話が早いんですよ。「あの音楽のああいう感じを目指したい」というような話を伝えるのに、全然時間がかからない。

──それだけの信頼関係があって一丸となった音を出しながら、しかしバンドという打ち出し方はやはりしたくないんですか?

ええ。例えば前のバンドで僕は4分の1の仕事をしていたわけです。あとの4分の3はそれぞれに任せていた。僕が憧れていたバンド……The Rolling StonesでもThe BeatlesでもCCR(Creedence Clearwater Revival)でもそうですけど、そういうふうにそれぞれの役割分担というものがあって成り立っていたと思うんですね。それを僕も目指したかった。でもそれはもういいと。学んだこともたくさんあるけど嫌な思いもしてきたので。

──今はまず自分の表現したい音楽が核としてハッキリあって……。

うん。それを今のミュージシャンたちに助けてもらっているということですね。

1本でも多くライブをやりたい

──ところで今回はフルアルバムではなくミニアルバムという形態です。それこそARB時代はほぼ1年1枚くらいのペースでフルアルバムを出していました。時代がそういうペースを求めていたんでしょうけど。

そうですね。当時は3年に2枚くらいのペースでアルバムを出さないとプロモーションなりツアーなりに発展しないというところがあった。それが当時のシステムだったんですね。でもそれを続けていると、ノルマみたいになっちゃうわけですよ。自分の納得のいくレベルに達していなくても、とりあえず10数曲そろえて出さなくてはならないっていう。

──でも今はもうそういう時代じゃなくなったので、捨て曲を入れてまでもフルアルバムを作るより、本当に聴かせたい曲だけを集めた濃いものをミニアルバムとして届けたほうがいいという考え方なんでしょうか?

そうですね。さっきも言ったように、今はまず1本でも多くライブをやって歌いたいんですよ。で、そこで歌いたい曲があれば作品にして出したいという発想なので。

ようやく音楽を楽しめるようになった

──この作品にはライブテイクも2曲収められてますが、スタジオ録音の新曲もライブのよさを思い出させるものになってますね。生々しくて、ライブのダイナミズムのようなものが伝わってくる。そのあたりのこだわりもありましたか?

石橋凌

はい。僕はバンド時代にいろんな経験を経てきて、打ち込みを使ったこともあるし、サンプリングを使ったこともありますけど、やっぱり結局は生音のよさにかなわないし、生音によるグルーヴが絶対なわけですよ。ボブ・ディランでしたか、「音楽はライブで作られる」ということを言ってましたけど、本当にその通りで。お客さんのリアクションも全部含めて初めて音楽はできあがるという考えがある。だからスタジオで録るときにもなるべくライブの生々しさを反映させたいんです。要するに生きた音楽を作りたいんですね。僕にとって詞や曲は自分の子供みたいなもので。その曲をライブでやったときにお客さんが盛り上がったり感動してくれたりするのはすごくうれしいんです。なぜなら自分の子供を愛してもらえたってことだから。

──その話で言うと、今回は実に元気のいい子供たちですね(笑)。

うん(笑)。

──ライブで歌うみたいに、凌さんがすごく楽しんで歌っているのがわかります。

実際、楽しんで歌ってましたからね(笑)。19歳で上京して音楽をやり出して以降、やっと本当に音楽を楽しめるようになったという感覚なので。

ミニアルバム「Neo Retro Music」2015年1月28日発売 / 2160円 / avex trax / AVCD-93061 / Amazon.co.jp
「Neo Retro Music」
収録曲
  1. ヨロコビノウタを!
  2. Rock'n Rose
  3. 駄馬のいななき
  4. AFTER'45(英語ヴァージョン)
  5. Got My Mojo Working(ライブヴァージョン)
  6. Route 66(ライブヴァージョン)
石橋凌ワンマンソロLIVE「Neo Retro Music 2015」
  • 2015年2月21日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2015年2月27日(金)北海道 ジャスマックプラザ ザナドゥ
  • 2015年3月6日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2015年3月7日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2015年3月20日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
石橋凌(イシバシリョウ)

石橋凌1956年生まれ福岡県出身のミュージシャン、俳優。1977年に結成され、数々のアーティストに影響を与えて2006年に解散したロックバンドARBのボーカリストとして知られる。また、1990年から現在まで並行して役者としての活動を行っている。2011年12月にアルバム「表現者」を発表して音楽活動を再開。その後ライブ活動も精力的に展開し、2013年3月には赤坂BLITZ公演の模様を中心としたライブDVD / Blu-ray「SHOUT of SOUL」を発表。2015年1月にミニアルバム「Neo Retro Music」をリリースした。俳優の活動としては、現在フジテレビ系ドラマ「ゴーストライター」に出演中。