現場に“知る人ぞ知る曲”は不要
──アルバムには「DAYS(#29)」「GRANDSLAM」の再録バージョンも収録されています。このタイミングで再録しようと思ったのはどうしてですか?
「DAYS(#29)」は「島生民」(2003年12月発表のアルバム)、「GRANDSLAM」は「36.29N,139.00E」(2004年10月発表のアルバム)という作品にそれぞれ収録されていたんだけど、どっちも今は廃盤になっていて。でも、今も尺の長いライブでこの2曲はときどき演奏してる。そうするとお客さんに「1万5000円で中古のアルバムを買いました!」とか言われることがあって、そのたびに切ない気持ちになるんだよね。知る人ぞ知る曲として演奏していてもバンドの独りよがりだと思うし。再録でもいいからちゃんとパッケージとして届けたうえで、現場で試合をしたいから。
──現メンバーでの再録はいかがでしたか?
新メンバーのPON(Dr)はとにかくいろんなことが達者で。しかも俺らと違って田舎のタイム感で生きてないから、そういう面でも今はバンドとしてすごくバランスが取れてると思う。だから再録も面白かったよ。ただ、収録曲が14曲になるのは多いなと思ったけど(笑)。もともと再録の曲はアルバムに入れるか決まってなくて、とりあえず時間が取れたからレコーディングしておいただけで。でもアルバムのリリースが当初の6月から7月に延期になっちゃったし、「だったら全部入れよう!」という話になったんだよね。
──リリースしてツアーをやって、ツアーが終わったら次のリリースがあって……といういつものスピード感だったらリスナーも14曲を消化しきれないかもしれませんが、今の時期はゆっくり聴く時間がありますからね。
確かに。そう考えたらいい時代だな。たくさん聴いてほしい。
──アルバム初回限定盤のDVDには、今年2月に東京・TSUTAYA O-EASTで行われたライブツアー「"FLARE / Fire" TOUR 2019」最終公演の模様が収められます。
すごかったよね、あの日。今回、このDVDに収録するために映像を見返してたんだけど「あの頃に戻りてえなあ」って、そればっかり思ったね。数カ月前まではこういうことが普通にできてたんだよ。信じられないよね。人様の上を歩いてさ、もう論外だよね(笑)。
──三密どころの話じゃないですよね。
ね(笑)。このEAST公演のあとに3本ライブをやって自粛に入った。だからほぼ最新のライブが収められてるってことになるのかな。
また解散できない理由ができてしまった
──改めて「VINTAGE」はどんなアルバムになったと思いますか?
このアルバムに入っているのは“beforeコロナ”の最後の言葉たち。そういう意味で、いいものができたと思う。残せてよかったな。
──今これからアルバムを作ったら、また違うものができあがるかもしれませんね。
全然違うだろうね。俺らだけじゃなくて、ものを作る人みんな、これから作る作品は今までとは違うものになるんじゃないかな。でもアルバムって、そういうものだと思うんだよね。そのときに自分が何を考えていたか、ということをつづっていくもの。
──それこそ茂木さんは「呉々も日の暮れと」を聴くたびに当時のことを思い出すでしょうしね。
そうだよ。あまりにも身の上をさらけ出している曲だから、もしかしたらリリースすべきじゃないのかなとも思ったんだけど……曲を作るという行為はそういうことなんだよね。「VINTAGE」は“beforeコロナ”の俺が何を考えていたか、どんな顔で笑っていたか、どんなことで泣いていたかが詰まったアルバムになったと思う。
──先ほど「『コロナがあったから、これができた』という結果を生み出す必要がある」とおっしゃっていましたが、これからのG-FREAK FACTORYがどんな作品を生み出していくのかも楽しみです。
そういう意味では、コロナのせいでG-FREAK FACTORYがまた解散できない理由ができてしまった(笑)。「やってやろう」というスイッチが入っちゃったんだよね。続けることでどんな結果が待っているのかは想像もつかないんだけど、だからこそ面白いんだと思うし。そう考えるとまだやめられないよね。
──G-FREAK FACTORYはそういう意味でも若いバンドにとっての希望なんだろうなと思います。
あははは(笑)。でも本当に、俺らみたいな地方のおっさんバンドがCDをリリースしてツアーを回って……というしっかりとした活動ができて、なおかつ大きなことができたら、いろんな人たちに希望を与えられるんだろうなとは思ってるよ。だからやっぱり、バンドをしっかり続けていかないとな。