ナタリー PowerPush - Hi-STANDARD

難波章浩&横山健が明かすハイスタとAIR JAM再始動への道のり

ハイスタの作品をPIZZA OF DEATHから出すことに意味がある

──改めてお訊きしたいんですが、皆さんにとってHi-STANDARDとはどういう存在なんでしょうか?

インタビュー風景

横山 昨日ふと思ったことがあって。Hi-STANDARDってやっぱり僕たち3人にとってはふるさとなんです。ふるさとっていうと伝わらないかもしれないけど、地元なんですよね。ずっと地元で活動してた僕たち3人が、いろんな事情で地元を出なくちゃいけなくなって、それぞれ別の街に行ったわけですよ。それで、3人が地元に帰らざるを得ない出来事が起こって、僕たち3人にとってやっぱりここが原点なんだと気付かされた。それぞれ新しい土地もあるから地元にフルで帰るわけにはいかないけど、でももう気軽に行き来していいんじゃないかと。盆と正月にはみんなで地元に戻ってこようぜみたいな(笑)、そういう感じに近いなって思うんです。

難波 で、その地元をずっと守ってくれてたのが健くんなんですけどね。

横山 あくまでも「PIZZA OF DEATH RECORDS」っていう建物をね(笑)。

難波 今回のDVDは、普通のリリースと違うんですよ。僕にとってはHi-STANDARDの作品をPIZZA OF DEATHから出すことに意味があるんです。確かに「ほかのバンドの映像も発売してほしい」って声もたくさんもらうけど、全バンド入れてってなるとPIZZA OF DEATHから出す意味が曖昧になっちゃうんですよ。ほかの出演者からしたら、僕のPIZZA OF DEATHに対する気持ちって関係ないことだし。

横山 難ちゃんがPIZZA OF DEATHから出すことができてうれしいって言ってくれるけど、僕もやっぱりうれしいよ。そりゃ、僕の口からは「PIZZA OF DEATHから出そう」とは言えないし。

難波 僕たちがハイスタに帰ってこれた、地元に帰ってこれるようになったっていうことを、まずハイスタファンに感じてほしかったんだよ。そのためには、どうしても必要なことだったから。

1年に1回でもハイスタをできるだけ続けたい

──いよいよ秋には念願の、東北での「AIR JAM」が控えてます。

難波 とにかく近くに行って、早くハイスタを感じさせてあげたい。観たい人全員が観ることはできないかもしれないけど、とにかく近くに行きたいよね。

──「AIR JAM 2011」に行けなかった東北のファンも多いと思いますし、今から期待してる人は本当に多いと思います。

横山 これはHi-STANDARDとしてどうっていうんじゃなくて、僕が個人的に思ってることなんですけど、今回の震災で亡くなってしまったHi-STANDARDファンもいるわけですよ。復活のニュースが流れたときにも、「あいつがもし生きてたら本当に喜んだと思います」ってメールをたくさんもらったし。こんなことを自分で言うとすごく野暮ですけど、ハイスタは100万枚売れたバンドだから、ファンの中にも実際に被害に遭われた方がたくさんいると思うんです。そういう人たちへの供養の気持ちで、Hi-STANDARDの3人で被災地に行って音を鳴らしたいなと僕は思ってます。あとは、人生いろいろあるから11年やらなくてもしょうがねえじゃねえかって言えちゃう自分もいるけど、ゴメンなっていう懺悔の気持ちもあって。

難波 そうだね。あと、生き残った人たちもたくさんいるわけだし。

横山 もちろん。

難波 「死んじゃいたいって思うくらい落ち込んだけど、ハイスタ復活のニュースを聞いて、ライブを観るまでがんばるよ」って思った人もいると思う。だからその子たちがいる限り、1年に1回かもしれないけど、ハイスタのライブをできるだけ続けて発信していけたらって思いますね。

──ファンにしてみれば、1年に1回でもHi-STANDARDとして動いてくれるんだっていう希望があるのは、それ以前の11年間と比べれば大きな違いだと思います。

横山 音楽活動的にはそうですね。あと、例えば「原発はやっぱりなしにしましょう」とかそういうことを声を大にして言えるチャンスがあったら、僕と難ちゃんとツネはHi-STANDARDとしてステージ以外の場所にもどんどん出ていきますよ。

難波 僕、「We Are Fuckin' One」Tシャツ(PIZZA OF DEATH RECORDSが東日本大震災チャリティで制作したTシャツ)を見てビビったのよ。なぜかというと、震災が起こってから僕はすぐに山形経由で宮城に行ったんだけど、その道中で「We Are The One」っていう曲が生まれて。だから「We Are Fuckin' One」を知ったときに「同じだ!」と思って驚いたの。1つになろうっていうテーマがあの瞬間に生まれて、それでハイスタが復活して。まずはハイスタファン同士が仲良くなって、そしてロックファン同士みんな仲良くなって、ロックバンドをやってる奴はみんな対バンして、もっともっと大きな輪を作る。力を合わせればできないことなんてないし、そこは諦めちゃいけないと思うんですよ。

──復興はこの先まだまだ続くことですしね。

横山 東北での「AIR JAM」についてはもう動き始めてるけど、まだまだこの先決めなきゃいけないことがたくさん待ってるから。

難波 それはおいおい発表していくので、まずはこのDVDをチェックしてほしい。リリースまで半年かかっちゃったけど、DVDを観ていろいろ感じてもらえたらうれしいですね。

横山 最近ロックを聴き始めた子が観たら、大したことない演奏かと思うけど。

難波 本当に。おじさんがギャーギャーやってるだけのね(笑)。

横山 カッコいいと思ってくれたらラッキーかな。でも、僕らにはここまでのストーリーが、過程が必要だったんです。そういう意味でも、非常に意味のある作品だと思います。

インタビュー風景

DVD「Live at AIR JAM 2011」 / 2012年2月22日発売 / 2918円(税込) / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZBA-6

  • DVD「Live at AIR JAM 2011」
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CD収録曲
  1. STAY GOLD
  2. MY HEART FEELS SO FREE
  3. SUMMER OF LOVE
  4. CLOSE TO ME
  5. DEAR MY FRIEND
  6. WAIT FOR THE SUN
  7. TEENAGERS ARE ALL ASSHOLES
  8. FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL
  9. CAN'T HELP FALLING IN LOVE
  10. STARRY NIGHT
  11. BRAND NEW SUNSET
Hi-STANDARD(はいすたんだーど)

難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし、知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期から海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。本作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。

約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを敢行した。2012年2月にはこの日のライブを完全収録したライブDVD「Live at AIR JAM 2011」をリリース。同年秋には東北で「AIR JAM」を開催することも発表されている。