たまたま入ったラーメン屋で隣にいるくらいの距離感
──「Good Memories」「5 O'clock」は、アルバムのストーリー的には酒と女、二日酔いの夜を終えたあとということですね。
WILYWNKA 「Good Memories」はアル中の歌です(笑)。
VIGORMAN 「いつもの呑み 震え止まる指先」ってリリックあるもんな。
WILYWNKA でも、これが俺らなんですよ。ベロベロになった明け方にラーメン屋に行ったら隣にいた、みたいな距離感(笑)。全然遠い存在じゃない。実はこの曲は最初書いたリリックが全然気に入らなくて、1回全部書き直してるんです。トラックのカッコよさに俺のラップがまったく付いていけてなかった。
──フックの「記憶とお金と後悔もない」というラインはすごく好きです。
VIGORMAN ほぼ何もないっていう。
GeG 何が残ってんねんって(笑)。
WILYWNKA 楽しいことだけ覚えてんねん! そういうことあるでしょ? 朝起きてめっちゃハッピーなとき。ただ何したかはまったく覚えてない(笑)。
──「5 O'clock」はちょっと寂しさが残る、淡い楽曲ですね。
VIGORMAN まさにこの曲のテーマは「名残惜しさ」なんです。クラブが終わる朝5時の歌。まだ飲んで遊んでたい名残惜しさと、このアルバムがもうすぐ終わってしまう名残惜しさを混ぜて書きました。今話していて思ったけど、結果どの曲にも酒の要素が入ってるな。GeGのトラックは情景が浮かぶ音なんです。俺らがいつも意識してるのは、歌とラップでGeGの音が作るイメージを台無しにしたくないということ。俺はみんなの頭の中で勝手にMVを作ってほしいとすら思ってる。それぐらい“曲を聴いただけで情景が浮かぶ”というポイントは大事にしてます。アルバム制作段階で、「YOKAZE」が最後というのは決まっていたので、「5 O'clock」は実質最後の曲というイメージでした。
──なるほど。そういう意味では、WILYWNKAさんの「いつもこの時間が好きで嫌いだった」というラインはメロウな楽曲の雰囲気にぴったりですね。
WILYWNKA 俺はこの時間帯にDJがかける音楽が好きなんですよ。「Suga Suga」(Baby Bash)みたいな甘くてちょいエロの曲。もっと飲みたくなる。でもDJ&お店的には追い出しの選曲じゃないですか(笑)。「スタッフさん、そろそろフロアの電気つけて」みたいな。俺、あの電気が世界で一番嫌いやわ。恥ずかしなる。ちなみにこの曲には俺らしかわからない暗号も入れてるんです。
VIGORMAN 「猫のマスター」やろ?
WILYWNKA うん。俺らが溜まり場にしてるバーがあって。そこの名前がキャッツなんです。このバーが入ってるビルは思い出だらけ。上にはバイトしてた一二三屋(韻踏合組合のHIDADDYによるアパレルショップ)があって、下には変態の超初期にライブしたクラブもある。このバーにはGeGが作ったばかりのデモを流しに行ったりもするんです。
GeG ミュージックバーなんで、いいスピーカーが入ってるんです。
ライブでお客さんの反応を実感してようやく作品が完成する
──アルバムリリース後にはグループ史上最大キャパとなる「変態紳士舞踏会 in 大阪城ホール」も開催される予定です(※新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期が決定)。
VIGORMAN まずライブ自体めちゃひさしぶり。やりたい。とにかくそれに尽きる。
WILYWNKA 地元やしな。この前たまたま城ホールの横にいて、ふと見て「デカッ」って思いました。
GeG ここ最近ライブがなかったからリハとかもひさしぶりで、すっかり忘れてたんですけど、改めて俺らはライブが最強なんですよ。音源と比べものにならない。リハやって「これやわ」って思いましたね。昔は音源を80パーセントで作って、ライブで100にするって言ってたんですけど、今は音源でも限りなく100に近いものが作れるようになった。でもライブはさらに上を行きます。うちのミュージシャンたちは。
VIGORMAN やっぱ作品を出してからライブできないのってすげーつらいんですよね。
WILYWNKA 俺らは制作段階で死ぬほど聴いてるから、リリースの段階ではすでに飽きてるというか、ちょっと嫌いになってる状態なんですよ。でもライブやって、お客さんが反応してくれると「やっぱ最高の曲やん」ってなる(笑)。
VIGORMAN そう。ライブしないと自分たちの曲をお客さんがどう思ってるのかわかんない。例えばアルバムを出して、12曲あれば好きな曲、そうでもない曲、人によっていろいろあると思うんです。俺らが気に入ってる曲がそうでもなかったり、逆もあるだろうし。そういう反応をライブで確認して、ようやく俺らにとっては作品が完成したことになる。
GeG 俺はちっちゃい頃から何度も城ホールには行ってて。かなり思い入れがある会場なんです。ずっと目標だった。俺らはむちゃくちゃ気合い入ってるんで、みんな「ZURUMUKE」をがっつり聴いて楽しみにしててください。