過去の自分たちに宛てた「文-2024-」
──ラストが結成してからの10年間の歩みを歌った「文-2024-」で締まるのがいいですよね。
TOPHAMHAT-KYO 原曲の「文」は、初めてDYESと作った曲で。実はDYESがほかの人に渡すつもりで作っていたトラックだったんですよ。でも、それを俺が聴いて「このトラックめっちゃいいじゃん」と言ってぶん取ったという(笑)。
DYES アハハハ!
TOPHAMHAT-KYO そしたらこのトラックを渡すはずだった人にdisられて、こっちはこっちでdisり返して。
──どう考えてもTOPHAMHAT-KYOさんが悪いですけどね。
TOPHAMHAT-KYO ハハハ。そんなこんながあって、FAKEを組む前に初めて作った「文」が生まれて。今年は10周年だからエモい曲を作りたかったんです。DYESに「まんま同じテイストでいいから、新しい『文』のトラックを作ってくれ」とお願いしました。これは10年前の、まだ芽が出ていなかった自分たちに対してのメッセージソングですね。今俺たちは幸せだからって。方向性や音楽との向き合い方とか何も間違っていないから、やり続けていけばこんな未来が待ってるよ、と。過去の自分に宛てた手紙というコンセプトで書きました。
DYES この曲はリリックのテーマありきでトラックを作ったという、今までにないパターンでしたね。
──これまでの楽曲と違って、TOPHAMHAT-KYOさんがまっすぐ歌っている印象を受けました。
TOPHAMHAT-KYO そうですね。熱量はめちゃめちゃ入れたと思いますし、この曲は声を張り上げているポイントが多い。そうすると熱量が伝わりやすいし、10年前からFAKEを聴いてくれている人たちが聴いたら、喜んでくれるかなという思いもありました。
──フックに「拝啓俺等へ」というフレーズがありますが、今のお二人から見て当時の自分たちはどう見えていますか?
TOPHAMHAT-KYO よく駆け出しの頃を「冬の時代」と言うじゃないですか。でも俺たちは、そこまで冬じゃなかったと思っていて。「爽籟」は秋の季語なんですね。冬の時代のどん底という感じではないけど、秋くらいの厳しさはありました。あと「道なき道は Never end」に関しては、当初は何も未来が見えないと思っていたし、今もその状況は別に変わらなくて。昔の絶望的に思っていたことは、今も変わらないけど「なんとかやれてるよ」と昔の自分たちに投げかけている。「数多の声が Say our name」には、今やいろんな人たちがFAKE TYPE.の名前を知ってくれているし、ライブに出ると名前を呼んでくれているよ、って。それと「拝啓俺等へ 気合いで粘れ」ですよね。活動を続けるうえで大切なのはそれ以上でもそれ以下でもないぞ、っていう。
DYES “今”という未来は、当時の俺らにはまったく見えていなかったよね。例えばYouTubeのチャンネル登録者数にしても、10万人いけばいいなと思っていたけど、今は思い描いてた未来よりも素晴らしくて。
TOPHAMHAT-KYO 予想していた以上の生活を送れているよね。
DYES だからこそ、このリリックが出てきたと思う。
──そもそも10年前にエレクトロスウィングを取り入れているアーティストは、日本にどれくらいいたんでしょうね?
TOPHAMHAT-KYO 全然いなかったよね。
DYES 自分の知る限りではいなかったですね。本当に僕らしかいなかったです。
──最近はJ-POPのシーンでも、エレクトロスウィングの曲を歌う人が増えましたよね。
DYES うれしいことにFAKEの意志を感じるエレクトロスウィングを作ってくれている方も増えたので、ニヤニヤしながら見守っています(笑)。
──「文-2024-」を聴くと2人がどんな思いで10年を歩んできたのかが伝わってきます。それにFAKE TYPE.の活動を通してエレクトロスウィングが日本で浸透してきただけでなく、今やアーティストからも「エレクトロスウィングというよりも、FAKE TYPE.の曲を歌いたい」と思われているからこそ、この楽曲提供の数にもつながっている。無名時代からまいてきた種が、今になって花を咲かせているように思いますね。
TOPHAMHAT-KYO うんうん。当時の自分たちはちゃんと種まきをがんばってたんだろうね。
DYES 全部がやりたいことでよかったよね。楽曲提供にしてもアーティストによっては、「他人のために曲を書きたくない」と考える人もいると思うんですけど、僕らは楽曲提供をするのが好きで。
TOPHAMHAT-KYO 俺らは根本的に曲作りが好きっていうのがあるもんね。
DYES ライブで人前に立つよりも、根っこはクリエイター気質なんだよね。クリエイトの部分が特に好きで、たまにライブするのが理想。
TOPHAMHAT-KYO そうそう!
DYES そんなバランス感覚の2人が運命的に出会って、FAKEをやり始めた。お互いの趣味嗜好がいろいろ合致して、いいバランスで活動を楽しめてるなと思いますね。
10年の活動で一番うれしかったのは
──改めて「Cats are dangerous EP」は、お二人にとってどんな1枚になりましたか?
DYES バラエティ豊かで聴き応えもあるし、「Cats are dangerous」を含めて今までにないFAKE TYPE.の形を提示できたと思います。自信を持って世に出せる5曲になりましたね。
TOPHAMHAT-KYO 俺は完全に息抜きって感じですね、全部自由にできたので。
DYES そうだよね。エレクトロスウィングを提示するのは、お互いに縛りプレイでもあるから。今回は高い自由度で好き勝手にやれたので、非常に楽しかったですね。
──ちなみに、10年の中で一番うれしかった日はいつですか?
TOPHAMHAT-KYO ああ……いくつかありますけど、明確にコレだなと思うのは映画「ONE PIECE FILM RED」の話が来たときですね。
DYES 俺もそれだ。
TOPHAMHAT-KYO ハハハ、そうなるよね。
DYES 2人とも「ONE PIECE」が大好きなんですよ。活動を始めた初期の頃にお世話になっていたランブリング・レコーズさんが、尾田(栄一郎)先生が「エレクトロスウィングが好きだ」という情報をつかんでいたんです。とはいえ絶対に関われるわけがないだろう、と思っていたところ、まさか尾田先生のご指名で劇中歌のお声がかかるなんてね。一番うれしかったし、あの日のことは忘れられないね。部屋の中、1人で踊ってたもん。踊りながら泣いていましたね。
TOPHAMHAT-KYO 感極まってね。
DYES アレが10年の間でぶっちぎりにうれしかった出来事だな。もちろんほかにもいっぱいあるんだけど、突き抜けてますね。オファーが来た日のことは、今も鮮明に覚えていて。メジャーデビューにあたって、昼間にユニバーサルで初めての打ち合わせしたんです。「将来的にどんなことをやりたい?」と聞かれて「アニメのタイアップをやりたいです。特に『ONE PIECE』とか……」と話していたら、その日の夕方に「ONE PIECE」の話が来たんですよ!
TOPHAMHAT-KYO あまりにできすぎてるよね。
DYES マジでビビったよ。僕は映画の曲を作ることも夢だったし、アニメの曲を作るのも夢だった。それが、理想の形で1発目から叶えられたのが「ONE PIECE FILM RED」だったので、もういろんな感情が入り混じって、脳内はすごいことになっていましたね。
──今年2月26日発売の「週刊少年ジャンプ」に、尾田先生の「FAKE TYPE.のライブへ!! 単純にあの早口を生で聴ける感動。唯一無二の迫力でした。」というコメントが掲載されていましたね。
TOPHAMHAT-KYO 4年ぶりに「ジャンプ」でFAKEの名前を出してくれて、本当にありがたいよね。
DYES めっちゃ仲よくしてくださるよね。
──今後についてはどんなことを考えていますか?
DYES エレクトロスウィングは引き続きやりつつ、もっとユニットとして大きくなっていきたいですね。今までFAKE TYPE.でタイアップの機会をもらえていても、楽曲提供がメインだったので、今度は楽曲制作から歌唱までFAKE TYPE.としてオファーをいただけるようにがんばりたい。あとは、YouTubeのチャンネル登録者数100万人を目指したいとか、ライブでZeppツアーをやれるようになるとか、武道館に立つこともそう。それらを目指してがんばっていきたいなと思います。
TOPHAMHAT-KYO 右に同じです。活動を続ける以上は、少しずつでもアーティストとして大きくなっていければうれしい。もともとアニメも好きだったので、そういうことにも関われたら幸せですね。
プロフィール
FAKE TYPE.(フェイクタイプ)
MC / トラックメイカーのTOPHAMHAT-KYOとトラックメイカーのDYES IWASAKIが2013年8月に結成した音楽ユニット。2014年4月にリリースした1stアルバム「FAKE BOX」でデビュー。2015年12月に2ndアルバム「FAKE BOOK」、2016年9月に3rdアルバム「FAKE WORLD」を発表後、2017年から約3年にわたり活動を休止する。2020年に活動を再開し、2022年7月に配信シングル「Knickknack Kingdom」でメジャーデビュー。11月にはメジャー1stアルバム「FAKE SWING」をリリースした。2023年11月にアルバム「FAKE SWING 2」を発表。2024年3月に結成10周年記念を記念したライブ「FAKE TYPE. 10th Anniversary Live in Billboard Live YOKOHAMA」を開催し、10月には5曲入り新作EP「Cats are dangerous EP」を配信リリースした。
FAKE TYPE. Official (@faketype) | X