HEY-SMITH「Life In The Sun」 PR

HEY-SMITH|「音楽は尊いもの」猪狩秀平がポジティブなアルバムに込めた思い

HEY-SMITHが2年ぶりのフルアルバム「Life In The Sun」を完成させた。

本作には2017年にリリースされたシングル「Let It Punk」や、公式アナウンスなしで突如ミュージックビデオが公開され話題を集めた「Not A TV Show」といった既発曲のほか、猪狩秀平(G, Vo)が「ビーチで寝て起きたらできていた」という「Love Summer」、ボブ・マーリー「Buffalo Soldier」のカバーなど、明るくポジティブなメッセージを込めた13曲が収められている。

音楽ナタリーでは本作の発売に際し、猪狩へソロインタビューを実施。アルバムの制作についてはもちろん、彼が近年思う音楽ビジネスのあり方についても話を聞いた。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 藤川正典

「イエーイ!」というテンションの作品に

──今作「Life In The Sun」は前作「STOP THE WAR」と比べて明るくてポジティブなアルバムだという印象を受けました。これはバンドや猪狩さんのモチベーションによる変化ですか?

いや、モチベーションはいつもと一緒ですね。なんなら新しいメンバーと作る最初のアルバムだったぶん「STOP THE WAR」のほうがモチベーションは高かったかも。今作はわりと自然に作った感じです。「STOP THE WAR」がシリアスな作品だったので、明るい作品にしたいなと思って。「STOP THE WAR」もあれはあれで好きやねんけど、もうちょっと「イエーイ!」みたいなテンションのアルバムにしたかった。

──昨年7月リリースのシングル「Let It Punk」もそういうテンションの作品でしたよね。

そうそう。あの頃くらいからそういうモードやった。

──明るい作品を作りたいと思ったのは、例えば、最近周りにそういう音楽があまりないからといった理由もありますか?

猪狩秀平(G, Vo)

もしかしたらそうかもしれないですね。海外も含めて、EDMとかヒップホップの曲が多くて僕が一番好きなメロディックパンクはあんまりないから、自然とそういう雰囲気が出たのかも。自分の聴きたいような曲を作っていったら自然とこうなったって感じですね。

──逆に言うと今まではそうじゃなかったんですか?

今までは……そうっすね、できたストック曲の中からアルバムに入れる曲を選んでいくことのほうが多かったかもしれない。

──今回はストック曲から選んでいったわけではなかった?

全然全然! 1月から4、5月ぐらいまでの間で作っちゃいました。

──そのときから「明るいアルバムを作ろう」というテーマで?

そう。明るくてイエーイっていうアルバムにしようと思ってたから、なんなら夏にリリースしようと思ってて。結局ドタバタしてて11月になったっていう(笑)。

もっと時間をかけて音楽を聴いてほしい

──ちなみにリリースから2年経った今、「STOP THE WAR」はどんな作品になったと思います?

うーん、出したときはまったくわからなかったんですけど、今は「このアルバム、聴くのに長い年月がいりそうやな」って気がしてて。感覚的にはいまだに聴き終えてないなという感じ。

──ご自身で消化するのに時間がかかるということ?

うん。自分もやし、たぶんみんなも、もうちょっと時間かけないと聴いたことにならないんじゃないかな。

──それは言い換えると長く聴けるアルバムとも言える?

だと思います。人生と共有する時間が長ければ長いほどいいアルバムになると思うので、もう少し時間が経てばさらにもっといいアルバムになるんちゃうかと。

──そんな中で新作を出すわけですけど。

ね。だからこのあとはしばらくアルバム出さないと思います。本当は5年以上出したくないですね、本当はね。わからないですけど、少なくとも何年かは出したくないって思ってます。

猪狩秀平(G, Vo)

──それは「STOP THE WAR」と「Life In The Sun」をみんなにじっくり聴いてほしいからですか?

その2枚に限らず、もう少し時間を使って音楽を聴いてほしいんですよ。音楽って尊いものなのに、最近は1年に1回くらいのペースでアルバムを出す人が多くて、リスナーが時間をかけて作品を聴く時間がないように感じる。

──いろんなアーティストが短いスパンでリリースを重ねる理由の1つに「作品を出さないとファンに忘れられてしまうんじゃないか」という不安もあると思うんですけど、猪狩さんにはそういう不安や怖さはない?

いや、全然ありますよ。怖いけど、その場の活躍よりは死んだあとにこのCDがどれぐらい残るかのほうが大事だと思っているので。

──アーティストがハイペースで作品を出すことで音楽の消費が早まっているというのもありますよね。

そう、みんなサービスしすぎなんですよね。「タダで配信」とかも多いし。なんでタダなのかわからないですよね。どうやって生活すんの?って。俺には「聴いてもらえればなんでもいい」みたいな気持ちはないので。価値のあるものやからちゃんとお金出してほしいし、お金を出したことによってリスナーの中でも価値が生まれると思ってる。

「あれ知ってる?」って最初に言うやつがカッコいい

──近年の音楽ビジネスのあり方という視点で言うと「Not A TV Show」のリリースの仕方は衝撃的でした。ある日突然新曲のMVを公開して、ライブ会場に行ったら物販で「Not A TV Show」のシングルを売っているという。でもMVを公開したことも、シングルを販売していることもメンバーはSNSでアナウンスしていなくて。(参照:HEY-SMITH、新曲「Not A TV Show」MVを公開

あれは「Not A TV Show」って題名やったから、まず媒体でのプロモーションはやめようと思って。すごく高くアンテナ張ってるやつだけが知ってることがカッコいい、というのを提示したかったんです。学校で「あれ知ってる?」って最初に言うやつがカッコいいみたいな。昔はそういうずっとディグってるやつとか、アンテナを張ってるやつはいい顔できて、しかも本当にいいものやったら自然と広まっていった。でも今はみんながSNSで待機してて「よーいドン!」で情報を知れるようになって。それを平等でいいという人もおるけど、俺は違うと思うんですよね。自分で探ってカッコいいものを見つけ出していくという行為をもっとやってもらいたい。

──なるほど。

あとSNSで全部説明するのも嫌やって。特に情報がない状態でMVを観たやつが、感想を友達に言っていく。それがいいんですよね。別に「あのMV悪かった」でもそう思ったんやったらそれでいいし、「こういうふうに制作されたこんな感じのMVで最高」とか勝手に決めつけられてもいい。いいでも悪いでもいいから、意志を持って友達とか仲間とかに言ってほしかったんです。

──ネットで拾ってきた情報じゃなくて、自分の意見を持ってほしいと。

そうそう。だからああいう形での発表にしました。

──さらにこの曲の入ったシングルをライブ会場で販売したのはなぜですか?

別にライブハウスに来るやつが偉いとは思ってないけど、現場に来てくれたらうれしいし、ライブハウスに来る楽しみが1つ増えてもいいんちゃうかなと思って。いつもやったら「休み取れないから無理」だけのやつが「CDも買えんのかよ、有給使っちゃおうかな」とか。

──実際に各会場で相当売れたそうですね。

そもそもツアーのチケットが売り切れてたから、来れなかった友達のぶんも一緒に買っていってくれた人とかもいて。まさにそういうことをしてほしかったんです。CDを渡しに行ったら「ライブどうやった? あの新曲やったん?」とか聞かれてしゃべるじゃないですか。それをしてほしかったから、今回やってよかったなと思う。