「ハンブレッダーズの『ギター』は言葉にできない気持ちを表現してくれる」グランジ遠山大輔がメンバーを前に熱弁

ハンブレッダーズが2ndフルアルバム「ギター」を11月24日にリリースした。

本作には、「理不尽や絶望じゃ / 止められやしないんだ / 僕達の再生を」という歌詞が印象的なリード曲「再生」をはじめ、表題曲「ギター」、テレビアニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」エンディング主題歌の「名前」、ライブハウスへの愛情を表現した「ライブハウスで会おうぜ」など、全14曲が収録されている。

音楽ナタリーではハンブレッダーズと遠山大輔(グランジ)の対談を実施。遠山がMCを務めているTOKYO MX「69号室の住人」への出演をきっかけに距離を縮めたという2組に、お互いの印象や「ギター」の聴きどころ、シンパシーを感じる点について語ってもらった。

取材・文 / 田山雄士撮影 / 笹原清明

校長と生徒と“802っ子”

──ハンブレッダーズと遠山さんがこうして会うのは、初めてではないんですよね?

ムツムロアキラ(Vo, G) そうです。今日でかれこれ3、4回目くらいですよね?

遠山大輔(グランジ) うん。この前、僕がTOKYO MX1でやらせていただいている音楽番組「69号室の住人」にも来てもらって。自分は番組のMCとして迎える側だし、当然お話をいっぱい聞くのが仕事なんですけど、僕が「ギター」を好きすぎてけっこうエキサイトしちゃったんだよね。

でらし(B, Cho) 僕は高校生のとき、「SCHOOL OF LOCK!」(遠山が約10年にわたって“とーやま校長”としてパーソナリティを担当したTOKYO FM / JFN38局の番組)をずっと聴いていた“生徒”だったので。“校長”からお褒めのお言葉をいただけたのはすごくありがたかったです。

遠山 本当に!? 今話している目の感じが嘘くさいんだけど。

でらし 恥ずかしさが出てるだけですよ!

遠山 あははは。校長として10年間パーソナリティを務めさせていただいた中で、毎日言葉を届けていた先にでらしくんがいたのがうれしいな。僕は音楽をやっているわけでもないけれど、そのベースの音とかに少しでも影響を及ぼせたとしたら感慨深い。

左から木島(Dr)、でらし(B, Cho)、ムツムロアキラ(Vo, G)、遠山大輔(グランジ)。

左から木島(Dr)、でらし(B, Cho)、ムツムロアキラ(Vo, G)、遠山大輔(グランジ)。

ムツムロ かなり影響あると思いますよ。「SCHOOL OF LOCK!」の話は昔からでらしによく聞いてましたもん。僕は大阪でFM802の番組をよく聴いていた、いわゆる“802っ子”みたいな感じだったんですけど。

遠山 大阪はFM802が本当に強いんだよね。俺も大阪のリスナーからの投稿を紹介した記憶があまりないくらいだから。

でらし 僕は関東出身で大学から大阪なのでよくわかったんですけど、大阪の人にとってはFM802の番組を聴くのが自然なことなんですよ。関東の人がTOKYO FMの番組を聴くのと同じ感じで。

ムツムロ そうなんだよね。「ROCK KIDS 802」(FM802の番組)と「SCHOOL OF LOCK!」は放送時間帯がほぼ同じだったりもして。

遠山 真裏だったね。

ムツムロ だから、めちゃめちゃ申し訳ないんですけど、「SCHOOL OF LOCK!」のことはでらしから教えてもらった感じなんです。で、「SCHOOL OF LOCK!」を初めて聴いたとき、でらしと初めて会った大学の頃の雰囲気が腑に落ちたかな。というのも、ものすごくまっすぐな少年だったんですよ。

遠山 「だった」のね(笑)。

でらし この人たち(ムツムロと木島)に会って変わっちゃったんですよ、僕(笑)。

ムツムロ 「SCHOOL OF LOCK!」を聴いたとき、でらしという人間の温度感がわかった気がして。「あっ、このラジオの熱量なんだ」みたいな。

でらし 「SCHOOL OF LOCK!」に熱さやまっすぐさを教わりました。

ムツムロ なんでも熱さで乗り切ろうとするもんな。

でらし 今でもそうですよ。遠山さんの教えが根付いてるんで。

遠山 いやいや、とんでもない!

ムツムロ 関西の人はひねくれがちだからね、どうしても。

でらし 俺は関西のひねくれ感にびっくりしたよ、最初。「なんでこいつら、こんなにひねくれてるんだ?」って。

遠山 なんでそうなっちゃうの?

ムツムロ 土地柄かな?

木島(Dr) 子供の頃からボケることが当たり前やし。

ムツムロ オチがないとダメというかね。熱くなるのが恥ずかしいわけではないけど、ユーモラスでいたいのかも。何か1つシャレが効いていてほしい。

でらし 僕は大阪の人がボケるのをただの間違いだと思ってたんですよ。ボケを「間違ったこと言ってるけど、大丈夫?」と取るくらいまっすぐな性格で。

遠山 すごくピュアなんだね、でらしくんは。

ハンブレッダーズの音楽が刺さるということは

ムツムロ 遠山さんはやっぱりめちゃくちゃ好きな人なんだなっていう印象が強いですね。

遠山 えっ、好きな人?

ムツムロ 音楽が好きなんだなって! 僕が遠山さんを個人的に好きとかじゃなくて(笑)。

遠山 告白されたのかと思ったよ(笑)。アルバムに入ってる「プロポーズ」は俺のための曲だったのかなって。

ムツムロ 違いますから(笑)。あとはハンブレッダーズの音楽が刺さるということは、劣等感を抱きながら生きている方なのかなとも思います。

ムツムロアキラ(Vo, G)

ムツムロアキラ(Vo, G)

でらし 僕が遠山さんのラジオを聴き続けてたのって、たぶんどこか自分と同じ匂いを感じていたからだと思うんですよね。ちょっと卑屈と言ったらアレですけど。

遠山 卑屈なのよ。インタビュー前にした写真撮影もそうだったでしょ? 「僕なんかがハンブレッダーズと一緒に並んでいいものなのか」「偉そうに目線外していいのかな」と考えてしまうし。今42歳なんですけど、こういう気持ちって30代後半には消えるものだと思ってたのに。結局、変わらず残ったままで。

ムツムロ 写真を撮られることは普段からありますよね?

遠山 レギュラーの番組だったら慣れてくるんだけど、初めてのシチュエーションだといまだに思っちゃうね。この卑屈さがラジオでもにじみ出てるんだろうな。

ムツムロ そういう部分でシンパシーを感じてたんだ、でらしは。

──根がマジメなところも、お互い似ているのかもしれないですね。

ムツムロ あー、確かに。僕らは根が非常にマジメですねえ(笑)。

遠山 自分で言っちゃうんだ。でも、そうだよね。

ムツムロ 振り切れないコンプレックスはずっとあります。「全部バカになって騒いじゃえば、それでOKじゃん!」という人のほうがカッコいい瞬間ってあるじゃないですか。だけど、どうしても自我が残っちゃうんですよ。

遠山 それも魅力的な部分だと思うよ。

ムツムロ 仁義みたいな気持ちも強いかな。例えば、今はYouTubeやTikTokが主流になってきて、ロックバンドをわざわざライブハウスまで観に来てくれる人はこれから減っていく説もあるけど、それ以上に仁義というか。ライブハウスとかヘッドフォンから流れてくる音楽に自分たちは救われてここまで来た、その任侠のようなものに僕らは支えられてもいるので。

遠山 熱い考え方だね。「ライブハウスで会おうぜ」はそういう思いから生まれてくるんだなあ。

──遠山さんがハンブレッダーズの音楽と出会ったタイミングというのは?

遠山 バンド名はかなり前から認識していたんですけど、ちゃんと正面から向き合ったのはシングル「COLORS」(2021年1月リリース)のときですね。

でらし 「COLORS」のリリース時にリモートでお話しする機会があったんですよね。コロナ禍の影響で「SCHOOL OF LOCK!」の助っ人として遠山さんがひさびさに出演した際、ゲストがちょうど僕たちだったっていう。そのときに僕が「生徒でした」と伝えさせてもらって。

遠山 あの頃はまだみんな大阪在住だったんだよね。俺はえこひいきする体質なので、ラジオを聴いてくれていたとなった瞬間、俄然、超絶応援モードに突入しちゃうのよ(笑)。それ以降、ずっと脳裏にハンブレッダーズがいる。ていうか、「SCHOOL OF LOCK!」のコーナー枠にも出てもらったことなかったっけ? 「松田LOCKS!」とか。

木島 ありました。受験の応援とか恋愛相談とかやったかな。

遠山 リスナーの悩みに答えてもらうコーナーね。

ムツムロ 当時はだいぶ無責任にしゃべってしまった気が……。

遠山 そんなことないでしょ(笑)。

でらし いや、「これで大丈夫なの!?」みたいな感じでしたよ。「SCHOOL OF LOCK!」のリスナーって、まっすぐな子が多いじゃないですか。それに対して、僕らはいつものひねくれを出しちゃって(笑)。

遠山 でも、時間も短いコーナーだからなかなか伝えきれないよね。お願いしているこっちも申し訳ないと思っていたところで。

木島 あと、僕も実は学生時代に「SCHOOL OF LOCK!」を聴いていたんですよ。

遠山 ここに来て!? なんでもっと早く言ってくれないの!

木島 (笑)。僕はBase Ball Bearがめちゃくちゃ好きで、「べボベLOCKS!」をチェックしていたんです。

遠山 はいはいはい! 毎週火曜だったかな。

木島 そうです。当時はMDにラジオを録音したりしてましたね。だから、僕もいまだに遠山さんのこと「あのラジオの人や」という感じがあるんですよ。改めて対談となるとドキドキしちゃって。

でらし ここ2人(でらしと木島)はけっこう身構えちゃいますね(笑)。

遠山 優れた「A」でも落ちこぼれの「C」でもない「B」組の講師だったよね、Base Ball Bear先生は。「どっちつかずの子たちが聴くラジオにしよう」という趣旨で。

ムツムロ いいコンセプトですね。

遠山 「べボベLOCKS!」は面白かったなー。特にボーカルのこいちゃん(小出祐介)の角度がある言葉も勉強になったし、あとはとにかく単純にベボベみんなの話が面白い(笑)。クラスの端っこで面白いことを企む感じの授業だったよね?

木島 それが聴いていてすごく楽しかったんですよ。

遠山 ベボベとハンブレって音楽性は全然違うけど、何かつながっているところもあるのかもね。

ムツムロ あるでしょうね。Base Ball Bearも根がマジメな感じがしますから(笑)。