ハンブレッダーズの4thフルアルバム「はじめから自由だった」が、2月21日に発売された。
2009年に活動をスタートさせ、現在結成15周年イヤーを駆け抜けているハンブレッダーズ。これまで思春期特有の葛藤や悩みからの解放を表現してきた彼らの4thフルアルバムは、同様のメッセージが込められた「十七歳」「THE SONG」などのロックチューン全11曲を収録した、15年のキャリアとブレない軸が感じられる作品になっている。
音楽ナタリーでは「はじめから自由だった」のリリースとハンブレッダーズの結成15周年を記念して、15年間を振り返るレビューと、3月に大阪・大阪城ホールで行われた、バンドにとって初のアリーナワンマンライブ「ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Jタイム ~15th Special~」のレポートを掲載。バンドのこれまでの軌跡をたどり、その魅力を紐解く。
文 / 森朋之(P1~2)、蜂須賀ちなみ(P3)
2009年|きっかけは「けいおん!」
女子高の軽音学部を舞台にしたアニメ「けいおん!」がハンブレッダーズ結成のきっかけ。ムツムロアキラ(Vo, G)の高校の同級生だった元メンバーがこのアニメにハマり、ムツムロに「バンドやろう!」と電話をかけたのがすべての始まりとなった。ムツムロがクラスメイトだった木島(Dr)と当時のベーシストに声をかけて結成されたのが、ハンブレッダーズだ。全員がほぼ楽器初心者だったが、彼らは文化祭で「けいおん!」の楽曲やELLEGARDENのカバーなどを披露したことで仲間と演奏する楽しさに目覚め、活動を続行することを決意。ひたすら好きな曲のカバーを繰り返しながらバンドとしての下地を練り上げた。
2016年~17年|コンテストで続々勝ち抜き
大学入学後もバンド活動を続ける中、軽音サークルで出会ったでらし(B, Cho)が合流。2016年頃にライブハウスでの本格的なライブ活動を始め、会場限定のCDを販売した。さらに2017年に新人発掘コンテスト「出れんの!?サマソニ!?2017」を勝ち抜き、「SUMMER SONIC 2017」への出場を果たす。同年に関西発の音楽コンテスト「eo Music Try」で準グランプリを獲得するなど、確実に注目度を高めた。
2018年|快進撃の始まり
そして2018年1月に初の全国流通盤「純異性交遊」を発表(参照:ハンブレッダーズ「純異性交遊」インタビュー)。鋭利なギターサウンドで始まる1曲目「DAY DREAM BEAT」の「ひとり 登下校中 ヘッドフォンの中は宇宙」「唇だけで歌う 自分の歌だとハッキリわかったんだ」という歌詞は、初期のハンブレッダーズの精神性を明確に示している。このアルバムに収められた「ファイナルボーイフレンド」「常識の範疇」などがライブハウスの観客に熱烈に受け入れられたことで(今現在もサブスクで多く再生されている)、彼らの快進撃が始まった。
2019年|終わらない青春を鳴らしに
2018年11月に2ndアルバム「イマジナリー・ノンフィクション」を発表(参照:ハンブレッダーズが新アルバム発表、レコ発ツアーにcinema staffら6バンド)。このアルバムには、ライブで人気を得ていた「口笛を吹くように」「RADIO GIRL」に加え、代表曲の1つとなった「弱者の為の騒音を」が収録されている。この頃からライブの動員も右肩上がりに伸び続け、2019年3月から4月にかけて、初のワンマンツアー「“Cagayake!BOYZ” ワンマンツアー」が行われた(参照:ハンブレッダーズ、来年3月に東名阪ワンマン / ハンブレッダーズ初ワンマンツアー、4月に札幌&福岡で追加公演)。
「夜は明けるし、雨は止む。終わらない青春を鳴らしに来ました。ハンブレッダーズです、よろしく!」
これは2019年3月に東京・渋谷CLUB QUATTROで行われたワンマンツアー初日公演で、ムツムロが観客に向かって放った言葉だ。思春期に抱えていた葛藤や悩みは今も消えない。しかし、最高のロックンロールがあれば──少なくともその瞬間だけは──すべてのことから解放され、自分を取り戻せる。そんな切実な思いを刻んだハンブレッダーズの歌が満員のオーディエンスを熱狂へと巻き込む様子はまさに圧巻だった。2010年代のバンドシーンは、フェスの流行に伴い、“いかに楽しく盛り上げるか”が大事なファクターだった。歌の力によって観客を強く惹きつけるハンブレッダーズの躍進は、シーンの潮流が大きく変わる時期とも重なっていたと思う。
その後、2019年5月にオリジナルメンバーのギタリストがサポートに降格し、同タイミングでバンドにとってその後も大事な意味を持つことになった「銀河高速」を配信リリース(参照:ハンブレッダーズ、2日前にレコーディングされた新曲「銀河高速」MV公開)。2019年10月に出演したライブサーキットイベント「FM802 30PARTY Eggs presents MINAMI WHEEL 2019」にて翌年2月のメジャーデビューを発表した(参照:ハンブレッダーズ、来年トイズファクトリーよりメジャーデビュー)。バンドのキャリアはここから激しく動き出すことになる。
2020年|メジャーデビュー作の発売直後、コロナ禍へ
2020年2月にメジャー1stフルアルバム「ユースレスマシン」を発表(参照:ハンブレッダーズのメジャーデビューアルバム「ユースレスマシン」詳細解禁)。1曲目に収録されている表題曲は「時代遅れのガラクタで静寂をシャットアウト たった一枚のディスクで真夜中をフライト」というフレーズで勢いよく始まる。“自分たちにとってロックンロールとは何か?”をダイレクトに提示するこの曲は、メジャーシーンへ進む当時のハンブレッダーズの強烈な意思表示だったと言っていい。また、オーセンティックなロックンロールからファンクを取り入れた楽曲まで、バンドサウンド自体も大きく進化。“終わらない思春期”を軸にした明確なアティチュードと多彩な音楽性を共存させた本作によって、彼らの名前はさらに広くリスナーへと浸透した。
しかし、アルバムリリース直後からコロナ禍へ。2020年2月から3月にかけて開催予定だった、KOTORI、Suspended 4th、ズーカラデル、ハンブレッダーズ出演のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020」は中断。アルバムのレコ発ツアーも延期を経て中止となり、ほかのバンドと同様、ライブ活動が思うように行えない状況になった。
そんな中、コロナ禍真っ只中の2020年4月に配信シングル「ライブハウスで会おうぜ」をリリース(参照:ハンブレッダーズ、ライブハウスへの愛を歌った新曲MV公開)。オーディエンスはもちろん、ライブハウスで働く人たち、レーベルや事務所、ライブ現場で働く音響や楽器、照明といったスタッフの顔を思い浮かべながら書かれたというこの曲は、タイトル通り、ライブハウスへの愛情とそこで奏でられるバンドの音楽への思いをストレートに描いたナンバーだ。ミュージックビデオは関西のライブハウス10店の協力のもと撮影された。この楽曲はバンド音楽を愛する人々に広くシェアされ、ハンブレッダーズの活動姿勢を改めて示すことになった。
2020年8月には、コロナ禍において世界初の“ディスタンス野外フェス”「RUSH BALL 2020」で初日のオープニングアクトに抜擢され、「DAY DREAM BEAT」「ユースレスマシン」「ライブハウスで会おうぜ」などを披露して“何があってもライブを続ける”という強い意志を表明。さらに同年秋に全国10都市でトーク&アコースティックライブツアー「ハンブレッダーズの“ライブハウスで”見るラジオ」を実施するなど、果敢にライブ活動を続けた(参照:ラジオ好きのハンブレッダーズ、全10カ所でトーク&アコースティックライブツアー)。
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2021年~のハンブレッダーズ