20代前半に書いた歌詞がさらに説得力を増した

──ニューアルバム「17」も見事に日本のロックンロールの王道を行ってますよね。もちろんTHE イナズマ戦隊らしさも全開で。

上中　自分たちとしてもTHE イナズマ戦隊のド真ん中を表現できたと思いますね。それはホンマにうれしいし、最高ですよね。

山田　笑って泣けるアルバムの最高峰だと思います。

──アルバム制作中も「自分たちのど真ん中を表現する」という意識はあったんですか？

上中　まず、17周年っていうのがデカかったんですよ、やっぱり。イベントと並行してアルバムを作ってたから、お客さんと接する中で感じたことだったり、そこで生まれた気持ちを切り取った曲が自然と増えて。感謝の気持ちだったり、未来に対する思いだったり。

中田　そうやな。

上中　昔はね、「もっと遠くまで自分たちの声を飛ばさないと」っていう気持ちが強かったんですよ。でも、お盆の時期にわざわざ長崎まで来てくれるファンがいてくれるんやから、まずはその人らに満足してもらわないとあかんやろって。THE イナズマ戦隊を好きでいてくれる人にしっかり届けたいっていうのはあったかな、今回。俺らも少しずつ進化してるから、メッセージも伝わりやすくなってるやろうし。

──以前はここまでストレートじゃなかった？

上中　もっとヒネくれた感じがあったかもしれないですね。

中田　周りの人からよく言われるのは、「丈弥が20代前半に書いた歌詞が、30代になってさらに説得力を増した」っていう。

久保　年相応になってきたというか。

上中　それはあるな。俺、23歳のときに「ありがとう人生」って曲を書いてますからね。その前の年まで仕送りもらってる大学生だったのに（笑）。

山田　ちょっと早かったな（笑）。

上中　今だったら「ズダボロの人生もいい」みたいなことを歌っても伝わると思うんですよね。けっこうズダボロの人生を味わってますからね、俺らも。レコード会社、何回変わったことか……。

中田　ホンマやな（笑）。

上中　今、自分に染みるからね。「ありがとう人生」が。

──ファンも同じように歳を重ねてるわけで、THE イナズマ戦隊のメッセージがもっと切実に伝わることも増えてるんじゃないですか？

上中　そうですね。ずっと継続してファンでいてもらうって、難しいことだと思うんですよ。俺らはそれができてるから、こうやって音楽で食えてるんじゃかなって。曲がボディブロウみたいに効いてるというか。

白井良明さんとの関係が「先生と生徒」じゃなくなってきた

──リード曲の「ジャパニーズドリーム」の「共に見に行こう 俺達の未来」もめちゃくちゃストレートなメッセージですね。

上中　小学生でもわかるでしょうね、これは（笑）。最初に掲げたデッカイ夢って、ほとんどは叶わないと思うんですよ。でも、少しずつ形を変えながらもやりたかったことを続けられることもあるし、七転び八起きでがんばっていこうや！っていうことですね。今はそういう歌を気持ちよく歌えるんですよ。まあ、自分たちの夢は叶えられてないですけどね。今年も紅白歌合戦のオファーがなかったし。

中田　せっかくスケジュール空けといたんやけど（笑）。

上中　バンドを始めたときは「バンドでメシが食えたら最高やな」っていうだけだったんですけどね。そういう意味では、叶ってきてるのかも。

──「ジャパニーズドリーム」と「恋人よ」は白井良明（ムーンライダーズ）さんがアレンジャーとして参加。白井さんとのコラボレーションは2009年の6thアルバム「ジタバタ大作戦」以来ですね。

久保　最近はセルフプロデュースが続いてたんですが、自分たちの発想を超えるようなアイデアが欲しいと思って、ひさしぶりに良明さんにお願いしたんです。自分たちで完成図が作れるようになったからこそ、今良明さんと一緒にやったら、どんな化学反応が起きるのだろう？と思って。

中田　自分たちにはない引き出しをパカッと開けてくれた感じですよね。どっちの曲も期待を超える仕上がりになったし、お願いしてよかったな、と。

上中　以前一緒にやったときは、良明さんが何をやってるのかもわからなかったんですよ。今回は「なるほど、そう来たか」みたいなことがわかるようになって、さらに楽しかったですね。

山田　ちょっとは成長できてたんでしょうね。

久保　先生と生徒の関係から、もっとちゃんと向き合えるようになったというか。今回は、音を足すだけじゃなくて、削ることの大事さを教えてもらいました。

上中　そういえば前にウルフルズのケイスケさんからも「ロックバンドは音の隙間を大事にしたほうがいい」って言われたんですよ。そのときは「ケイスケさん、何を言ってんのやろう？」って思ったんですけど（笑）、やっと意味がわかってきた。

──歌詞の質を上げるためにやってることは何かありますか？

上中　俺は上京したときに「とにかく遊べ」って言われたんです。いい歌詞を書くためには、人生の経験値が必要だって。で、ライブの前日のリハーサルのときにリハーサルを抜けてディズニーランドに遊びに行ったら、えらい怒られましたけど。

山田　そうやな（笑）。

上中　最近はアイドルに歌詞を書かせてもらうこともあって。「上中さんのフィルターを通した歌詞をお願いします」っていうこともあるし、「大自然の中に妖精がいるようなイメージで」って言われることもあるんですけど（笑）、自分なりに具体化できるようになってるとは思います。