WILYWNKA×VIGORMAN×GeG|ソロアルバムを語り明かす変態紳士鼎談

制作して、遊んで、飲んで。俺ら3人はいっつも一緒にいる。

──今回3人がそれぞれソロアルバムを発表されましたが、最初にリリースされたのはGeGさんの「Mellow Mellow ~GeG's PLAYLIST~」でした。

GeG

GeG もともとVIGORMANとWILYWNKAが出すことになってて、俺はそれぞれの作品に関わっているだけで自分のアルバムを出す予定はなかったんですよ。でも、ある日タカに「お前も出さなあかんやろ」と言われて。

WILYWNKA トラックメイカーというと打ち込みやサンプリングをベースに制作する人が多いけど、GeGはミュージシャンに楽器を弾いてもらって、それをさらにエディットして作っていくスタイルなんですよ。そういう人って日本にはあんまりいないと思うし、何より俺らはGeGがものすごいトラックメイカーだと思っているから、ソロ作品を出してもらいたかったんですよね。

VIGORMAN 昔は関西のトラックメイカーがいろんなラッパーやレゲエディージェイ、シンガーを参加させたコンピ盤みたいな作品を出してたんだよね。AKIO BEATSとかDIGITAL NINJAとかさ。

WILYWNKA GeGの周りにはいろんなミュージシャンがいて、そういう作品を制作できる環境だと思ったし、GeGならできると思った。だから「やれ!」って(笑)。

GeG 最初は断ってたんですよね。俺は裏方志向というか、プロデューサーとして全体を俯瞰で捉えて作品を作り上げたいタイプなんで。でも今は「Mellow Mellow ~GeG's PLAYLIST~」を出せてよかったと思ってますけどね(笑)。

WILYWNKA 俺とVIGORMANはGeG推してますから。

GeG 仲良しの特権(笑)。俺ら、本当にいっつも一緒にいるんですよ。曲も一緒に遊びながら作ってるし、休みのときは3人でごはん食べに行ったり、飲みに行ったりもしてますね。

VIGORMAN そもそも俺は最初アルバムじゃなくてEPをGeGと作ってたんですよ。その段階からGeGにはいちトラックメイカーではなく、作品をトータルで見るプロデューサーとして入ってもらっていたんです。そしたら途中まで作った段階でGeGが「もうちょっとがんばってアルバムにしようよ」と言ってくれて。当初EPに入る予定だった曲から厳選して、さらにトラックを差し替えたりもして。

WILYWNKA VIGORMANは去年の秋くらいからスタジオで作業してたよな。俺、BACHLOGICさんのビートになる前の段階とかも知ってるし。

VIGORMAN 俺、タカのアルバムに入ってる「Mayday」にコーラスで参加してるんですけど、それもたまたまレコーディングしてるときにその場にいたからっていう流れだし。なんなら昨日も一緒に夜ごはん食べて、そのあと3人でダラダラしてたしね。

WILYWNKA GeGのアルバムに入ってる「Merry Go Round」は、まさにその感じ。いっつも同じメンツで同じような場所をぐるぐる回って遊んでる。

VIGORMAN たまに3人で地方行ったりすると、俺らが仲良すぎてびっくりされますもん。

GeG 仕事は仕事って分けてる人たちもいるみたいだけど俺らは無理だよな。

親友が作った1stアルバムはやっぱり特別

──次にリリースされたのがVIGORMANさんの1stソロアルバム「SOLIPSISM」。BACHLOGICさんやKMさんがトラックメーカーとして参加して、GeGさんがトータルプロデュースを担当しました。

WILYWNKA やっぱ1stアルバムってテンションが上がるものなんですよ。俺も去年出したけど(1stアルバム「SACULA」を2018年9月にリリース)、自分のことだと正直あんまり実感が湧かなくて。だから今こうしてVIGORMANが1stアルバムを出すのを近くで感じられるのはすごくうれしい。内容も最高にヤバいアルバムだと思うし。

GeG トータルプロデューサーとして参加させてくれてうれしかったですね。尊敬するBACHLOGICさんと制作できたし。実はこのアルバムをミックスしてるHayabusaはBLさんの変名なんです。言っていいのかな?(笑) 一緒にスタジオに入って作業できたのは感動でしたね。

VIGORMAN 俺もBLさんは本当に大ファンだった。もともとBRON-KさんのアルバムでBLさんを知って、10代の頃はめちゃくちゃ聴いてました。でも、今回一緒に制作するまでBLさんが大阪出身だって知らなくて。SEEDAさんやNORIKIYOさん、AKLOさん、SALUさんのイメージがあったから、てっきり関東の人だと思ってた。

WILYWNKA 俺らみんなBLさんのファンなんですよ。でも世代も違うから全然面識なくて。BLさんは俺のアルバムにも2曲参加してくれていることもあって、今回わざわざ大阪まで来てくれたんです。でも本当に顔を知らないから、最初は一緒に来たスタッフの人のことをBLさんだと思っちゃった(笑)。

VIGORMAN GeGは大阪のバンドシーンで長いこと活動してるから、いいミュージシャンをたくさん知ってるんですよ。俺は生音が大好きで、しかもGeGみたいな人がすぐ近くにいるなら、楽器を生かした音楽をやりたかった。クラブでも聴けるけど、家でリラックスしてるときにもハマるアルバムになってると思うんですよ。

GeG VIGORMANのアルバムでは「大人が言う」のリミックスがすごく気に入ってますね。この曲にはshowmoreの井上惇志くんとSoulflexのKenTが参加していて、ミュージシャンシーンのエネルギーが注入できたと思うんですよね。あの2人はすごすぎる。

GeGが音の感覚を教えてくれた

──そして9月20日にはWILYWNKAさんの2ndソロアルバム「PAUSE」がリリースされます。

WILYWNKA

WILYWNKA GeGには俺のアルバムにも5曲参加してもらってるからね。

GeG 今回のアルバムはかなり新しいタカを感じた。歌っぽいフロウが多くなったというか。

WILYWNKA それはたぶん俺がGeGの影響を受けているからだと思うよ。タイトル曲の「PAUSE」はトラックないところから作っていて。スタジオで俺が何もない状態で歌ったものに、NOAHくんがトラックを寄せてくれてる。NOAHくんもGeGと同じくお世話になってる大阪の先輩で、実は俺らが子供の頃から溜まってたスタジオにいた人なんですよ。だから俺の癖もわかっていて、俺がやりやすいようにスタジオワークしてくれる。ありもののトラックに歌っぽいフロウを乗せようとしても、俺は音痴だから無理(笑)。

GeG タカもVIGORMANも、最初に俺の家に来たときは本当に歌が下手くそだったんですよ。聴いてられないレベル(笑)。

VIGORMAN 2018年にリリースしたミニアルバム(「DANK NOVA」)や変態(紳士クラブ)から知ってくれた人は、俺にメロディアスなイメージを持ってると思うけど、根底には荒々しい「ブランニューダンスホールレゲエ」のスタイルがあって、始めた頃はトラックに対してどういうボイスの出し方をすればいいか、みたいなことを何も気にしてなかった。でも「ZIP ROCK STAR」(2017年にリリースされた変態紳士クラブの作品)を制作したとき、GeGがかなり根気よく音の感覚を教えてくれたんです。トラックを鳴らして、俺が歌ってるキーが違うと一旦止めて、鍵盤の単音を叩いて「この音に合わせて声出してみて」って。それを繰り返しているうちに徐々にわかってきた。

WILYWNKA 俺、今でもわかってないよ。GeGに鍵盤鳴らされるとイラッとする(笑)。

GeG あの頃から考えれば、VIGORMANはもちろん、タカも相当いい感じになったと思うよ。