「HOW TO START A FIRE TOUR 2025」開催記念|“火種”たちが灯す、ラウドロック / ポップパンクシーンの未来

次世代のラウドロック / ポップパンクシーンを担うバンド4組が出演するライブツアー「HOW TO START A FIRE TOUR 2025」が5月にスタートする。

「HOW TO START A FIRE TOUR」はラウドロック / ポップパンクのシーンに新たなムーブメントを巻き起こすべく企画されたスプリットツアー。その“火種”となるバンドとして、CrowsAlive、Good Grief、UNMASK aLIVE、WHISPER OUT LOUDという気鋭の4組が、京都、愛知、兵庫、岐阜、千葉、神奈川、静岡、茨城の8都市で熱いパフォーマンスを繰り広げる。

音楽ナタリーでは「HOW TO START A FIRE TOUR」の開催を記念して特集を展開。前半は本ツアーの立ち上げスタッフであるZESTONE RECORDSの田口隼人氏とGood Griefのマネジメントを手がける渡部達郎氏のインタビュー、後半は出演バンドからKenta(CrowsAlive)、Yasu(Good Grief)、KD(UNMASK aLIVE)、WHISPER OUT LOUD、Motokichi(WHISPER OUT LOUD)のフロントマン4人によるクロストークをお届けする。

取材・文 / 小林千絵

公演情報

「HOW TO START A FIRE TOUR 2025」

「HOW TO START A FIRE TOUR 2025」告知ビジュアル
  • 2025年5月2日(金)京都府 KYOTO MUSE
  • 2025年5月3日(土・祝)愛知県 豊橋club KNOT
  • 2025年5月31日(土)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2025年6月1日(土)岐阜県 yanagase ants
  • 2025年6月13日(金)千葉県 千葉LOOK
  • 2025年6月14日(土)神奈川県 横浜B.B.STREET
  • 2025年6月15日(日)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2025年6月27日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE

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スタッフが語る「HOW TO START A FIRE TOUR」立ち上げ経緯

コロナ禍で変化したシーンへの危機感

──まずはお二人が「HOW TO START A FIRE TOUR」を立ち上げた経緯から教えてください。

渡部達郎 僕と田口さんはバンドのマネージャーをやっていて、昔からシーンの近いところにはいたけど、よく話すようになったのは最近なんです。「何か新しいことを仕掛けたいっすよね」と話してたところからツアーの構想が始まって。

田口隼人 そうだね。ナベちゃん(渡辺)は、10年くらい切磋琢磨してきた戦友のような存在。奇しくもお互いのチャプターの1つが終わった感覚があったんです。それで一緒に何かやりたいなって。

渡辺 うんうん。

田口 今、お互いが手がけてる若手バンドは同世代で、コロナ禍さえなければもっと伸びていたであろう子たちばかりで。コロナ禍って対バンの機会がすごく減りましたよね。その分、ワンマンが増えてそれを観たいという人が増えたこともいいことだし、先輩バンドがフックアップしてくれる機会もあるけど、それだけじゃ自力はつかないし、そもそも先輩に注目してもらうきっかけも少なくなってしまった。で、「昔はどうしていたかな?」と振り返ってみたら、同世代のバンド同士がもっと切磋琢磨していたんですよね。お客さんも巻き込んで、自ずと世代ごとの新しいシーンが生まれていった。今の若いバンドにもそういう機会を用意できたらと思って、ナベちゃんに「俺たちできっかけを作らない?」と伝えたことからツアーを企画する話が始まりました。

渡部達郎氏と田口隼人氏。

渡部達郎氏と田口隼人氏。

“火種”のきっかけでありたい

──それでお二人が手がけているバンドを中心に、CrowsAlive、Good Grief、UNMASK aLIVE、WHISPER OUT LOUDという4組のスプリットツアーが企画されたわけですね。このツアーは今後もこの4組で回るものとして考えているのでしょうか? それとも「HOW TO START A FIRE TOUR」というパッケージがあって、出演するバンドは毎回変わっていくイメージ?

田口 最初はそのあたりのことは細かく決めてなかったんですよ。ただ、今は、この4組で500人ぐらいのキャパの会場を東名阪で売り切れるようになったら世代交代をしようかということを考えてます。そのタイミングで今の4組が次の出演者を指名するのはどうかなって。

──バンドがシーンをつないでいくと。

田口 「HOW TO START A FIRE TOUR」というタイトルですし、“FIRE”になったら“HOW TO”はいらないわけですよ。このツアーは常に“火種”のきっかけでありたい。お客さんが「次の“HOW TO”は誰だ?」とワイワイして、若いバンドたちには「自分たちもあの枠を狙いたい」と思ってもらえるようなツアーになったらいいですよね。今の4バンドにも「いつまでもここにいるんじゃねえぞ」とハッパをかけたいですし。

渡辺 実際、今の音楽シーンってバンドの数自体はすごく多いんですよ。この4バンドの下の世代のバンドも増えているので、“バンドをつないでいく”という考えのもとでできたら面白いなと思っています。

カルチャーを守りたい

──「HOW TO START A FIRE TOUR」を今後、どのようなイベントにしていきたいと考えていますか?

田口 シーンというのは、中心にあるものだけじゃ生まれないと思うんです。例えばスポーツ選手や古着屋のお兄さん、美容師のお姉さんなど、いろんなフィールドの人が集まってきて、周りから「あそこに行くと楽しそうだな」とか「カッコいいな。俺も中に入りてえな」と思われるような場所になったときに1つのシーンが生まれる。今回のツアーのキービジュアルは僕がデザインしたんですが、スケーターやパンクス、ラッパーなど、いろんな人達が集まってくるイメージで作りました。自分たちが若い頃に遊びに行ってたシーンには、そういう雰囲気があったんですよ。「HOW TO START A FIRE TOUR」を大きくすることで、“バンド界隈の人たちはイケてる”というムードを取り戻せたらいいなと思います。

渡辺 今、僕はGood Griefのマネージャーとしていろんなライブやイベントに同行しているんですが、競演者がいてもなんとなく“過ぎてしまうもの”もあるんですよ。人間なので全員が全員とハモれることはなかなかないのが当然だし、その日限りの関係となると仲よくなりきれなかったりもする。だけど今回の4バンドはすでに見知った仲だし、お互いに「負けたくない」という気持ちを持っていると思うんです。関係性がある状態からスタートできるというのも「HOW TO START A FIRE TOUR」のポイントなので、これからシーンの大きな火種になっていってほしいと思います。

──先ほど「“バンド界隈の人たちがイケてる”というムードを取り戻したい」という発言もありましたが、お二人はラウドパンクバンドというものにどのような魅力を感じているんでしょうか。

田口 今の時代、1人でも音楽は作れますし、そのほうがコスパも効率もいいですよね。それに対して、バンドってもっと回りくどくて、奇跡的で、儚くて、めんどくさいもの。でも、そんな効率の悪いことをやるからこそにじみ出るカッコよさがあると思うんです。理屈じゃないところで「やっぱりバンドってすげえな」という経験をさんざんしてきたから、そう思わせてくれたラウドパンクシーンのカルチャーを守りたいし、そのカッコよさを若い世代に継承していきたい。

渡辺 僕は5年後、10年後には自分が好きなラウドロックシーンが消えちゃうんじゃないかという危機感があって。だからこそシーンを守るためにできることをやっていきたいんです。それと、Good Griefはポップパンクをやっていますけど、ポップパンクって音楽的な要素で言えば今の流行りの洋楽に取り入れられているのに、日本でそのジャンルのバンドが日本武道館のステージに立つ機会はなかなかないですよね。だから純粋にそういう未来が見たいなという、夢なのか使命感なのか、そういったものが「HOW TO START A FIRE TOUR」を立ち上げようと思ったきっかけの1つにあります。