音楽ナタリー Power Push - 藤田麻衣子

12のラブソングが織り成す とりどりの「恋愛小説」

男性が主人公のときは理想が入る

──ここからはハッピーな恋愛を歌った3曲のお話を聞きたいと思います。「White Christmas」は男性目線の1曲ですね。

藤田麻衣子

男性が主人公のときは、私の理想が入ってしまいますね。「ひとりの寂しさ知ってるから」っていう歌詞があるんですけど、私自身も1人の時間を知ってるのって大事だなって思うんですよね。1人で寂しい時間があると、誰かとお付き合いができたときにちゃんと感謝ができる。途切れずに付き合ってたら、ありがたみが薄れますよね。それはそれでいいと思うんですけど、私はちゃんと1人の時間を知ってる人が好きだったりするんですね。ありがたみとか、それこそ苦しみも知ってる人がいいなって思ってて。

──なるほど。曲の中には「ケーキが倒れてしまわぬよう そっと気にかけるように君を大切に守る」という優しい眼差しも書かれています。

以前、大切な人にケーキを買ったときに、何回も倒れてないか確認したことがあって。人ゴミを歩いていてちょっと当たっただけでケーキが倒れるかもって、ハラハラして持って帰ったことがあったんですね。そのときはケーキのことを大事にしてたんですけど、これくらい恋人にも大事に思われたいなって、そのケーキに対して思ったんです(笑)。それを歌詞にしました。

──女心の勉強になります。

やっぱり、気にかけてほしいんですよね。たまには心の蓋を開けて様子を見てほしい(笑)。

──最後の2曲「家族になれる人」「伝えたい言葉」は恋よりも愛をテーマにしたラブソングになってますね。

私の周りでも結婚した人が多いので、ご夫婦のところに1人で遊びに行く機会も増えたんですけど、まだ結婚してない私から見ると夫婦ってすごいなって思うんですよね。親子とは違って、夫婦は血がつながってないのに、お互いのことを一番信頼し合っていたり、すごく大事にしていますよね。自分はまだ「これが運命の恋だ!」とか思って、ドタバタしてる(笑)。これまでも何度か一時的に燃え上がって、結婚したいなって思ってきたりしたんですけど、そういうのじゃなく、血のつながりがなくても相手のことを受け入れたり、思いやったりできる。最近になって身近にいる人を見て感じたことなんですけど。「家族になれる」くらい誰かを好きになれるってすごいなって思って書いた曲です。私も「将来も私はこの人を受け入れていけるな」っていう人が見つかったら結婚したいなってすごく思います。

運命の人はいっぱいいるんだな

藤田麻衣子

──ここ10年で藤田さんの恋愛観は変化してますか? 例えば「家族になれる人」には相手に対する思いやりを感じますし、過去の曲のように「好き好き」って一方的に気持ちを伝えるだけじゃなくなっている気がします。

それはすごくうれしいですね。私、昔はひとりよがりの塊で。求めるし、押し付けるしっていう歌しか書けなくて(笑)。ずっと周りの人に注意されてたんですね。それの何が悪いんだっていう感じで書いてきたんですが、最近少しずつ変わってきて……。思いやりがあるって言っていただけるのはすごくうれしいです。

──「自分史上最大限に許せてると思う」と歌ってますし。

そうですよね。確かに、許すという言葉はあんまり昔は書かなかったかもしれないです。ちょっと攻撃性が減ったかな。あははは(笑)。

──大人になってきた?

はい。あと大人になって、運命の人はいっぱいいるんだなって思うようになって。

──運命の人は人生で1人じゃないということ?

そうなんです。恋をするたびに、この人が運命の人だって思うんですよ。でも、別れちゃうじゃないですか。20代前半のときは「これが運命の人だ、もうあとはないんだ」って思ってたけど、30を過ぎると「あのときも運命だったけど、あの人とは結ばれなかったな」と思うようになって。だから、運命の人にまだ出会ってないんじゃなく、運命の人って何人もいるんだっていう結論に達しました(笑)。結ばれなくても、それは運命だったって思いますね。

──最後に12編の恋愛短編小説がまとまったアルバムが完成した感想を聞かせてください。

藤田麻衣子

これまでに通算7枚のアルバムを出してきたんですけど、「最新のアルバムが代表作です」って言えるものになったと思っています。自分の中で楽しんだり、アレンジにこだわったものもありますし、10年前でも歌ってたかもしれない普遍的な歌も入れられた。大人になって歌詞は少し優しくなったけど(笑)、歌詞から書くスタイルは変わらないし、ピアノの音を大事にしたサウンドも変わってない。あとは、このアルバムが皆さんに届いて、どんな心境を重ねて聴いていただけるのか楽しみです。きっと、皆さん自身が主役になれる歌があると思うんですね。自分の過去、今の自分、周りの友達……いろんな状況に当てはめて聴いてもらえるとうれしいですし、今はわからなくても、数年後に聴いたら主人公の気持ちがわかるかもしれないので、長く皆さんの人生に寄り添えるようなアルバムになったらいいなと思っています。

ニューアルバム「恋愛小説」 / 2015年12月2日発売 / Victor Entertainment
「恋愛小説」初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD+グッズ] 5724円 / VIZL-913
Amazon.co.jp限定 初回限定盤 [2CD+DVD+グッズ] 5724円 / VIZL-913
「恋愛小説」通常盤
通常盤 [CD] 3240円 / VICL-64480
Amazon.co.jp限定 通常盤 [CD2枚組]3240円 / VICL-64480
CD収録曲
  1. you
  2. 恋時雨
  3. カモフラージュ
  4. おぼろ月
  5. 井の頭線
  6. White Christmas
  7. 魔法使いが現れそうな夜
  8. あなたに恋して
  9. 火曜日、聞かなきゃよかった話
  10. この恋が終わるまで
  11. 家族になれる人
  12. 伝えたい言葉
初回限定盤DVD収録内容

「弦楽四重奏 Live Tour 2015」東京公演のライブ映像60分以上収録

  1. この恋のストーリー
  2. Flower & Butterfly
  3. きっと
  4. 遠くへ
  5. ベイブリッジ
  6. 恋に落ちて
  7. 1%
  8. あなたに恋して
  9. 恋がしたくなるメドレー
    ~胸が熱い・高鳴る・運命の人・水風船・瞬間~
  10. 未来を
  1. En1. 伝えたい言葉
  2. En2. おぼろ月
藤田麻衣子(フジタマイコ)
藤田麻衣子

愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブでファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースし、11月より全国ツアー「藤田麻衣子 LIVE TOUR 2014-2015 ~one way~」を実施した。2015年5月にニューシングル「おぼろ月」を発表し、12月にメジャー2作目となるアルバム「恋愛小説」を発売した。