弱い自分を救うのは強い自分だけ

──最初に届いた3曲というのが、このシングルに収められている3曲なんでしょうか。

はい。どの曲もよかったので「この3曲でお願いします」って。最初にキー合わせを兼ねたレコーディングをして、そこから歌の方向性などを決めていきました。

──歌のニュアンスについて山崎さんからの指示は？

特に具体的なディレクションはなかったです。「あなたがこの歌詞を読んで思ったそのまんまでいいですよ」って。テイクもあまり重ねずに「そのときの空気をそのまま閉じ込めましょう」という感じでした。

──表題曲の「透明な女の子」はシンプルな言葉で空想的な表現なのに、メロディと音と言葉が一緒になるとものすごくイメージが浮かびます。

そうですね。この曲は、私が送ったキーワードの中から「強くなりたい」とか「変化したい」という思いがどこかにあるんじゃないかと山崎さんが読み取ってくださって。人間には強い部分と弱い部分があって、普段の自分は弱いけど、そんな自分を救うのは強い自分だけだ、というところからこういう歌詞にしてもらいました。歌っていてすごく背中を押されますね。

──それは直接的に「強くなりたいんです」と話したわけではなく？

違うんです。いくつかのキーワードから私の気持ちを読み取ってくださったみたいで。

──カウンセリングみたいですね。

ホントですよ！ もとになっている小説がなんなのかも教えず、ただただ私の好きなものとか、心の支えにしているものとかを挙げただけだったんですけどね。歌については飾らずに歌うのが一番だと思って、できるだけ自然体で歌うようにしました。メロディがけっこう難しいんですけど、気持ちを集中してレコーディングできたかなと思います。

強い自分と弱い自分を視覚化したMV

──「透明な女の子」はミュージックビデオも山崎さんのディレクションなんですよね。初回限定盤のジャケットにも登場する花澤さんの金髪姿には驚きました。

強い自分と弱い自分をビジュアルで表す上で、人格がはっきりわかるように色を分けてみました。金髪が透明な女の子で、普段の私が弱い自分。

──花澤さんの中には、実際に「透明な女の子」的な強い自分は存在していますか？

あります、あります。ずっとサバサバした女の子に憧れていて……私は思考がゆっくりなのか、そういう性質なんでしょうけど、いくらでもボーッとできちゃうんです。それで声も高めだから「かわいこぶってる」と見られることが多くて、それがずっと嫌で。そんな自分を変えたくて、なるべくサバサバしゃべろうと意識してたんですよね。学生時代からの積み重ねで今もそれは残っていて、「ああ、そうッスよね」とか言っちゃうんですよ（笑）。でもそうやって意識していると、本当に自分の中のサバサバした部分が見えてきて、どんどんしゃべりやすくなっていったんです。それは「透明な女の子」を歌ったりMVを撮ったりしている中で改めて感じました。

──MVにおける山崎さんのディレクションはどのあたりまで？

全部ですね。髪の色もそうだし、カメラ割りとかも全部。絵コンテまで山崎さん自身が書いてくださって。

──やくしまるえつこさんプロデュースのシングル「こきゅうとす」（2014年12月発売）も同じように、やくしまるさん自身がMVのディレクションを手がけていましたけど、あのときはそれがどういうカットなのかわからないまま不思議なシーンを撮影したとおっしゃってましたよね（参照：花澤香菜「こきゅうとす」インタビュー）。今回はどうでしたか？

真逆でした。ほとんど絵コンテの通りですね。