ビートは時代を表している
──昨年12月にはアルバム収録曲から「curved edge」がデジタルシングルとしてリリースされました。この曲を最初に発表したのはどういう理由だったんですか?
シノダ さっき話した「ひと月に10曲」を2カ月半くらい続けて、最後にできたのが「curved edge」だったんです。いろんな曲を作ってきて「これじゃねえな」というのが続いてたんですが、「curved edge」ができたときに「これだな」と腑に落ちて。強烈なリフもそうだし、あとはビートにモダンさがあるというのかな。これまでの四つ打ちとは違う、今の世代のビートで曲を作りたかったんですよ。今のビートってなんだろう?っていろいろ試して、このアレンジを思いついて「このビートでオルタナを作ってみよう」という感じでした。ビートはいつだって時代を表していると思うし、それをバンドで表現したかったんですけど、ゆーまおにはかなり負担がかかってますね。
ゆーまお ハイハットが多いなって(笑)。
イガラシ (笑)。でも、なんとかしてくれるんで。
シノダ そう、多少の無茶なら余裕でやってくれるんですよ。
ゆーまお 最初はブータレますけどね(笑)。「curved edge」は、シノダが作ったデモのアレンジをなるべくトレースしようと思って。最初はシノダが作ったリズムがどうなってるかわからないところもあったんですけど(笑)、たくさん考えて、なんとか形にしました。
イガラシ 「curved edge」ができたときは、俺もめっちゃ手応えがありましたね。シノダが試行錯誤の末に新しいビートを取り入れたことは聴けばわかるんだけど、それがどうでもいいくらいにギターのリフが強くて。そのことが一番大事だと思うんですよ、この曲は。たぶん無になった状態のシノダから出てきたリフだと思うんだけど、それだけですでに勝ってるという状態が、バンドの新しい曲としてカッコいいなと。
シノダ その前に作ってたのは、リフの曲が少なかったしね。
──「想像だにしない未来へ 猟奇的なこの痛みで」という歌詞にもグッときました。
シノダ 歌詞は何も考えずに書きましたね。自分が歌うことになるわけだし、アイデアから出力まで、なるべくノイズが乗らないように思い付いた言葉をどんどん乗せて。これまでのヒトリエの歌詞の感じも気にせず、バンドが置かれている状況とか、自分たちの心情をストレートに言葉にしたほうがいいっていう確信もあったし。
──「またプリング・ハンマリング繰り返して」とか、2曲目の「ハイゲイン」という曲名もそうですが、ギターに関するフレーズも印象的でした。
シノダ それも自然に出てきましたね(笑)。どうしても言葉の数が多くなるので、それを埋めるために使えそうな言葉は全部使った感じです。アタック感がいいもの、ビートにしっかり言葉を乗せることも意識してました。そうすることで曲が強くなると思ったので。
「こういう価値観で生きられたら」を示した「YUBIKIRI」
──イガラシさんが作曲した「dirty」「イメージ」、ゆーまおさんの作曲による「faceless enemy」「YUBIKIRI」の歌詞についてはいかがですか?
シノダ デモが届いた段階ですぐに書き始めました。曲の雰囲気を感じ取って「たぶんこういう言葉がハマるな」っていう直感で。
イガラシ 最初は何も注文してないです。いい歌詞が返ってきてラッキーです。
ゆーまお 自分の曲の歌詞も基本的にお任せでしたね。「faceless enemy」はSNSに文句を言ってるような内容なんですけど、題材としても抵抗がなかったし、面白いなと。ただ「YUBIKIRI」に関しては、周りの人たちから「さわやかな曲」と言っていただいてたし、わかりやすい歌詞がいいのかなと考えて「10代の男の子、女の子でもわかる言葉を選んでほしい」と注文しました。内容はシノダに任せてたんですが、青臭い感じがいいなと。自分としてもそういう曲を作った自覚があったので。
シノダ さわやかなだけで終わらせたくない気持ちもあったんだけど、ゆーまおからのオーダーもあったし、いかに難しい表現を使わず、ストレートに書くかに終始してました。
──「YUBIKIRI」の歌詞はオーディエンスに語りかけてるような印象もあって。「たとえ今日がここまでだとして きっとこんなんじゃ終わらない」というフレーズもそうですが。
シノダ そこはもう、いろいろな捉え方をしてもらえればなと。自分としては、全方位的に呼びかけてるんですよね、この歌詞は。俺たちに対してもそうだし、これまでのリスナーに対してもそうだし。あと「こういうスタンス、こういう価値観で生きられたらいいよな」というところもありますね。
──「YUBIKIRI」はゲストプレイヤーとしてパスピエの成田ハネダさん(Key)が参加しています。彼のピアノも素晴らしいですね。
ゆーまお ピアノロックを作ってしまったので、成ハネにお願いして。さすがの演奏で、一発OKでした。
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シノダの歌詞が「自分の思ってることを汲んでくれてるな」