go!go!vanillas「MAKE YOUR DREAM」特集|牧達弥が片岡健太、川上洋平とボーカリスト対談 (2/4)

光と影

──2バンドの楽曲は、ポップな曲であってもただ明るいだけじゃないし、ツラいことがあっても最後に光が見えるような歌詞が多いですよね。光と影、どちらもちゃんと描かれていて。そこも似ているところかなと思いました。

 俺は映画でもヒューマンドラマが好きだから、最終的には光が欲しくて。そこで闇というか、自分や世の中のネガティブなことに対して理解がないと、ただのおバカさんになっちゃうじゃん。だから喜怒哀楽の怒哀はちゃんと伝えつつも、その中でどう次の一歩を踏み出すかをしっかり書いて終わりたい。それが自分にとっての救いにもなるから。

牧達弥(go!go!vanillas)

牧達弥(go!go!vanillas)

片岡 そうだよね。闇を表現するためには光が必要で、逆に光を表現するためには闇や影が必要。それを人としてちゃんと理解してるのは、お互いにいろいろ苦難を乗り越えてバンドを続けてきたからだと思う。1枚目からドカーンと売れてるわけじゃないしさ。

 そうだよね。

片岡 苦汁や辛酸を舐めて、現実や社会というものを知って、そこに過度な期待も過度な悲観もしすぎないという。その天秤のバランスは似てるのかもしれないし、それを心に持ってる人じゃないと、長く曲は書けないと思う。光しか書けない、闇しか書けないってなると、結局どっちかに取り込まれて自分がいなくなっちゃうから。

 意外と光を表現し続けたほうが闇だったりするからね。

片岡 光も影もどっちも持ってないと、本当に飲み込まれるよね、詞曲って。「光を書かなきゃ!」って、光キャラになろうとするとどこかで無理が生じるから。

 みんなが求めてるからそうしなきゃいけないと思い始めると、もう自分がわからなくなるからね。

片岡 うん。「牧さんはこういう人ですよね?」と言われて、本音で「いや、違うんだよ」と言えるかどうか。人の想像通りで居続けると仮面を何重にも被ってないといけなくなるからさ。

 わかる。絶対言えたほうがいい。

──でも、ありのままでいるというのも難しくないですか?

片岡 彼はできますよ。その才能ありますから(笑)。

 ははは。すぐ物事を忘れちゃうから。でも、素でいられるようにしようと思ったタイミングはあって。それはプリティの事故のときなんだよね。バンドを続けることにどこか慣れみたいなものがあった中で、この4人でバンドをやれないかもしれないっていうアクシデントが起きた。で、プリティが帰ってきたときに、バンドをやれる幸せに改めて気付いた。そのときに、自分を出し惜しみしてたら俺が存在してる理由がないってすごく感じて。

片岡 あのあたりからバニラズはすごく変わったよね。

 うん。俺自身、表現者として魅力的な人になりたいと思った。そのためには飾らないで自分のど真ん中をちゃんと見せていこうと思って。そしたら気が楽になったんだよね。それまではストレスで体調崩したりしてたけど、そういうのもなくなった。

片岡 わかるかもしれない。俺は2015年に声が出なくなってバンドの活動を休止して。それまで虚勢を張ってたことに気付いた。そもそもsumikaは結成当初、いろいろ目標設定して、2年間で1つでも達成できなかったらバンドは趣味にしようというルールで始めたの。

 そうだったんだ。

片岡 で、その目標を全部クリアして、「バンドで生きていくんだ」と思った矢先に体を壊して。そこで自分を責めたんだけど、自分に何が足りてないのか考えた挙げ句、結局、自己愛だなと気付いたんだよね。自分がみんなを引っ張らなきゃいけない、誰かのために何かをしなきゃいけないと思うばかりで、一番身近にいる自分を置き去りにしてた。それで愛がないとダメだと思って「Lovers」を作って、やっと自分を大事にすることができるようになった。虚勢を張らずにありのままの自分を愛せるようになってからは、メンバー間の絆も深まったし、お客さんとの関係性も変わっていった気がする。sumikaもバニラズもトラブルがあったことで、同じように気付けていったんだろうね。

片岡健太(sumika)

片岡健太(sumika)

──しかも2バンドともそういうトラブルをタフに乗り越えてきてますよね。バニラズはプリティさんの不在時に3人だけでツアーを回り、sumikaも2023年にとても悲しい出来事に見舞われましたけど、バンドの動きを止めることなく進む決意をして。

 窮地に陥ったとき、1人だったら立ち上がれないかもしれないけど、バンドは同じように悲しみや喜びを分かち合える人がいるから、その大切さを再確認できるし、結束力が上がるよね。その出来事1つを捉えるとすごく悲しいことかもしれないけど、今となってはバンドに与えられた試練というか。どう乗り越えるか期待されてるんじゃないか、と思いながら俺らは動いていたような気はする。

片岡 できることならそういうトラブルは避けたいんだけどね。

 そのためにやってるわけじゃないからね。

片岡 でも、起こってしまったことは変えることができなくて。その事象や自分の感情とどう向き合っていくか考えたときに、自分が好きな自分でいられるかということが大事だなと思った。つまりハッピーエンドでありたいんだよね。つらいことがあったときに辞めたほうがハッピーエンドだと思うならそれもありだけど、2023年に関してはそうじゃないと思ったので続ける選択をした。その結果、今日こうして対談できてるし、一緒にイベントをやれる未来についてワクワクしながら話せてるわけで。

 止まらないことがすごいと言われるけど、止まったほうがキツくない?

片岡 ああ、わかる気がする。

 僕らは決まってたライブはサポートを迎えてやろうと即決して動き続けたけど、1回止まったらその瞬間に考えちゃうじゃん。

片岡 つらいことって冷凍保存されちゃうから、熱を循環させて解凍していくしかなくて。そのためには自分たちで動いて、風を生み出すしかないと思ってるんだよね。

左から牧達弥(go!go!vanillas)、片岡健太(sumika)。

左から牧達弥(go!go!vanillas)、片岡健太(sumika)。

バニラズのことをお客さん全員が好きになって帰ってほしい

──いろんな出来事があったけど、お互いに続ける選択をしたことで、こうやって再び共演できる機会が巡ってきたわけで、それが何よりも喜ばしいです。ライブという場において、大事にしていることや意識していることはありますか?

 やっぱり個人個人の爆発力かな。僕らの場合は、それぞれ個性が強いから、お互いのよさをガーッと出せると、それが多様性のある1つの塊として幸福感につながると思っていて。ちょっと(ジェット)セイヤとかは自由すぎるけど(笑)。

片岡 傍から見てるとすごいメンバーと組んでるなと思うよ。

 昔はけっこうそれで衝突することもあったんよ。「好き放題やりすぎだろお前!」って。でもそういう個性的なメンバーの爆発力を自分も見たいんだよね。

片岡 俺らは与えられた持ち時間をオーバーしない、押さないということですかね。

 大人!(笑)

片岡 はははは。まあ、今日が人生最後のライブになっても後悔しないように、というのは毎回思いながらやってる。昨日失敗したところを今日はできるかなとか、今日やりきって明日声が出なくなったらどうしようとか、どうしてもいろいろ気にしちゃうけど、それは「今」見てくれてる人に対してめちゃくちゃ失礼な気がするから、余計な雑念を捨てることに注力してます。

牧達弥(go!go!vanillas)

牧達弥(go!go!vanillas)

片岡健太(sumika)

片岡健太(sumika)

──それでは3月の幕張メッセ公演はどんな1日にしたいですか?

片岡 今回みたいな対バン形式のイベントでは、やっぱり呼んでくれた人たち……今回ならバニラズのことをお客さん全員が好きになって帰ってほしいよね。

 もう健ちゃん、大好き(笑)。

片岡 はははは。その過程で僕らは何をするべきかというと、めちゃくちゃヤバいライブをして「sumika最高じゃん!」というのを見せ切る。そしたらsumikaがマックスでやっても出せないバニラズのよさが見えてくると思ってて。対バンだから華を添えようとかではなく、出し尽くすことが誠意だと思うから。

 もう本当ソワソワする(笑)。今回は当然僕らがトリを務めるわけで、このヤバい6バンドのライブを全部観たあとにライブするって考えるだけでヤバい。昔ならそこで硬くなってたかもしれないけど、今はワクワクできるくらい自分たちの音楽を確立できている自負があるから。それに今回呼ばせてもらった6組は純粋に僕らがすごく好きというのもあるけど、みんなバニラズとは違うものを持ってたり、ちゃんと芯がある人たちばかりだから、どういうライブを観せてくれるんだろうとすごく楽しみ。そのうえでこの対バンライブに出てよかったと思ってほしいので、僕らもバシッとぶちかましたいね。

──楽しみにしています。幕張にプールがないことだけが残念ですね。

 作りますか。子供用のビニールプールで。

片岡 まあまあ寒いよ。

 だからチャプンって入ろう。

片岡 足だけ浸けて。

 それ足湯じゃん!(笑)

左から牧達弥(go!go!vanillas)、片岡健太(sumika)。

左から牧達弥(go!go!vanillas)、片岡健太(sumika)。