極論サビさえ決まってれば、2人はいくらでもヴァースを書ける

──「GOOD and BAD」や1曲目の「On My Way」のWILYWNKAさんのリリックに「神」というワードが出てくるのは何か理由がありますか？

WILYWNKA　俺にはすぐあれこれ考え込んじゃう神経質なとこがあって。そういう自分が嫌いなんですよ。でも広い海に行ってボーッとしてると何も考えなくてよくなる。だから海が好きなんです。今回はコロナとかいろいろあったし、そういう意味で沖縄の海が気持ちよかったから、自然と「神」ってワードが出てきたんじゃないかと思いますね。「On My Way」に関してはけっこう序盤に作ってるので、正直あんまり覚えてない（笑）。

VIGORMAN　緊急事態宣言が出た直後やんな。今回のアルバムは最後のほうまで曲順を決めずに作ってたけど「On My Way」はみんなの中で1曲目っていう共通認識やった。

WILYWNKA　「お気に入りの服 ピカピカの靴 気分が高まる」ってフックは気に入ってる。アルバムの1曲目っぽい勢いがある。

GeG　この頃は俺が「サビを最初に作りなさい」と2人に言ってた。

──それはなぜ？

GeG　極論サビさえ決まってれば、この2人はいくらでもヴァースを書けちゃうんですよ。

VIGORMAN　うん。やっぱサビは難しいから、みんなで集まってるときに書いちゃいたい。残したくない。仮にヴァース1、ヴァース2、サビという構成だった場合、ヴァースだけできてるより、サビだけできてるほうが確実に完成まで持っていくのが速い。サビが難しすぎて、ヴァースが書きたくなることもよくあるけど（笑）。

WILYWNKA　あと「On My Way」はかけ合いだよな。中学生の頃から2MCのユニットが大好きで、BLAHRMY（MILES WORDとSHEEF THE 3RDによる2MCユニット）とかに憧れてたんですよ。1小節ごとじゃなくて、2人が1.5とか0.5小節でパスし合ったりとか。この曲はそれができたのですごく満足してる。

VIGORMAN　せやな。2MCとしての俺らの進化も感じてもらえたらうれしいな。

kojikojiの初ライブは変態紳士クラブとBASIさんの対バンのオープニングアクト

──「Eureka feat. kojikoji」は秋に公開される映画「EUREKA／交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」の主題歌です（参照：変態紳士クラブ×kojikoji、劇場版「エウレカセブン」完結編の主題歌を担当）。この曲では変態紳士クラブとして初めて客演を迎えました。

VIGORMAN　「Merry Go Round feat. BASI, 唾奇, VIGORMAN, WILYWNKA」（GeGのソロ作品「Mellow Mellow 〜GeG's PLAYLIST〜」収録曲）みたく、それぞれのソロ曲で変態のメンバーがそろって、そこに客演が入ることはあったけど、変態紳士クラブ名義の曲で誰かに声をかけることはなかったな。オファーはたくさんあったけど、全部断ってた。

──なぜkojikojiさんを迎えたんですか？

GeG　このトラックがめっちゃ気に入ってて。女性ボーカルを入れたかったんです。そしたらkojikojiしかおらんな、と。最高の声じゃないですか。お客さんからすると俺らがkojikojiとやるのは違和感あるかもしれないけど、俺ら的にはかなり自然。kojikojiとはめっちゃ古くて。今みたく流行る前にインスタで見つけて、あの子の初ライブも俺のイベントなんですよ。

VIGORMAN　「CHILLL CLUB」やんな。あの日、俺BASIさんにも初めて会った。

GeG　変態とBASIさんの対バンで、オープニングアクトがkojikojiやったんですよ。始まる直前まで緊張と不安で舞台袖で小さくなってたの覚えてるわ。

VIGORMAN　そう考えると「CHILLL CLUB」はデカかったね。BASIくんとバッキー（唾奇）がつながったのもあの日やし。そっから「Merry Go Round」ができて、俺の「頭悪い天才 feat. BASI」（VIGORMANのソロアルバム「SOLIPSISM」収録曲）もできた。

──なるほど。あと今回の作品はこれまで以上に深い酒のエピソードが多いですね。

GeG　後付けではあるんですけど、今回のアルバムはストーリー仕立てになってまして。前半の3曲は1日の始まりなんですね。で、「Hey Daisy」「Get Back」くらいで夕方になる。ここまではシラフなんです。「P-BOYZ」から夜になって酒を飲み始める。

VIGORMAN　「P-BOYZ」「ボロボロ」「Romantic Blue」は酒飲んでる俺らの姿っすね。酔ったらすぐ言ってまうド下ネタとか。こういうのも曲にしないと、毎晩朝までウォッカ飲んでる意味ないなって。意外かもしれないけど、俺もタカも家で晩酌はしないんです。遊ぶために飲んでる。これまで楽しい酒の歌はたくさん歌ってきたから、ここらで撃沈した奴の気持ちも歌おうと思いました。

WILYWNKA　シロックですね。

──WILYWNKAさんのソロアルバム（2019年9月発売「PAUSE」）で曲になっていた（「CIROC feat. 変態紳士クラブ」）あのお酒ですね。「P-BOYZ」「ボロボロ」「Romantic Blue」はキレイごとじゃないところまで踏み込んでると思いました。

VIGORMAN　俺らは酒の楽しさを知ってるけど、その倍以上二日酔いのつらさも知ってるんで。でも俺はまだマシ。タカとGeGの二日酔いはひどい。「しおれてる」って表現がぴったり。

WILYWNKA　極度の二日酔いのときは鬱入るんですよ。すべてにムカついてて。しかも対象がない。ただムカついてる。で、だんだんムカついてる自分にムカついてくる。で、落ちる（笑）。

VIGORMAN　でも、そういう葛藤も夜の7時8時くらいになるとだんだん抜けてくるんですよ。そうすると、さっきまであんなに嫌ってた酒を23時くらいからまた飲み出すっていう（笑）。

WILYWNKA　「ナヨナヨしてるからこんなことで食らってんねや」と思い始めてな（笑）。

──「ボロボロ」はまさに二日酔いの地獄を追体験できる内容でした。ちなみに「P-BOYZ」は「PARTY-BOYZ」という意味なんですよね？

GeG　いや……。

WILYWNKA　パ○○ンす。パ○○ン大好きBOYZってことっす。この曲は最初「I'm a B-BOY」みたいなフロウだったんですよ。でも変態紳士クラブはB-BOYじゃない。俺らはそこで嘘は絶対につきたくなかった。さっきVIGORMANが「マナーに対するリスペクト」と言ってたけど、そこをはっきりしないと偉大な先人たちがやってることを薄っぺらくしてしまう。刺青入れてゴールドチェーンしたら、みんながB-BOYになれるわけじゃないですからね。だから俺らは「P-BOYZ」（笑）。