生田絵梨花「I.K.T(I Know Tomorrow)」特集|希望を抱いて明日へと進む、“愛”に満ちた1stフルアルバム (2/2)

大切な仲間たちに向けた言葉

──先ほどの「ナイトアクアリウム」のほか、生田さんが作詞に携わった曲はほかにも収録されています。中でも「百日草」はすごく普遍的な魅力を持った楽曲ですよね。作曲は「制服のマネキン」「君の名は希望」「きっかけ」など乃木坂46の数多くの楽曲を制作した杉山勝彦さんが手がけています。

「百日草」も完成までに時間かかりました。だって、乃木坂46時代にたくさんお世話になった杉山さんが作曲してくださった曲に自分が歌詞を書くなんて、プレッシャー以外の何ものでもないじゃないですか。書いては「違う!」と全部消して、を何回も繰り返しました。で、いろいろ書き直していくうちに、私にはグループで過ごしてきた長い時間とかけがえのない仲間がいて、今は卒業して1人になり、それぞれの道を歩んでいる……そのことを曲に乗せられたらいいんじゃないかと、友情とか戦友をテーマに書くことに決めて。そこから「百日草」の花言葉に出会い、これは自分が思っていること、書きたいこととリンクするなと確信したら、一気に筆が進みました。

──「百日草」の花言葉は「変わらない愛」「絆」「遠くの友を思う」だそうですね。

私にとってはグループで過ごした思い出とか仲間たちとの絆や愛がテーマになっているけど、聴く人によってはそれが学校生活を一緒に送った友達かもしれないし、自分と一緒で離れ離れになった友達かもしれない。それぞれの環境や大切な友達への思いが曲と重なったらいいなと思っています。

──リリースタイミングも4月と、新生活がスタートしたタイミングです。新生活が始まり、それまでと環境が変わった人たちがこの曲を聴くことで、心強さを覚えるかもしれませんね。

そうだったらうれしいな。あと、この曲では言葉を語りかけるような歌詞を初めて書いてみたんです。今回この曲にトライしてみて、友情ソングって難しいなと感じたんですよ。いわゆる男女のラブでもない、友への愛ってどう表現したらいいんだろうって。そうしたら、スタッフさんから「手紙を書くように、歌詞を書いてみたらいいんじゃない?」という提案をいただいて、「ああ、そうか!」と。確かに私は今まで、しゃべり口調とか語りかけるような書き方で作詞をしたことがなかったですし、歌詞をいざ書こうとするとどこか構えてしまって、きれいにまとめようとか、いいことを書こうとしがちなところがあったんです。親しい間柄のメンバーへの言葉だからこそ、こういう手法のほうが本音を素直に伝えやすいんだなと実感しました。

生田絵梨花

初めて挑戦した“コライト”

──生田さんが作詞に加え、野村さんと一緒に作曲も行った「trampoline」に関してはいかがですか?

私は今まで、曲を作るときは1人でピアノの前に座って、鍵盤を弾きながら歌うスタイルだったんですけど、今回は野村さんと一緒にスタジオに入って、初めてコライトに挑戦してみました。自分から生み出たものに対して「もうちょっとこういう方向もあるんじゃない?」とか「もっとこうしてみたらどう?」と意見をいただき、自分の予想していないところにどんどん進んでいけることがすごく楽しくて。「trampoline」に関しては、そのコライトの初回に生まれたものなんですけど、当初は曲を作るというより「とりあえず1回セッションしてみよう」みたいなライトな感覚だったんですよ。まずは「どんな曲が好きなの?」という会話から始まったんですが、私がいくつか挙げた曲の中に福山雅治さんの「最愛」があって。「いつかこんな曲が作れたらいいな」とか話しながら、「こういうコードなんだ」と軽くピアノを弾いてみるところから始まり、どんどん変化を遂げて、まったく別の新しいメロディが生まれていったんです。なので、実は最初はバラードだったんですけど、野村さんが「ちょっと試しにテンポアップにしてみよう」と提案してくださって今のテンポ感になり、さらにメロディもどんどんブラッシュアップしていき、私もいろいろ変えていった結果、今の曲調になったわけです。

──「最愛」がまったくイメージできないほど、オリジナルなものへと進化しましたね。

そうなんですよ。「こんなパターンあるんだ!」ってびっくりしました。で、その実験している楽しさが弾むような感覚として楽曲に反映されて、トランポリンというワードに紐付いていきました。私、子供の頃はトランポリンで跳ぶのが大好きだったんですけど、「そういえば、大人になるとまったくやらないな」と気付いて。子供の頃はワクワク感を求めたり、好奇心や無邪気さから遊んでいたけど、そういう心の弾力みたいなものを大人の視点で表現できないかなと思い、こういう歌詞になりました。

生田絵梨花

──一緒に同じ場で曲作りをすることで、生田さんの中に潜在的に存在していたものを引き出してもらえたんでしょうね。

そうだと思います。野村さんに言われた「そんなに優等生的にまとめようとしないで、もっとラフでいいんだよ。いくちゃんにはプロの作詞家には書けない、いくちゃんだからこそ出てくる言葉があるんだから」という言葉がすごく心に響いて。確かに私は何かを形にするとき、誰かに受け取ってもらうことを考えて、きれいにまとめようとする癖があったので、それを1回取っ払うことで自分の中に潜んでいたものをすべて引き出してもらった気がしますし、それによってだいぶ自由になれたんじゃないかと思います。

──それもあってか、「trampoline」や「百日草」からは素の生田さんが見え隠れしますし、その一方で「ナイトアクアリウム」での表現はどこか作家性もうかがえる。表現者としてのさまざまな顔を、このアルバムから見つけることができるんじゃないでしょうか。

ありがとうございます。グループ時代から見ていただいている方にそう言ってもらえるのは、本当に自信になります。

さわやかに歌うことができた「青い春」

──アルバムは「今も、ありがとう」で始まり、「朝、目が覚めたら」で本編が終了。カバー曲の「青い春」はボーナストラック的なポジションかなと思います。「朝、目が覚めたら」は「I Know Tomorrow」というアルバムタイトルが意味することともリンクしていますし、締めくくりにぴったりの1曲だと思いました。

これもすごくいい曲ですよね。今回はどの曲を歌うか、いろんな楽曲を聴かせていただいて決めたんですけど、「朝、目が覚めたら」はメロディからも歌詞からもじんわりと温かいものが伝わってきて、最初に聴いた瞬間に「絶対に歌いたい!」と思いました。今おっしゃっていただいたようにアルバムタイトルに込めた思いがここに到達するという意味でも、曲順的にはラストにふさわしいなと思い、ここに置きました。

──そして、正真正銘のラストにSUPER BEAVERのカバー「青い春」が用意されている。

三ツ矢サイダーのCMソングのお話が決まって、この曲をカバーすることになりました(参照:生田絵梨花が三ツ矢サイダー新CMでSUPER BEAVER「青い春」カバー披露)。もともとSUPER BEAVERさんは大好きなので、歌うことができてうれしかったですし、1st EP「capriccioso」でアーティストさんに初めて楽曲提供してもらったのがSUPER BEAVERの柳沢亮太さんが書き下ろした「だからね」だったので、いろんな縁を感じます。

生田絵梨花

──ギターのイメージが強い原曲を、ピアノ中心の疾走感あふれるアレンジに変えたところも、非常に興味深かったです。

このアレンジをしてくださったのは、YouTubeにアップした「雪の華」と「晩餐歌」のカバーのアレンジを担当された佐々木望さんなんです。「青い春」もものすごいスピードでアレンジを仕上げてくれて。キラキラした音使いに引っ張られるように、さわやかに歌うことができました。

──先ほど、曲順はだいぶ悩んだとおっしゃっていましたが、確かに今回はどう並べるかで全体から受ける印象がだいぶ変わりそうですよね。

どの曲も「等身大の愛」というテーマのもと制作されたけど、曲調とかストーリーはさまざまなので、そこをどうつないでいくかはかなり重要だなと思って。何回も曲を入れ替えて聴き直しました。

──にしても、2曲目に「ピリオド」というタイトルがあると、聴き手としてはドキッとしますよ。

ですよね(笑)。「ピリオド」ってメッセージ性としても言葉としても強くて、アルバムでもそうだし、ライブで歌うときも……例えば、MCで「皆さん、本当にいつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と言ったあとに「ピリオド」を歌ったりすると、知り合いから「そこでピリオド打つんかい!」とツッコまれたりもしました(笑)。でも、すごく大好きだし特別な曲だし、配信してから反響も大きかった楽曲なので、これは2曲目に置きたいなと思ったんですよ。

──制作に関してはもちろん、そういう楽曲の配置の仕方含め、生田さんが音楽活動を心の底から楽しんでいることが伝わるアルバムになりましたね。

それこそが私の思いでもあるし、一緒に制作してるチームの皆さんの思いでもあるのかなと。実は今回、乃木坂46時代に曲を書いていただいた作曲家の方々がたくさん参加してくださっているんです。

──言われて気付きました。確かにそうですね。

皆さん、乃木坂46時代の私のことも知っていて、そのうえで今の私をイメージして曲を作ってくださっている。そういった時間の流れや積み重ねがあることも味わいながら、今回は歌わせていただきました。

──そういう偶然も含めて、過去からの縁がこのアルバムでつながるのは、目の前のことを一生懸命やってきた結果ですよ。素敵なラスト20代のスタートになりましたね。

本当にそう思います。

ここからが真のスタート

──リリースから少し時間が空きますが、8月から10月にかけては本作を携えての全国ツアー「Erika Ikuta Tour 2026『I.K.T』~I Know Tomorrow~」も予定されています。

これ、まだ誰にも言ってなかったとっておきの最新情報なんですけど、ツアーのセットリストが自分の中で昨晩できあがったところでして。

(スタッフ) えっ?(笑)

誰にも相談してないので、知らなかったですよね(笑)。自分でセットリストを組み立てて、家で1人でライブをしてみたんです。

──取材前夜にそんなことが(笑)。

もちろん確定じゃないですよ。これからチームの皆さんに共有して、意見を取り入れることで全然変わるんですけど、一旦試しに歌ってみたらめちゃくちゃ楽しくて。今度プレゼンさせてください!(笑)

──これも充実したアルバムを完成させて、そこに引っ張られるようにいろんなアイデアが湧き出てきた結果かもしれませんね。

もうずっと悩んでいるので、アイデアが出てきてくれてよかったです(笑)。

──生田さんが乃木坂46を卒業したのが2021年末。今年の年末でまる5年というタイミングで、アーティストとしてここまで頼もしい発言を聞けるとは、正直驚いています。

私自身、「もうそんなに経ったんだ、早いな」って気持ちも「まだ5年か」という気持ちもあります。時には焦ったり落ち込んだりすることもあるけど、考えてみれば「いやいや、まだまだこれからじゃん」と思うこともありますし、そもそも私がソロアーティストとして活動をスタートさせてからはまだ3年目。今まではオリジナル曲が少なくて、カバー曲を含めてやっと成立していたライブも、今回からはオリジナル曲だけで成立させられるようになるので、ここからが真のスタートという感覚も強いです。そういう意味でも、次のツアーは楽しみにしていてほしいですし、私もこのアルバムの曲がライブでどう育っていくか期待しています。

生田絵梨花

公演情報

Erika Ikuta Tour 2026「I.K.T」~I Know Tomorrow~

  • 2026年8月26日(水)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
  • 2026年8月30日(日)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
  • 2026年9月13日(日)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2026年9月20日(日)神奈川県 よこすか芸術劇場
  • 2026年9月22日(火・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2026年10月14日(水)東京都 NHKホール

プロフィール

生田絵梨花(イクタエリカ)

2021年末に乃木坂46を卒業。俳優として舞台・テレビドラマなど数多くの作品に出演。2023年12月より上映されたディズニー100周年記念作品「ウィッシュ」で主人公アーシャの日本版声優を務めた。4歳からピアノを習っており、音楽への探求心も高く、コロナ禍のステイホーム期間に独学で作詞作曲を始めた。2024年4月にソニー・ミュージックレーベルズより自作曲も収録した1st EP「capriccioso」をリリース。7月より全国ツアー「Erika Ikuta Tour 2024『capriccioso』」を開催した。2025年3月に2nd EP「bitter candy」を発表し、9月に配信シングル「ピリオド」をリリース。2026年4月にアルバム「I.K.T(I Know Tomorrow)」をリリースし、ツアー「Erika Ikuta Tour 2026『I.K.T』~I Know Tomorrow~」を行う。