ライブバンドとしての純度をもっと高めたい

──大バコでのライブを含んだ大規模ツアーを回って、その集大成のDVDをリリースしました。さて今後はどうします？ 順当に考えるともっとキャパシティが大きいホールやアリーナにって感じなのかなっていう気も……。

ないと思います。いわゆる「ライブハウス」と呼べないとこではまずやらないでしょうね。目の前でバーンと音が鳴るようなところで、みんなが自由でいられるような客席があるようなところでできる限りやりたい。

──じゃあ2014年はどうします？

んー、そうですね。何をするんでしょうね？（笑） 「HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」（※2011年から行われているHEY-SMITH主催のサーキットイベント）をパワーアップさせて、形を変えてやるってことだけ決まってますけど。

──お！

あとは……ライブをやっていきます！ ライブバンドとしての純度をもっと高めたい。行ってないライブハウスに行ったり。

──最高傑作と呼べるアルバム「Now Album」を作って、58本ものツアーを回っても通常営業（笑）。

そうっすね。俺は本当に「テレビに出たい」とか「おっきい会場でやりたい」みたいな願望がないんです。地上波とかも全部イヤですし。オファーとか来ても断ってます。

──それはなんでですか？

ライブ中継してくれるんやったらいいですけど、ライブバンドとしてやってきてるのに、あて振りとか絶対イヤですし、そこでエンタテインメントショーをしなさいって言われても、うんとは言えない。エンタテインメント自体はもちろん嫌いじゃないんですけど。

──猪狩さんの好きなエンタテインメントってどんなもんなんですか？

ウソがなくて、その空間をちゃんと切り取ってるものですね。その人たちの本質みたいなものにテレビの人なりの色を重ねる“着色”はなんぼでもしたらいいと思うんですけど、その本質に違うものを混ぜてはいけないっていうのが常にあって。「バンドだ」って言ってるんだったら生演奏じゃないと意味がない。「ボーカルユニットだ」って言うんだったらシーケンサーを再生して歌うのでも全然いいんですけどね。俺自身、SMAPとか好きですし（笑）。ただそこにちょっとでも不純物が入ったりするのはイヤなんです。

勝つライブをすることにこだわっていきたい

──最後に、このDVDに収められてるライブって何点でした？ MCでは「今まで100点のライブはやったことない」って言ってましたけど。

えー、これですか？……普通（笑）。客観視した点数としては「普通」やと思います。ツアー中、これよりいいライブなんぼでもありましたもん。

──「普通」でこのクオリティだと、ほかのバンドさんは商売あがったりな気もしますけど（笑）。いつか100点を付けられる日は来るんですかね？

どうでしょうね。そりゃ目指したいですけどね。俺は音楽を点数化してほしいなって思ったりもしますしね。

──パンクバンドやライブバンドって、そういう数値化された評価って苦手なのかなって勝手に思ってたんですけど……。

芸術ですしね。でも音楽に点数付けたり、価値を付けたりする時代がもう来てもいい気がしますね。なんで音楽だけ採点されないのかな？ってずっと不思議に思ってて。オリンピックでも、フィギュアスケートとかハーフパイプとか芸術に対して点数つけるじゃないですか。「それやってよ！」って思うんですよね。なんかね、CDには勝ち負けはないんですけど、ライブには絶対勝ち負けがあるんですよ。みんな口にしないですけど。CDにはパッケージできない、バンドマンや、音楽を求めてバンドを観に来てるやつが感じるものの差というか、そのライブが勝ったかどうかみたいなものが絶対にあって。「あいつのほうが盛り上がったからあいつの勝ち」とかってことではないから、説明するのはちょっと難しいんですけど。

──盛り上がりを基準にするなら人気者は無敵ってことになっちゃいますもんね。

人気っていうのは「みんなが好き」っていうだけのことで「ライブがカッコいい」とはまた別なんですよね。俺はそのカッコよさにずっとこだわっていきたい。たぶんバンドマンならこの勝ち負けがあるっていう意味はわかると思います。

──ほかのバンドマンがカッコよさを数値化したがるかどうかはまた別なものの（笑）。

うん、みんなイヤがると思います（笑）。