音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜

自分を救うのはもう1人の自分

花澤香菜が9枚目のシングル「透明な女の子」を完成させた。アルバムのリリースを1つのタームとして音楽活動を展開している彼女にとって、今作は“4thシーズン”の幕開けを飾るもの。このシングルでは空気公団の山崎ゆかりが、収録曲すべての楽曲提供のみならず、ミュージックビデオやアートワークにいたるまでトータルでプロデュースを手がけている。このインタビューでは「透明な女の子」の話題を中心に、2015年より続く全国サーキット「かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~」でのエピソードやこのあと控えるライブについても語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃

全国ツアーと「かなめぐり」

──音楽ナタリーでのインタビューは昨年4月の3rdアルバム「Blue Avenue」発売時(参照:花澤香菜「Blue Avenue」インタビュー )以来となりますが、そのあと5月から初めての日本武道館を含む全国ツアーがありましたよね。少し間が開いてしまいましたが、改めてツアーについて振り返ってもらえますか?

2ndアルバムのときのツアーよりも公演数が増えたので「すぐに終わっちゃう!」という寂しさは少し薄れて、1本1本どんどんよくしていこうという気持ちで挑みました。

──ツアーは大変なことよりも、楽しい、終わりたくないという気持ちが強い?

そうですね。ただ、声優としてのお仕事と並行する中で、あれだけ大きな規模になると、体の準備も心の準備もしっかりしなくちゃいけないので大変でした。ツアーの期間はしっかり体力作りをしていたので、なんとか乗り切ることができました。

──ライブパフォーマーとしての自信は付きましたか?

自信なんか付かないですよ(笑)。でも、ライブは自分が楽しむことでお客さんも楽しんでくれるというのは武道館のライブ(参照:花澤香菜、大成功の武道館ライブでツアー好発進!千石撫子のあの曲も)ですごく実感したので、その気持ちは大事にしています。

──さらに昨年11月からは、朗読とアコースティックライブによる全国サーキット「かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~」がスタートしました。

普段のツアーだと行く場所が大体決まっているので、いつも行かないようなところも回ってみたかったんです。お手紙を送ってくださるファンの方の中には学生さんも多いんですけど、地方に住んでいるとお小遣いが少なくてなかなかライブに行けないという人が多くて。社会人の方でもわざわざ東京まで出てきてイベントに参加するのは難しいと思うので、そういう方たちに私から会いに行って、歌だけじゃなく声優としての部分も観てもらいたくて、朗読と歌で回るツアーを提案しました。普段のライブと違う、ファンミーティングみたいなイメージで、けっこうユルいです(笑)。セットリストもガチガチに決めてしまわずに、しゃべる内容もその土地で起こったことや考えてることを自由に話してます。

──初めて回った地方であった面白いことや、思い出深い出来事はありますか?

花澤香菜

初日の奈良は、なら100年会館という会場だったんですけど、ここは外側がガラス張りになっていて、午前中は日の光が入ってポカポカした感じで、夜はしっとりとした背景になるんです。歌いながら「この会場いいなあ」と思ってました。岩手はその土地の人柄なのか、一番穏やかでしたね。お客さんだけじゃなく、地元で触れ合う人もみんな控えめで優しい雰囲気でした。かと思えば、沖縄はすごく自由で元気(笑)。愛媛もお客さんのノリがよかったなあ。1人ひとりは違うんでしょうけど、その土地ごとの色ってあるんだなあと思いました。新潟はすごくごはんがおいしくて。

──観光もしっかり楽しめているんですか?

前日から仕事で来ていて翌日にライブ、というスケジュールが多かったので隙間を縫って、その土地のおいしいもの、おいしいパン屋さんを探して。

──無類のパン好きである花澤さんとしては、地方のパン屋巡りは欠かせないですよね。

そうなんです。ふふふ(笑)。あと新潟はヤツメウナギ! 普通のウナギだと思ったら全然違ったんですよ。表に「ヤツメウナギ入りました!」って書いてあったから、高いけど食べてみるかと頼んでみたら、寄生獣みたいなのが出てきてびっくりしました(笑)。

「カッコいいなあ、このお姉さん」

──花澤さんの音楽活動はアルバムを軸に1stシーズン、2ndシーズン、3rdシーズンと進んできましたが、今回のシングルは4thシーズンの幕開けということで。

はい。今までとコンセプト自体は変わらず、どういう方と一緒にやったら面白いのか、素敵に音楽が伝わるかを考えて、今回は空気公団の山崎ゆかりさんにお願いしました。

──曲作りはどのように進めていったんですか?

最初の顔合わせでどういう曲を作っていくかを打ち合わせしまして。そのときに山崎さんから「曲のテーマになるものを考えてほしい」というお願いがあったので、好きな小説の一節などからキーワードを上げてお渡ししました。そしたらすぐに山崎さんからレスポンスがあって。顔合わせから2週間ぐらいで3曲分のデモが届きました。

──空気公団の音楽から受けていた印象と、実際に山崎さんとお会いしての印象は?

全然違いました。ライブで歌っているときはあまりMCもなさらないし、ミステリアスな方だと思ってたんですけど、お話してみたらすごく気さくなお姉さんで。気さくなだけじゃなく、しゃべっている言葉の1つひとつがそのまま空気公団の歌詞になるような感じなんですよね。自分の視点で物事を表現する、それを自然にできる人なんだなあって。「カッコいいなあ、このお姉さん」と思いました。

──空気公団は長年にわたってひたすら己の道のみを追究する、伝統工芸の職人みたいな姿勢で音楽を作り続けている人たちなので、花澤さんの声を“材料”にしてどのような曲を作るのかはすごく興味深かったです。

そうですね。山崎さんは「空気公団は自分で歌っているけど、自分では空気公団をプロデュースしている認識」っておっしゃっていて。そんな山崎さんが私をどうプロデュースしてくださるのか楽しみでした。

ニューシングル「透明な女の子」 / 2016年2月24日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] / 1728円 / SVWC-70138~9
通常盤 [CD] / 1296円 / SVWC-70140
CD収録曲
  1. 透明な女の子
  2. パン屋と本屋
  3. 雨降りしき
  4. 透明な女の子(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 透明な女の子(ミュージックビデオ)
花澤香菜 9thシングル「透明な女の子」リリース記念スペシャルイベント
A賞:トーク&ミニライヴ with 空気公団
2016年4月3日(日)東京都内(会場は当選者のみ発表)
OPEN 16:30 / START 17:00
※入場時にドリンクチケット(500円)の購入が必要。
B賞:女子会イベント「かなまつり」
2016年3月6日(日)東京都内(会場は当選者のみ発表)
OPEN 16:00 / START 17:00
※女性限定イベント / 入場時にドリンクチケット(600円)の購入が必要。

応募券はシングル「透明な女の子」初回限定盤および通常盤初回プレス分に封入。
応募締切:2016年2月28日(日)23:59

花澤香菜(ハナザワカナ)

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたライブツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。同年11月からは朗読とアコースティックライブで巡る全国サーキット「かなめぐり ~歌って、読んで、旅をして~」で各地を回っている。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」をリリース。