ナタリー PowerPush - HY
10年間で培った自信を胸に新たなスタートを切る作品
HYが、6枚目となるアルバム「Whistle」を1月27日にリリースする。バンド結成から10周年を迎え、昨年9月に行われたストリートライブ「HY Street Live 2009 ~10th Anniversary くわっちーさびら~」では、地元沖縄・北谷に約2万人を集めた彼ら。新作は、原点回帰とも言えるエネルギッシュなバンドサウンドと、持ち前の包みこむような温かいメロディが詰まった充実作だ。
このインタビューでは、アルバムで目指したこと、そして新たなスタートを切ったバンドの今について、メンバーに語ってもらった。
取材・文/柴那典
10年間、自分たちが信じてやってきたことは間違いじゃなかった
──今回のアルバムは10周年という1つの大きなタームの中でできていったものだと思うんですけれども。それを最初に意識したのはいつ頃のことでした?
新里英之(Vo,Rap,G) いつだったかな?
仲宗根泉(Vo,Key,Cho) 2008年に「来年で10周年を迎えるよ」ってスタッフに言われたんじゃないかな。でも、10年ということをそんなに大きく捉えてなかった。意外とあっけらかんとしてましたね。
──それでも、10周年という言葉がだんだん実感と重みを持ってきたんじゃないかと思うんです。それを象徴するのが去年9月のストリートライブだったんじゃないかと。
名嘉俊(Dr,Rap,Cho) 昔の映像も観たもんね。高校時代、17~18歳ぐらいにストリートライブを始めたときはゼロからのスタートで、誰もいないところで音を出していて。でも去年の9月には2万人ものお客さんと一緒にライブを作り上げることができた。この10年間、自分たちが信じてやってきたことが間違いじゃなかったという自信につながりましたね。
教えられるんじゃなくて、教える側になったのかな
──前のアルバム「HeartY」は、サウンドとしてもメッセージとしても新しいところにチャレンジした作品だったと思うんです。あのアルバムでHYというバンドが得たものは大きかったと思うんですけれども、それを経て、次にはどういうことをやろうと考えました?
新里 そこまで深く背負い込みながら考えたりはしなかったですね。ああいう、地球に対する愛の歌や子供に対する歌を歌ったからといって、次もそういう曲を書かないといけないという思いはなかったです。素直に26歳までに経験したこと、思ったことを書いていきたいなと。自分たちはいつもそういう感じなんで。その年その年で成長していきながら、自分たちの答えを素直に出してますね。
名嘉 前作の「HeartY」では自分たちの地元の小学校での課外授業とか、そういう活動もして。今回の「Whistle」では、頭の片隅に10周年ということがあって。これから先も自分たちを信じてレールをひいてお客さんと一緒に歩みたい、成長したいという思いもあって。それと同時に、(仲宗根)泉がやっとこのタイミングで沖縄の歴史を書いた「時をこえ」という曲も作った。この年齢になって、聞いたり教えられるんじゃなくて、教える側になったのかなって思いますね。
──「レール」という曲はHYというバンドのこれからについての決意表明の曲ですよね。こういう曲がこのタイミングで形になったというのは、どういう思いがあったんでしょう?
新里 この10年間、スタッフやファンのみんなに助けられながら歩んできたんですよ。音楽を始めて、全国ツアーも全部初めてのことだらけで、スタッフに自分たちのレールをひいてもらっていた。音楽を通して自分たちもいろんなことを学ばせてもらった。そして10周年を迎えた今、26歳として、まず自分たちからレールをひいていきたいという思いを持ったんです。自分たちからやっていきたいという思いに変わったんですね。
本当の平和をみんなに知ってほしいなと思った
──最後の曲の「時をこえ」も大きな意味を持っている曲だと思うんですけれども。これはどのようにしてできたんでしょうか?
仲宗根 いつかこういう歌が書ければいいなとずっと思っていたんですけど、このタイミングでたまたま出てきたんですよね。でも作り始めたら、Aメロの後がなかなか出てこなくて、2カ月くらい先に進まなくて。詞の内容を考えすぎたんですよね。平和とか戦争のことを歌いたいと思っても、そればかりやりすぎると重いイメージがついてしまうし。そういうことではなくて、家族の愛や、自分の命がなぜここにあるのかっていうことを聴く人が考えるような曲にしたいと思って。で、最後に、もしこれで書けなかったらダメだろうなというくらいのときに、曲も歌詞も一気に書けたんです。計算も何もせずバーっと書いて。三線とかエイサーとか沖縄の音楽も入れて、イメージどおりの曲にできたから、いったんは満足してたんですよ。でも、レコーディングが終わったときに、ゴスペルが突然頭の中に鳴って、どうしても入れたくなったんです。ただ、ゴスペルを入れるのは沖縄の人が聴くとどう思うんだろうという怖さやバッシングを受けるかもしれないという思いもあった。でも、この曲で伝えたいのは平和だったから。国籍も関係せず、人間の行こうとしている道はみんな同じだということだったから。かっこいいからだけでゴスペルを入れたんじゃなくて、意味と理由がちゃんとあった。本当の平和をみんなに知ってほしいなと思って入れたんです。
CD収録曲
- レール
- ビタミンI
- 告白
- 君のいない世界
- すてがらHOLLY
- 哀しみの向こう側
- うけんビーチ
- 少年
- Super Positive
- Answer
- 帰り道
- 時をこえ
Portrait Version 限定豪華DVD封入
- “HY's Whistle”未公開ドキュメント映像
- 「レール」「告白」Video Clip
- アルバム未収録新曲の!?
豪華60P“Portrait ALBUM”封入
HY(えいちわい)
2000年に沖縄で結成された、男性4人女性1人からなるミクスチャーロックバンド。翌年ミニアルバム「Departure」を沖縄限定で発表し、高い支持を得る。2003年にリリースしたアルバム「Street Story」は口コミで人気を集め、インディーズながらも100万枚以上もの大ヒット。続く2004年の3rdアルバム「TRUNK」もメガヒットを記録し、LINKIN PARKの日本武道館公演でオープニングアクトを務めるなど大躍進を果たす。その後もインディーズに在籍しつつ、精力的なライブ活動を展開。2007年3月には初のカナダ・アメリカツアーも敢行し、大成功を収めている。