ナタリー PowerPush - HY
10年間で培った自信を胸に新たなスタートを切る作品
メンバーの前では自分が一番素の状態を出せる
──5人がHYというバンドで一つになって、お互いをミュージシャンとして、友人として尊重しあえている。その風通しの良さが曲に表れているのかもしれないですね。そういう誤魔化しのなさがHYの音楽の原動力になっているというか。
新里 メンバーの前では自分の一番の素を出せますね。すごく居心地がいいです。自分を認めてくれるメンバーが心強くて。この5人で動いているときは自分にも自信を持って活動できますね。
──そういう今の皆さんにとって「HYらしさ」ってどういう風に意識しているんでしょう? もちろんそれは、この10年で変わってきているとは思うんですけれども。
名嘉 やり始めは右も左もわからないままでしたね。音楽の世界に踏み入れた瞬間、毎日が勉強で。しかも初めは、自分たちが思うHYの方向性やイメージと、スタッフが思うことに多少ズレがあったと思うんですよ。それが今では、レコーディングを通してもっと自分たちらしさを出していいんだって思えるようになったんです。これもメンバー5人がプライベートでも一緒にいるからかもしれないですね。HYらしさの秘訣は、5人がたくさんコミュニケーションを取れているということが一番の核にあると思います。
仲宗根 HYらしさって、メロディやハーモニーであったり、音楽を自由に足していけることだったり。わかりやすく挙げていけばそういうことで。それが自然といろんな音に染み渡ってるんですよね。何が「らしさ」だろうって見つけていくものじゃない。
名嘉 レコーディングやライブで、これがかっこいいとか、これがやりたいということをやってる瞬間が「らしさ」なんでしょうね。それをメンバー5人で何も違和感なくやれることが、これからもやり続けていくことへの糧なんだと思います。
──僕が思ったのは“近さ”ということなんです。サウンドで言えば、今回のアルバムもいろんな曲が収録されてますよね。三線もあればハードロックもあれば、ファンクっぽいグルーヴの曲もある。でも、どの曲も聴いてる人の近くで鳴っている感じがする。それが5人の近さ、聴いてくれる人への意識の近さから生まれていると思うんですよね。
新里 まさにそうですね。ファンのみんなと自分たちは同じように生活してると思いますからね。努力していること、恋愛していること、人としての生活、全部同じようにちゃんとリアルに体験していることだから。だから“近さ”が生まれるかもしれないですね。
12曲全部が、新しい一歩を踏み出せるような曲になっている
──ちなみに、「Whistle」というアルバムのタイトルはいつ頃に決まったんでしょう?
名嘉 レコーディングが終わって、12曲の曲順も全部決めた後に5人で集まっていろいろ考えたときかな。僕ら、アルバムは毎回コンセプトなしで仕上げているので、この作品ではどこらへんが一つになってるんだろうって制作後に改めて考えるんですよ。で、今回については10周年ということもありましたし、これがまた新しいスタートになるんだろうなってイメージできて。人って、スタートを切るときに心の中で鳴らすものがありますよね。口笛だったり、汽笛だったり。そんなことを話してるうちに「Whistle」という言葉が出てきて。同時に、アルバムに入れた12曲全部が、新しい一歩を踏み出せるような曲になってるって気付いたんですよ。「レール」もそうだし、「告白」はずっと温めていた思いをあなたに告げるという曲だし、「時をこえ」は今までの歴史を踏まえながら未来への一歩を踏み出すという曲だし。いろんな新しい一歩を踏み出すシチュエーションができたということで、この単語に決めました。
新里 ジャケットも、曲をイメージして、みんなが楽しんでもらえるように工夫したんです。文字の置き方にも関連性があったり。あと、限定盤には「Portrait ALBUM」というのがつくんですよ。それには、5人が撮ったそれぞれの曲に込めた思いに関する写真を載せたんです。絵を描いたりもしたし。
名嘉 約3500人の人にホイッスルや指笛を吹いてもらってる写真もあるしね。で、最後のページに買ったお客さんの写真を貼ることができるんですよ。そうやって自分の思いを重ねてもらうことで、いつまでも手元に残るようなアルバムにしたかったんです。
CD収録曲
- レール
- ビタミンI
- 告白
- 君のいない世界
- すてがらHOLLY
- 哀しみの向こう側
- うけんビーチ
- 少年
- Super Positive
- Answer
- 帰り道
- 時をこえ
Portrait Version 限定豪華DVD封入
- “HY's Whistle”未公開ドキュメント映像
- 「レール」「告白」Video Clip
- アルバム未収録新曲の!?
豪華60P“Portrait ALBUM”封入
HY(えいちわい)
2000年に沖縄で結成された、男性4人女性1人からなるミクスチャーロックバンド。翌年ミニアルバム「Departure」を沖縄限定で発表し、高い支持を得る。2003年にリリースしたアルバム「Street Story」は口コミで人気を集め、インディーズながらも100万枚以上もの大ヒット。続く2004年の3rdアルバム「TRUNK」もメガヒットを記録し、LINKIN PARKの日本武道館公演でオープニングアクトを務めるなど大躍進を果たす。その後もインディーズに在籍しつつ、精力的なライブ活動を展開。2007年3月には初のカナダ・アメリカツアーも敢行し、大成功を収めている。