ナタリー PowerPush - ハルカトミユキ

2人がメジャーで描く「青写真」

ハルカトミユキにとって青は大きな存在

ハルカ

──ちなみに突破口を開いた曲はなんですか?

ハルカ 「シアノタイプ」ですね。当時は渦中にいたので「やっとできた!」という感じで、そのあとも間髪入れずにどんどん曲を書いていったから、冷静に考えられなかったけど、今になって思えば「シアノタイプ」が突破口を開いてくれましたね。

──「シアノタイプ」は悲しみよりも、未来を期待するささやかな幸福感が一歩前に出ている。

ハルカ そうですね。こういう手触りの曲を書きたかったし、歌いたかったんだと思います。歌詞の内容は全然素直じゃないんですけど、素直に書きたくて書いたという感じで。メロディも全然決まらなくてずっと練ってたんですけど、最後に運命的な感じでこのメロディが出てきて。

──「青写真」という意味をもつ「シアノタイプ」というワードを曲名だけではなく、アルバムタイトルにも冠したのはどういう思いからですか?

ハルカ 最初は曲名も決まってなくて。ある日、パソコンで青写真の画像を見てたら、「青写真」って言葉に引っかかりを覚えて、英語にしたら「シアノタイプ」になることを知ったんです。この曲は未来のことを歌っているし、アルバム自体も青写真を描くようにこれからのハルカトミユキに期待してもらえるような内容になったと思うので、曲名もアルバムタイトルも「シアノタイプ」にしようと思ったんです。

──ハルカトミユキの楽曲は青が似合いますよね。その青は冷たさも、鋭さも、純真さも内包していて。あるいは、青い炎のような静かに強い熱もあるし。

ハルカ そうなんですよね。ハルカトミユキの音楽にとって青という色は大きな存在で。これからもいろんな青を表現したいなと思いますね。

ミユキが理解しやすい曲=ハルカが素直

──ミユキさんはハルカさんから上がってきた新曲群をどう受け止めてましたか?

ミユキ

ミユキ 例えば「未成年」(「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」収録)とか、音を含めた全体で捉えると伝えたいことがわかるんだけど、歌詞だけを読むと複雑で理解しづらいところがあって。でも、このアルバムに入ってる曲は全部すんなり自分の中に入ってきたんですよ。これは面白いとか、これはかわいらしいって。私が理解しやすくなったということは、ホントにハルカのソングライティングが素直になったんだなって思います(笑)。

ハルカ 確かに! 曲によって感情がすごくはっきり出るようになったと思うんですよね。明らかに怒ってる曲もあれば、素直な曲もあれば、すっごく寂しいんだろうなという曲もあって。

──自ずと音の色付けもしやすくなりますよね。

ミユキ そうなんですよ。もともとハルカが作るメロディを壊すのが私のスタンスなんですけど、今回は歌詞に寄って音を付けることが自然にできたんですよね。歌詞が攻撃的なものは私も遊び放題やって、最後の繊細な3曲は無意識に私も繊細な音を付けていて。

ハルカ うん、すごく自然だったね。

ミユキ 攻撃的に遊ぶ曲を、思う存分にできた安心感があったからかもしれない。

──「マネキン」とか「mosaic」とか「振り出しに戻る」とか。

ミユキ そう、まさに。だから繊細な表現もしやすかったのかもしれないですね。

──「マネキン」のギターリフなんてマイブラ(My Bloody Valentine)かっていうくらい歪んだ浮遊感があって。「振り出しに戻る」の突き抜けたニューウェイブ感もフレッシュだったし。

ミユキ ハルカに「なんか変なもの弾いて」って言われて弾いた音がいろんな人に「~っぽい」って言われるんですけど、私自身は全然知らなくて(笑)。ああ、そうなんだっていう。

もっと際どい表現を突き詰めてみたい

──前にインタビューしたときに、ハルカさんが書く行き場のない歌の数々は、過去に付き合っていたある恋人とのことを描いていると言っていて。でも、今のハルカさんが書く歌は、もうその人の存在から解き放たれてる気がするんですよね。

左からハルカ、ミユキ。

ハルカ ああ、そうですねえ!! うん、そうだ。そうですね。その変化はすごく大きいですね。抵抗なくというか、意識せずそうなってました。今、言われて気付いたくらい(笑)。ああ……でも、それは大きいなあ!

ミユキ あははははは(笑)。

──最後に、これからのハルカトミユキを2人はどう見据えていますか?

ハルカ このアルバムを作ったことでさらに燃えたというか。もう次が作りたくなってる自分がいるので。明確に階段が見えてるわけじゃないですけど、熱力だけはすごくあります。たぶん、自然にそのとき出すべき曲が出てくると思うんです。このアルバムを作れたからこそ自由度が上がって、もっと新しいこともできるし、核の部分を強めることもできると思うと、それがすごくうれしいですね。

ミユキ 私個人としては、このアルバムで確実に入口を広げることができると思うので、もっと際どい表現を突き詰めてみたいですね。

ハルカ 一度、中に入ってもらえばこっちのものだしね。

ミユキ そう、こっちのものなんで。

ニューアルバム「シアノタイプ」/ 2013年11月6日発売 / 3150円 / Sony Music Associated Records / AICL-2598
収録曲
  1. 消しゴム
  2. マネキン
  3. ドライアイス
  4. mosaic
  5. Hate you
  6. シアノタイプ
  7. 7nonsense
  8. 振り出しに戻る
  9. 伝言ゲーム
  10. 長い待ち合わせ
  11. ナイフ
  12. Vanilla
ハルカトミユキ
ハルカトミユキ

立教大学の音楽サークルで知り合った1989年生まれのハルカ(Vo, G)とミユキ(Key, Cho)によるフォークロックユニット。ライブを中心とした活動を展開し、2012年11月に初の全国流通音源となるミニアルバム「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」をリリース。静謐さと激しさをあわせ持つサウンド、刺激的な歌詞で大きな注目を集め、iTunes Storeが選ぶ2013年期待の新人アーティスト「ニューアーティスト2013」にも選ばれる。2013年3月、2ndミニアルバム「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」をリリース。11月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューアルバム「シアノタイプ」を発表する。