変態紳士クラブ|「3人」「等身大」「すきにやる」が大前提 待望の1stアルバムが完成

変態紳士クラブの1stアルバム「ZURUMUKE」の配信がスタート。6月16日にはCDも発売される。

変態紳士クラブは、大阪出身のラッパー・WILYWNKA、レゲエディージェイ・VIGORMAN、プロデューサー / トラックメーカー・GeGによる3人組ユニット。2017年11月に発表した作品「ZIP ROCK STAR」でデビューし、「すきにやる」や「YOKAZE」のスマッシュヒットでその名を全国に知らしめた。結成から約4年を経て、待望の1stアルバムを完成させた彼らは、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」やテレビ朝日系「ミュージックステーション」への出演、映画「EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」への主題歌提供でさらに話題を集めている。

アルバム完成を記念して、音楽ナタリーでは3人にインタビュー。各々のソロ活動(参照:ソロアルバムを語り明かす 変態紳士鼎談)では、ヒップホップやレゲエに深く根ざした活動を展開している彼らが、変態紳士クラブで追求していることは何か? アルバムの話題とともに聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 斎藤大嗣

「ZURUMUKE」はデビュー作の延長線みたいな作品

──待望の1stアルバムが完成しましたね。

VIGORMAN 結成4年でまだアルバムを出してなかったんで、ファンの人たちも「どんなんなんやろ?」って想像を膨らませる時間が長かったと思うんです。そこは意識してたので、胸を張って俺らの名刺と言えるものを作らなきゃって気持ちはありましたね。もちろん俺らにとっても、1stアルバムは特別なものだし。

GeG 去年、緊急事態宣言が出た頃から本格的に制作し始めたんですよ。コロナで一緒にいる時間がめっちゃあったから、3人の仲のよさが出たアルバムになったと思いますね。常に等身大で、なんの背伸びもしてない。身近であったことや、そのときの気持ちを歌にしてる。そこはこだわりましたね。

WILYWNKA

WILYWNKA 変態は「3人」「等身大」「すきにやる」が大前提。

GeG 基本的に遊びだよね。

WILYWNKA うん。みんなでスタジオに集まって、コーヒー飲みながら「どうする?」ってとこから始まって。GeGはストックを作らないので、変態用の曲をやるしかない。そこから「じゃあテーマはどうしようかね」って3人でしゃべり始めるんです。近況とか最近思ったことから徐々に話が広がって、テーマが決まっていく感じですね。とはいえ、時期が時期だったから考える時間はこれまでより多かった。個人的にも世界的にも。そこは反映されてると思う。社会に対しての目線というか。周りのやつらはうっさいけど、俺らは好きにやるっていう。真正面から見据えるんじゃなくて斜めから見る、みたいな姿勢。

──今作はすごくポップで、アルバムとしての統一感もあるんですが、個々の楽曲は実はかなりバラエティに富んでますよね。あと3人がレゲエやヒップホップの深いところで切磋琢磨しているバックグラウンドも表現の端々に滲み出ていたように感じました。

VIGORMAN 音に関してはGeGに任せていますからね。俺とタカ(WILYWNKA)はほとんど口を出さないです。変態紳士クラブは「ジャンルレス・ユニット」を自称しているので、アルバムではGeGが全曲違うジャンルのトラックを作ってくれました。とはいえ、それぞれのジャンルのマナーに対するリスペクトは常に意識してます。俺とタカはそれぞれレゲエとヒップホップ、GeGはロックやテクノ、ハウスも含めてあらゆる音楽に精通してる。ソロあっての変態だし、逆もまた然りですね。

WILYWNKA 「ZURUMUKE」は「ZIP ROCK STAR」(2017年にリリースされた変態紳士クラブのデビュー作)の延長線上にある作品。音楽性も、言ってることも全然変わってない。

GeG 「ZURUMUKE」は「ZIP ROCK STAR」の豪華版やな。あのEPはMVも込みで100万円で作ってるけど(笑)、今回は予算が桁違いだったので、全曲バンドに弾いてもらって、ストリングスも生で弾いてもらってる。サンプリングも一切使ってない。

できるだけ行き詰まらないで制作できる工夫をした

──では制作は基本的に3人で地元のスタジオに集まって進めたんですか?

GeG 一応合宿的なこともしましたよ。

VIGORMAN

WILYWNKA ヤニ臭いスタジオでずっと音楽作ってたら、病んだ音しか出なくなっちゃいますよ(笑)。気分転換は大事。

VIGORMAN できるだけ行き詰まらない工夫はしました。今回だと「Get Back」は合宿に行ってプリプロを録りました。このトラックを聴いたとき、「湾岸TWILIGHT NIGHT」(「ZIP ROCK STAR」の収録曲)を思い出したんですよ。あの曲は兵庫と岡山の県境にある佐用町というところで作ったんです。蛍がいっぱいいて、街灯が全然ないから、星もめっちゃきれい。あの感じがいいなってことで、今回はエンジニアと4人で同じ街に行って、宿でプリプロを録りました。俺らの中で「Get Back」は「湾岸TWILIGHT NIGHT 2」のイメージです。

GeG プリプロは楽しかったんだけど、ミックスは超大変でした。3回くらい空中分解しかけてる。

VIGORMAN この曲も含めてアルバムは全12曲になりましたけど、「11曲でええやろ」とまで言ってたからね(笑)。さっき音に関して俺らは口出ししないって言ったけど、ボーカル録りでキーの細かい上げ下げだけはお願いしてるんです。ボーカリストには得意なキーがあって、そこからあまりにも外れちゃうと、レコーディングでなんとかなっても、ライブで歌えなかったりするから。

GeG この曲のトラックはいろんな音のパーツ同士で細かくバランスをとりあってギリギリ成立してるんです。ボーカルに合わせてキーを変えると、トラックの音も変わっちゃって、めちゃダサくなる(笑)。かなり苦戦したけど、最終的にトラックとVIGORMANのボーカルのギリギリのバランスを見つけて、なんとか着地できました。

VIGORMAN GeGはいつも何度もミックスし直すんですけど「Get Back」は30回くらいやってましたね。

GeG

GeG すべては渡辺紀明っていう最強のエンジニアのおかげです。

VIGORMAN 「HERO」(参照:変態紳士クラブ「HERO」インタビュー)で初めて俺らのエンジニアをしてくれて。すごく親身にやってくれる。マジで最強のエンジニアですね。

VIGORMAN 「HERO」で初めて俺らのエンジニアをしてくれて。すごく親身にやってくれる。マジで最強のエンジニアですね。

──逆に3人で録ってない曲はありますか?

GeG 「Hey Daisy」ですね。変態に関しては俺が先に曲を用意して作り始めることが多いんですけど、俺の意見を入れずに2人で自由に歌とラップから作った曲も入れたかったんです。

VIGORMAN だから「Hey Daisy」は俺とタカが先にタイプビートで歌とラップを書いて、それを元にGeGがトラックを作って、差し替えてるんです。この「Hey Daisy」は宮古島で、あと「GOOD and BAD」は沖縄本島で書きました。

WILYWNKA 最初に「GOOD and BAD」のトラックを聴いたとき、「夏っぽいな」と思ったけど、こっちはまだ肌寒かったんですよ。俺たちは冬に夏の歌は書けないから、「よっしゃ沖縄行こ」って(笑)。2人でレンタカー借りて、沖縄のプライベートビーチを探しまくったよな。誰もいないビーチで完全にリラックスした状態で書きたかったんです。でも全然見付かんなくて。ようやく「あったー!」ってなっても、すぐ誰か来ちゃう。奥の奥のほうに誰もいない場所があったので、GeGのビートを流しながら2人でプリプロを作りました。