2023年にインディーズデビュー10周年、今年2024年にメジャーデビュー10周年を迎えたgo!go!vanillas。彼らが2つのアニバーサリーイヤーを祝うライブを3月9日と10日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにて行う。幕張公演の初日は「MAKE MY DREAM」と銘打ったキャリア最大規模のワンマンライブ、2日目は「MAKE YOUR DREAM」と題した対バン企画だ。
「MAKE YOUR DREAM」にはバニラズがこれまでの活動の中で競演してきた、[Alexandros]、sumika、04 Limited Sazabys、My Hair is Bad、マカロニえんぴつ、UNISON SQUARE GARDENの6バンドが参加。ライブを通してバニラズの周年を祝福する。このライブの開催を記念して、音楽ナタリーでは連載企画を展開。バニラズの各メンバーと、対バン相手の同じパートのメンバーによる対談 / 鼎談企画を実施してきた。この連載企画のラストとなる第4弾では、牧達弥(Vo, G)がsumikaの片岡健太(Vo, G)、[Alexandros]の川上洋平(Vo, G)の2人とそれぞれ対談。お互いの共通項やボーカリストとしての矜持を語ってもらった。
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取材・文 / 竹内陽香(音楽と人)撮影 / NORBERTO RUBEN
ライブ情報
DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL「MAKE MY DREAM」
2024年3月9日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
<出演者>
go!go!vanillas
DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL「MAKE YOUR DREAM」
2024年3月10日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
<出演者>
go!go!vanillas / [Alexandros] / sumika / 04 Limited Sazabys / My Hair is Bad / マカロニえんぴつ / UNISON SQUARE GARDEN
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変化を恐れない2組
──初めて共演したのは、2016年7月にUSEN STUDIO COAST(旧:新木場STUDIO COAST。2022年1月に閉館)で行われたCzecho No Republicの主催イベント「Czecho No Republic presents ドリームシャワー2016」だったそうですが、当時のことは覚えてますか?
片岡健太(sumika) 出会ったその日に、楽屋エリアにあるプールへ一緒に飛び込んだよね。
牧達弥(go!go!vanillas) 飛び込んだ! 懐かしい!
片岡 でもその前からバニラズのことは知ってたよ。
牧 え、本当?
片岡 Shibuya Milkywayで働いてたでしょ?
牧 うん。バイトしてた。
片岡 Milkywayの店長と知り合いで、sumikaの初ライブはMilkywayだったんだよね。そのときに「バンドのボーカルの子が働いていて、go!go!vanillasって言うんだ」と教えてもらって、聴いたらめちゃくちゃいいバンドで。だからその頃から一方的に知ってた。
牧 そうだったんだ! 俺はチェコ(Czecho No Republic)の武井(優心)さんと仲よかったから「sumikaってバンド、超いいよ」と聞いてて。ルーツミュージックとかもやってたからずっと会いたいなと思っていて、新木場の日にようやく会えた。そしたらみんなめっちゃ元気で(笑)。
片岡 はははは。どんな第一印象よ!
牧 いや、当時はみんなまだ若かったから。
片岡 今も若いよ(笑)。牧は自然と目がいく華のあるボーカリストだなと思っていて。ほかの3人もキャラが立ってるし、フォワードが集まっている印象だったな。
牧 全員攻め、みたいな。
片岡 そういうバンドは決して多くはないから、火の玉みたいですごくイケてるなと思った。
──初めて会った日に一緒にプールへ飛び込むぐらいの仲になった理由はなんだったんでしょう。
片岡 まず俺がバニラズの音楽をすごく好きだったのね。それで「仲よくなろうよ」と猛烈にアタックして(笑)。
牧 どこか近いものを感じてくれたんだろうね。そこですごく仲よくなって、お互いのツアーにも呼び合うようになった。ツアー先で話したり飲んだりする中で、音楽的なアプローチは違えど、常にワクワクしながら新しい自分たちを提示してるところに俺もシンパシーを感じて。
片岡 出会った当時から「変わっていくことに寛容である」という思いはお互い顕著にあったよね。実際に2015年とか2016年以前と以降の俺らの音源を聴いたら、音像が全然違うし。
牧 違うよね。バンドってあまり変化を求めないというか、古きよき時代を大事にする人たちが多い気がしていて。でも僕らはバンドの変化について考えるタイプ。sumikaとはそういう、「音楽で自分たちならではの新しい表現をしたい」という考え方が似ていたから、すぐ仲よくなれたんだと思う。sumikaは変化や新しいことに躊躇がないから、勇気をもらってたよ。
稀有な片岡、シルクのような質感の牧
──お互いボーカリストとしてはどんなふうに見ていますか?
牧 やっぱり健ちゃんは声が太いのが強みだと思う。どんなオケにも負けない歌声。野外フェスとかだと特に音が散りやすいけど、どこにいてもsumikaがライブをやってるとわかるから、それはすごい。
片岡 俺らが活動を始めた頃は、ハイトーンのボーカリストが多かったんだよね。俺はそのトレンドに乗れなかったタイプだから、そういうふうに褒めてくれるのはうれしい。
牧 すごく稀有だと思う。普通に話していても、めっちゃいい声やなと思うもん。
片岡 デートでも行く?
牧 お願いします!(笑)
片岡 ははははは。牧の歌はシルクっぽい質感があるよね。高音のときにキンキンこない。それって大事なことだと思っていて。バニラズは音符が細かい曲がけっこう多くて、角張ってると聴きづらいと思うんだよね。そこでちゃんとレガートして聴かせるのは、牧の声あってこそだなと。
牧 ありがとうございます。なんか恥ずかしいね、こういうの(笑)。
片岡 で、その影響を受けつつも自分の歌い方で攻める(柳沢)進太郎もいて。バンド内で相乗効果を高めている。うちのキーボード(小川貴之)も歌うから、そこも共通点だなと思う。
牧 前のギターが抜けてどうしようか考えたときに、ギターが超絶うまいギタリストよりも、歌えるギタリストを入れたかったんだよね。The Beatlesが好きだったから、ジョージ(・ハリスン)、ポール(・マッカートニー)、ジョン(・レノン)みたいなイメージ。で、進太郎は当時別のバンドでボーカルをやっていて、対バンしたときにいいなと思ってたから誘ったという経緯があって。だからハーモニーとか歌の気持ちよさは意識してるかも。
片岡 バニラズを見てると、進太郎が牧のこと大好きなのがめっちゃ伝わるんだよ。俺たちで言うと、小川さんはあんまり俺のこと好きじゃないんだろうなって。
牧 そんなことない(笑)。
片岡 ははは。なんていうか、おがりん(小川)も進太郎もボーカルをリスペクトしてるだろうけど、アプローチが全然違う気がしていて。進太郎は牧のほうに寄っていくというか、1本のボーカルマイクを使って2人で歌うイメージ。おがりんは違うマイクで歌って、逆張りすることで広がりをもたせようとしてる。どっちがいい悪いじゃなくて、バニラズとsumikaでまったく違うアプローチをしてるのが面白い。だからバニラズのライブを観てると、小川さんのことを思い浮かべるんだよね。
牧 しかし、おがりんは歌うまいよね。この前、フェスで観たけどびっくりした。
片岡 うまいんですよ、うちの小川は。もともと彼も別のバンドでボーカリストだったから。
牧 あ、そうなんだ。じゃあそこも一緒なんだね。
お互いの好きな曲
──バニラズもsumikaもメインコンポーザーは牧さんと片岡さんが担っていますが、メンバー全員が作曲できるという共通点もありますね。お互いのバンドの詞曲について注目している点などはありますか?
牧 作詞もそうだけど、sumikaは作曲がヤバい。構成の作り方がうまいよね。めっちゃ滑らかに、予想外の展開でサビを聴かせたりするから、「これどこで転調したん?」ってよく聴き直してるもん。俺には絶対できない。
片岡 ありがとう。牧の曲は心象風景がちゃんと見えるというか、自分がイメージしているものをお客さんに共有する力が強いと思っていて。意図的にやっているのか、素でやってるのかはわからないけど、みんなが同じ景色を見れるから、ライブで客席とステージの一体感が自然と生まれやすい詞曲だなと思う。
牧 無意識だけど、ファンの人が増えてきたときに、一度に多くの人に伝わる曲のほうがいいなとは思った。音源は好きなタイミングで自分の生活と照らし合わせて聴いてくれたらいいけど、ライブは1つの場所に集まってるからなおさら。
片岡 牧の曲を聴いてると、そのときのモードがわかるよ。
牧 今こんな感じだろうなって?
片岡 そう。ミュージシャンとしての葛藤や私生活で感じてることとか、今のマインドが曲から垣間見える。
牧 ええ、恥ずかしいー(笑)。
片岡 いいことだよ(笑)。
──お互いのバンドで好きな曲を挙げるとすると、どれになりますか?
牧 僕は「Glitter」ですね。sumikaの音楽的なアプローチが好みで、この曲はカントリー調だけど今の時代感もちゃんとあるし、3分くらいという長さもちょうどいいし、何よりハッピーだよね。あと「あの手、この手」も好き。
片岡 コアなところくるなー。
牧 あのジャズの雰囲気、すごく好き。俺らはシンコペーションをやりがちなんだけど、sumikaもそうだと思っていて。スウィングというか跳ねるのが好きじゃん、2バンドとも。
片岡 確かに。シンコペ癖も共通点(笑)。
牧 1拍前に行きたくなっちゃう(笑)。そういうsumikaのソースがわかりやすく盛り込まれてる曲だなと思う。
片岡 俺は「デッドマンズチェイス」かな。最初に言ったバニラズの全員フォワード感がむちゃくちゃわかりやすく出てる曲だし、ライブでは4人ともピンスポを浴びているからステージが自然と広がる感じがして、次にステージに出づらい!
牧 あれは肉体的にもキツいけどね。
片岡 でも、ああいうことができるバンドはほかにいないよ。
牧 プリティみたいに緊張しいなメンバーもいるから、フェスとか対バンのときにやると、いい起爆剤になるんだよね。解放の儀、みたいな(笑)。
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牧達弥と片岡健太が語る「光と影」