音楽ナタリー PowerPush - 花澤香菜

音楽に身を委ねる喜びの歌

Swing Out Sisterが書き下ろした“洋楽”のニュアンス

──そして11曲目の「Dream A Dream」はSwing Out Sisterのアンディ・コーネルとコリーン・ドリュリーが作・編曲ということで。岩里さんによる日本語詞とはいえ、サウンドは洋楽テイストとかではない、完全な洋楽ですよね。

そう! 完全なSwing Out Sisterなんですよね(笑)。コリーンさんの仮歌は英語で。最初歌詞が付いてないときにキー合わせでラララで歌ってみたら、難しすぎて。日本語の歌詞が付くまでは本当に歌えるのか心配でした。岩里さんもすごく苦労したと思います。

──英語詞の仮歌をベースに歌詞を作ったんでしょうけど、「ロマンティックな天使がささやく」あたりの節回しはおそらく英語のニュアンスを残してるんだろうなと。

花澤香菜

日本語詞の仮歌を岩里さんが歌ってくださって、レコーディングでも直接アドバイスをもらいました。その「ロマンティックな天使がささやく」のところは、大人のカッコよさがあるコリーンさんの歌い回しがなかなかうまくいかなかったんですけど、岩里さんの「音符がぶら下がってるような感じで」というアドバイスでニュアンスがつかめました。あと、コリーンさんがライブで歌う姿を生で観ていたので、あの独特なリズムの取り方を自分なりにマネしてみたりして。

──次の「マジカル・ファンタジー・ツアー」は中塚武さんの書き下ろしで、カッコいい「Night And Day」とはまた違うハッピーなスウィングジャズですね。

……これ、すごく難しかったんですよ! 「Night And Day」は物語の展開もわかりやすくて、ジャズ初心者にもノリやすい曲だと思うんですけど、こっちは自然体で軽やかに歌っているようで、細かいところが本当に難しくて。伸ばすところと畳みかけるところのメリハリとか、うまくいかないとなかなかカッコよくならないんです。

──完成型を聴いている分にはすごくナチュラルな感じがするんですけど、細かいニュアンスを作り上げる作業は確かに大変そうですね。こんなに楽しい曲なのに、裏ではそんな苦労が。

そうなんですよー。北川さんと一緒にイーッ!ってなりながら作ってました(笑)。

──そして最新シングルの「君がいなくちゃだめなんだ」(参照:花澤香菜「君がいなくちゃだめなんだ」インタビュー)がアルバムの終盤に置かれることで、物語がドラマチックに締めくくられるような感じがあって。NONA REEVESの西寺郷太さん、奥田健介さんのコンビによる最後の「Blue Avenue を探して」は、クライマックスのあとのエンディングを眺めているような気持ちになりました。

花澤香菜

軽やかに終わる感じがすごく気に入っています。「Blue Avenue を探して」は1曲の中だけでもドラマチックなんですよね。最後に向かって吹っ切れていくような。歌入れのときは西寺さんも奥田さんも来てくださって、言葉のリズムの取り方や、声の表情の付け方に細かく指示をもらいました。

──コメンタリーでは過去の西寺&奥田コンビ曲と歌詞の世界観がつながっているとおっしゃっていましたが。

2人も「花澤3部作だよ」って言ってました(笑)。曲のタイトルは、アルバムタイトルが決まったあとに付けてくださったんですよ。粋な計らいですよねー。

K.HANAZAWAの武道館と全国ツアー

──今回もまたいい経験値を積んだ感じですね。

花澤香菜

はい。今回のアルバムを作るにあたって、ビリー・ジョエルやSwing Out Sisterみたいな、これまであまり知らなかった音楽を聴いて、たくさん発見があったんです。これを知らなかったなんてすごくもったいない!って。北川さん世代の音楽好きなら「オオッ!」と思う要素がいっぱいあると思うんですけど、私と同じぐらいの音楽知識の人たちにも一緒に新しい刺激を体験してもらいたいです。

──北川さんも、これまで開けてなかった引き出しをいっぱい開けていると思うんですよね。花澤さんという依り代があるからこそ、意外な引き出しが開いてしまったみたいな。

おお。だとしたら、なんかうれしいですね。

──そして今は今作を携えてのツアー……日本武道館から始まる過去最大のツアーに向けて準備を進めているんですよね。

すごく楽しみです。最初にお話したように、今まで以上にバンドの皆さんと一緒に音を作り上げていくライブになると思うので。

──“武道館ワンマン”がいよいよ現実のものとして目前に迫ってきましたけど、心の準備はできていますか?

3月に横浜で「君がいなくちゃだめなんだ」のリリースイベントをやったんですけど(参照:花澤香菜、シングル発売記念ライブで3rdアルバムからの新曲もお届け)、あのイベントが武道館までに人前で歌う最後の機会だったので、完全に武道館を意識した作りにしていたんです。あのイベントをいい形で終わらせることができたのは自信につながってますね。練習時間はたっぷりもらっているので、あまり気負わずに楽しめればいいな、楽しんでもらえればいいなと思っています。あと、「君がいなくちゃだめなんだ」の映画の舞台挨拶で、ツアーで回るのと同じ街を回らせていただいたんです。肉声で話せるぐらいの距離で各地の皆さんと顔を合わせて「ライブ楽しみだね」って会話を交わしてきたので、それもまたいい準備になりました。

──今回のツアーに向けて、花澤さん個人の目標はありますか?

なんだろう……あ、YAZAWA。YAZAWA感ですかね。

──YAZAWA感(笑)。武道館でのパフォーマンスの参考にライブ映像を?

はい。最近ずっと矢沢(永吉)さんのライブDVDを観てるんですけど、本当に素晴らしくて! 最初に観たときに思わず涙が出てきちゃって。私にとって音楽で「我を忘れる」とはこういうことだなと思って、矢沢さんのように歌えたらいいなあと思いながらずっと観ています。矢沢さんはすごくカリスマ性があるんですけど、お客さんに対してすごく真摯なんですよ。ステージとお客さんの関係性がすごくよくて。私もあんなふうに幸せなライブができるようにがんばります。

ニューアルバム「Blue Avenue」 / 2015年4月22日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 4104円 / SVWC-70064~5
通常盤 [CD] / 3240円 / SVWC-70066
CD収録曲
  1. I ♥ NEW DAY !
    [作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利 / ホーンアレンジ:村田陽一]
  2. ほほ笑みモード
    [作詞:岩里祐穂 / 作曲・編曲:Studio Apartment]
  3. Nobody Knows
    [作詞:岩里祐穂 / 作曲:北川勝利 / 編曲:北園みなみ、北川勝利]
  4. ブルーベリーナイト
    [作詞・作曲・編曲:宮川弾]
  5. Trace
    [作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:mito]
  6. こきゅうとす
    [作詞・作曲:ティカ・α / 編曲:やくしまるえつこ、山口元輝]
  7. Night And Day
    [作詞・作曲・編曲:北川勝利 / ホーンアレンジ:北園みなみ]
  8. タップダンスの音が聴こえてきたら
    [作詞:花澤香菜 / 作・編曲:北川勝利]
  9. We Are So in Love
    [作詞・作曲・編曲:矢野博康]
  10. プール
    [作詞:花澤香菜 / 作曲:北川勝利 / 編曲:zakbee & Hatayoung、北川勝利]
  11. Dream a Dream
    [作詞:岩里祐穂 / 作曲:Andy Connell、Corinne Drewery(Swing Out Sister)/ 編曲:Andy Connell / Produced by Swing Out Sister]
  12. マジカル・ファンタジー・ツアー
    [作詞・作曲・編曲:中塚武]
  13. 君がいなくちゃだめなんだ
    [作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:北川勝利 / ストリングスアレンジ:宮川弾]
  14. Blue Avenue を探して
    [作詞:西寺郷太 / 作・編曲:奥田健介]
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • Special Avenue(ドキュメンタリー)
花澤香菜(ハナザワカナ)

花澤香菜

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には25曲入りの2枚組アルバム「25」を発表。4月からは4都市を回る初の全国ツアー「花澤香菜 live 2014 "25"」を行った。2015年2月には通算8枚目のシングル「君がいなくちゃだめなんだ」をリリースし、同年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。5月からは初の東京・日本武道館ワンマンを含むライブツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」を行う。