24時間、音楽がやりたいなって

──藤田さんは子供の頃から音楽が好きだったんですか？

そうですね。学生時代はお気に入りの曲を何パートかに分けてアカペラアレンジして、それを多重録音して遊んでるような子でした。ベースから順に重ねて、最後に何層にも重なった自分のアカペラオケで主旋を歌うのが幸せ、みたいな（笑）。

──10代からそんな職人のような遊びをしてたんですね。

単純に声を重ねたものを聴くのが好きなんです。友達とカラオケに行くと自然にハモったりしてましたし。今も歌のコーラスパートを作るのは大好きですね。

──本格的にシンガーソングライターを目指したきっかけは？

高校を卒業して歯科衛生士の専門学校に通っていたんですが、地元の名古屋市が年に一度やっている市民ミュージカルのようなものがあって。そのオーディションを受けてみることにしたんです。もともとミュージカルが好きだったし、学生最後の年の思い出になればということで。そしたらアンサンブルで合格することができて、本気でその芸の世界を目指している人たちと出会って。歌やダンス、芝居に24時間没頭しているような人たちと触れ合い、私も「24時間、音楽がやりたい」って今まで感じたことのない悔しい気持ちになったんです。

──そこで自分の本当に気持ちに気付けたと。

はい。それまで大半の時間を歯の勉強に費やしてきたけど、私、こんなに音楽やりたかったんだって。アンサンブルなので4つくらいのチョイ役とコーラス隊の一部だったんですけど、「いつか1人で歌ってみたい」と思ったし、生のオーケストラに触れて、この演奏をバックにいつか歌うことができたらなって。私、ディズニー映画の「美女と野獣」が好きなんですよ。初めて観たとき、オーケストラのBGMに電流が走ったような気持ちになって、すごくきれいな音楽と感情表現に魅せられて。そこからオーケストラにも心惹かれるようになりました。だから普段作る曲にはどこかディズニーっぽい部分を入れちゃうことがよくありますね。

自分の気持ちを歌にして友達に聴かせていた

──ミュージカルへの出演を機に気持ちが変わったとのことですが、その後はどういう進路を進みましたか？

歯科衛生士の国家資格は取ったんですが、就職は地元の名古屋ではなく東京に変更しました。東京の歯医者さんで働きつつ、音楽を目指していこうと。

──なるほど。作詞作曲を始めたのもその頃から？

ミュージカルに出て感情が動いたときからですね。私、普段から日々の出来事や恋愛の話をよく友達にするんです。で、1回目はみんな聞いてくれるんですけど、2回目、3回目って同じことを話すと「また言ってるの？」みたいな。だからあるとき、言いたいことをバーッて書き出して、メロディを付けて曲にしたんですよ。それをMDに録音して渡したら「あの曲何回も聴いてるよ」って言われて、“これだ！”と。

──曲だったら何回も聴いてもらえる……名案が浮かびましたね。

もう、やっと捌け口が見つかった！って感じでした（笑）。しかも「あの曲いいね」って言ってもらえると、うれしくてまた作るじゃないですか。そうやって歌を書き始めてから心のバランスがとれるようになりました。

──ということは、曲作りはいつも詞が先？

はい。今もずっとそうです。もう何年も曲を書いてて、メロディから先に作ってみようとしたこともあるんですけど全然できなくて。曖昧な状態の詞を当てはめて鍵盤に向かってもダメなんです。私の場合、本当に気持ちがそこにないと何も生まれないみたいですね。

──歌詞はやはり実体験が多いんですか？

書き始めた当時はまずは実体験を書き出して……という感じでした。今は友達の話や想像で書いていくこともあります。