変態紳士クラブ×木村昴|次のステージに向かう「ZURUMUKE」対談

変態紳士クラブの1stアルバム「ZURUMUKE」が6月16日にCDリリースされた。

YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」やテレビ朝日系「ミュージックステーション」、NHK総合「シブヤノオト」への出演、映画「EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」への主題歌提供と、波に乗る変態紳士クラブ。大阪・大阪城ホールを舞台にしたグループ史上最大規模のワンマンライブ「変態紳士舞踏会 in 大阪城ホール」は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて延期となったものの、8月5日に振替公演が行われることが決定した。

音楽ナタリーでは単独インタビュー(参照:「Mステ」出演でも話題の変態紳士クラブ、「3人」「等身大」「すきにやる」を大前提に完成させた1stアルバム「ZURUMUKE」を語る)に続いて、音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」でつながりを持った木村昴との対談をセッティング。変態紳士クラブが「ヒプマイ」のイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”に提供した楽曲の制作エピソードから、変態紳士クラブの1stアルバムの内容や大阪城ホールでのライブ、さらには「変態」という言葉の意味まで語ってもらった。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 斎藤大嗣

え、イケブクロ育ちでしたか?

WILYWNKA(変態紳士クラブ) 木村さんの「週刊ヤングジャンプ」での連載(「木村昴のHIPHOP HOORAY」)で変態紳士クラブを2回にわたって取り上げていただいた記事、拝見しました。

変態紳士クラブ

GeG(変態紳士クラブ) めちゃくちゃいいこと書いてくださってうれしかったです。ありがとうございます。

WILYWNKA あんなによく言ってくれるなんて、もう読んでて気持ちよすぎて、めちゃくちゃ酒進みました(笑)。

木村昴 アッハッハ! 酒のアテになる内容だったらうれしいです(笑)。

──木村さんが変態紳士クラブのことを知ったのはいつですか?

木村 僕が変態紳士クラブを知ったきっかけは「すきにやる」のMV(2018年2月28日公開)でした。僕が吹き替えを担当させてもらった「キングスマン」という映画が高級テーラー、つまり「紳士の社交場」が舞台の1つになってるんですね。その予告編をYouTubeで観てたら、その関連動画に「すきにやる」が上がってきて。

──アルゴリズムが「紳士」でつながったと(笑)。

木村 そうそう。それで「すきにやる」のMVを観て、こんなにカッコいいグループがあるんだ!って興味を持って、そこから「ZIP ROCK STAR」を聴いて一気にハマったんですよね。

VIGORMAN(変態紳士クラブ) ありがとうございます。

木村 その後も「HERO」とか作品が出るたびにいちファンとして聴いてたんですね。そしたら僕が声優として参加している「ヒプノシスマイク」、その中でも僕が声をあてている山田一郎の所属するイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”の楽曲「Re:start!!!」を変態紳士クラブさんがプロデュースしてくださることになって。決まったときはぶち上がりましたね。そして仮歌を聴いてさらにぶち上がり。

──仮歌を聴いたときの感想は?

木村昴

木村 「え、イケブクロ育ちでしたか?」って(笑)。それぐらいBuster Bros!!!の心境や状況を織り込んだ、一郎たちの気持ちにピッタリはまる内容だったんですよね。まるで三兄弟から自然に出てきたような言葉だと感じたし、1つも矛盾のない内容で。Buster Bros!!!三兄弟(木村 / 石谷春貴 / 天﨑滉平)のグループLINEでも「もう優勝です」って連絡を回し合って(笑)。それぐらいうれしい曲でした。

VIGORMAN 変態紳士クラブとしては初の外部提供曲だったので、そう思っていただけたら最高ですね。

木村 プロデュースのお初をいただけたのもうれしいし、変態紳士クラブのお三方にも作ってよかったと思ってもらうためにも、「もう勝つしかない」って気合いが入りましたね。

VIGORMAN 僕らも曲を作ってる段階から「絶対勝ちたい」っていう話をしてました。楽曲で勝敗が決まるっていうのはなかなかないことだったし、やるなら勝つしかないって。

俺たちと一緒にリスタートしようや!

──ラップにおけるMCバトル、レゲエにおけるサウンドクラッシュのように、レゲエもヒップホップも勝敗が付くアートフォームがありますが、それは基本的には「刹那の戦いにおける勝敗」ですよね。「ヒプマイ」ではバトル曲のCDを購入したファンの投票が勝敗を決定する要因になりますが、「永続的に残る楽曲」で勝敗が決まるのは非常に珍しくて。

VIGORMAN だから「楽曲で競う」っていうのは初めての経験ですね。

WILYWNKA そのシステムにも驚くよな。「ヒプマイ」って、やっぱりイケブクロがメインに見える人が多いと思うんですけど、でも負けるんやって。

木村 1stバトル(「第一回 韻踏闘技大會」)では初戦で負けてるんで。

VIGORMAN そこもリアルですよね。

木村 しかもその結果によって、それ以降の楽曲やドラマトラックのストーリーも変化するんですよね。かつその勝敗はリスナーの手によって決められる、リスナーの行動によってそれからの物語が大きく変わるっていうのも「ヒプマイ」の特徴で。

VIGORMAN その意味でも、イケブクロは1stバトルで負けたっていう、とんとん拍子には進んでない物語があるから、逆にめちゃくちゃカッコいいディビジョンになってますよね。

WILYWNKA そういうストーリーを知れば知るほど、イケブクロに勝たせなあかん!って。コミカライズ版の、ステージ上で三郎が涙を流してるシーンを見て「サブちゃん待ってて! 『Re:Start!!!』って曲書くから。俺たちと一緒にリスタートしようや!」って思ってましたもん(笑)。

木村 最高です! 結果「Re:Start!!!」を引っ提げた「2nd DRB」では初戦を勝ち上がることができて。だから今回初めて勝利を味わわせてもらったんで、本当に感謝してます。

GeG いやあ、僕らもですよ。

木村 このまま優勝できるようにがんばります。

木村昴の煽りはJAY-Zと同じ

──「Re:Start!!!」のレコーディングにはGeGさんとWILYWNKAさんが立ち会われたそうですね。

GeG

GeG レコーディングで、ホンマに声優さんは声のプロやなって思いましたね。そして案外WILYWNKAがちゃんとディレクションできるんやなってことにも感動しました(笑)。

WILYWNKA ラップって基本的には教えるもんやないし、僕自身、自分のイメージする正解があるから、自分がディレクションを受ける側のときはめっちゃ聞き分けが悪いんですよね。でもBuster Bros!!!は「こうラップしたらいいんじゃないですかね」ってアイデアを出すと、それにすぐ対応してくれて。その柔軟さとスキルはすげえと思いましたね。

木村 直接ディレクションいただけたのはすごくうれしかったです。でも実は僕のヴァースだけ、あのあともう1回録り直してるんですよね。いただいたディレクションをもっとブラッシュアップできるんじゃないかって。それぐらい気持ちを注いで制作に向かえる曲だったから、とにかくこの曲を最高の形でお客さんに聴いてほしいっていう気持ちがあふれて。

VIGORMAN 作ってる側からしたらこの上ない言葉ですね。

WILYWNKA 初めて自分のリリックを別の人が歌うのを聴いたんですが、めちゃくちゃ楽しくて。

VIGORMAN 自分はソロでは何曲かプロデュースをしたことがあるんですが、自分で作った曲がその人の声になったときに、一番テンションが上がりますね。

WILYWNKA 木村さんの煽りの「アハ」の入れ方は、もうラップのプロの「アハ」でしたね。JAY-Zと同じ「アハ」(笑)。

木村 アハハ!(笑) ありがとうございます! レコーディングのとき、「今日だけは『レペゼンイケブクロ』の気持ちで来てるんで」って言ってくださったのは本当に光栄で。

VIGORMAN 大阪出身の僕らとしては、自分たちの曲では絶対にそんなことは言えないんで。

WILYWNKA 嘘になってまうんで。だからキャラクターなら言えるワードがあるっていうのはめちゃくちゃ楽しい発見でしたね。しかも「イケブクロ≒池袋」って、現実の話だと「BED」っていう老舗のクラブがあったり(2018年閉店)。

GeG だから、ハードコアなヒップホップの強い街ってイメージ。

VIGORMAN コアな街ってイメージよな。

WILYWNKA そんな街を俺らも「ブクロ」って言える日が近付いてきたなって(笑)。レコーディングに関して言えば、俺は「ジャイアンに会えるんや!」っていうのも楽しみで(笑)。

木村 いやあ、ジャイアンやっててよかったな(笑)。

WILYWNKA もちろんRECに立ち会いたいって気持ちもあったけど、「ジャイアンや!」って気持ちも同じぐらいあって。

VIGORMAN 特に俺やWILYWNKAは、木村さんのジャイアンで育ってる世代なんで。

木村 今年で17年目です。

WILYWNKA 俺らが6、7歳のときからやから、もうど真ん中ですよ。金曜の夜は「ドラえもん」から「クレヨンしんちゃん」っていう流れで。

VIGORMAN 土日の学校休みに向けて。

WILYWNKA その2つのアニメで勢い付くって感じやったよな(笑)。

木村 「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「ミュージックステーション」の流れですよね。

WILYWNKA 小学校のとき、その流れ好きやったわあ(笑)。

「Mステ」はもう1回呼んでもらってこそ

──見事に話の導線を作っていただきましたが(笑)、変態紳士クラブは「ミュージックステーション」にも出演を果たされて。

木村 どうでしたか、「Mステ」は。

GeG お話をいただいたときは「マジで!?」みたいな。

WILYWNKA 「マジかー」って言いながら頭の中にはハートマークが浮かぶ感じで(笑)。

木村 ハッハッハ。やっぱり驚きましたか。

WILYWNKA もちろん。一番わかりやすく家族にドヤれる機会でしたね。

VIGORMAN 親孝行になったよな。さすがに喜んでくれて。

GeG 反響もすごかったし、自分たちよりも周りが喜んでくれましたね。

木村 ご無沙汰になってた人から連絡がある感じですか?

VIGORMAN 来ました来ました。「がんばってんやな」って。

WILYWNKA 昔、酔った勢いであるトラックメイカーに「ラッパーとしてMステ出れたら最強なんですよ」って戯言をほざいてたらしいんですけど、その人から「それが現実になったな!」って。

木村 かっけー!

VIGORMAN 「HERO」のタイミングで、将来は「Mステ」に出たいってことは言ってたんですよね。でもそれは「いつかは」だったんですよね。

WILYWNKA すぐに出られるなんて思ってないし。

木村 でもそれがもう叶ったんですよね。素晴らしいな。

VIGORMAN でも、もう1回呼んでもらってこそ、やと思いますね。

WILYWNKA だから出演するともらえるボックスティッシュはおかんにあげました。自分で保存せんとこうと。

木村 いい願掛けですね。

WILYWNKA また出られて、新しいのをもらったら使います(笑)。