FAKE TYPE.|個性豊かなボーカリストとの化学反応で提示する、エレクトロスウィングの次なる可能性

FAKE TYPE.がメジャー2ndアルバム「FAKE SWING 2」を11月22日にリリースした。

2022年11月発表のアルバム「FAKE SWING」で自身が得意とするエレクトロスウィングのサウンドを提示したFAKE TYPE.。1年ぶりのオリジナルアルバムとなる「FAKE SWING 2」には、映画「ONE PIECE FILM RED」の劇中曲「ウタカタララバイ」のセルフリメイクをはじめとする既発曲や、DEMONDICE、青妃らめ、nqrse、缶缶、花譜というそれぞれタイプの異なるボーカリストを迎えた楽曲が収録されており、FAKE TYPE.の新たな一面が垣間見える仕上がりとなっている。

音楽ナタリーでは、FAKE TYPE.のTOPHAMHAT-KYOとDYES IWASAKIにインタビュー。この1年の活動を振り返りつつ、各ボーカリストとの制作エピソード、アルバムを完成させて見えてきたものについて語ってもらった。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 梁瀬玉実

FAKE TYPE.を復活して本当によかった

──去年11月にリリースされたメジャー1stアルバム「FAKE SWING」以来のご登場となりますが、この1年を振り返っていかがですか?

TOPHAMHAT-KYO あっという間でしたね。FAKE TYPE.としてもそうですし、個人でもいろいろなことをやらせてもらって。中でも9月にリリースされたAdoさんの「唱」の作詞をさせてもらったのは、本当にありがたい機会でした。で、気付いたら今年もあと2カ月で終わっちゃうじゃないですか。本当に駆け抜けてきた感がすごいです。

DYES IWASAKI 僕も目まぐるしい1年でしたね。ソロで言うと楽曲提供もそうだし、最近はボカロPとしての活動も始めたんですよ。理由は単純で、今ボカロPをやったら面白いんじゃないかなって(笑)。エレクトロスウィングとボカロをかけ合わせた曲を作っています。

FAKE TYPE.

FAKE TYPE.

TOPHAMHAT-KYO FAKE TYPE.に関しても、楽曲提供の依頼が増えていて。数年前までは自分のソロ曲も作っていたんですけど、去年と今年はソロ曲は全然作れてないですね。ありがたいことにFAKEでやることがいっぱいあったので、本当に楽しく過ごせています。FAKEを復活して本当によかったなと改めて感じますね。

DYES あとは海外に進出できたりもしたので、新しい世界に踏み込んだ飛躍の1年だったのかなと思います。ちゃんと着実なステップを踏めているし、YouTubeのチャンネル登録者数も日に日に増えていて順調に活動できてますね。

客演なしのメジャー1stアルバムを経て

──「FAKE SWING」から1年を経て2ndアルバム「FAKE SWING 2」が完成しました。アルバムを作るにあたって、どんなイメージを持っていましたか?

DYES 「FAKE SWING」を作り始めたときに、エレクトロスウィングとそれ以外に音楽性を分けよう、と決めまして。エレクトロスウィングをやるときは「FAKE SWING」というアルバム名でシリーズ化することにしたんです。あとは前回のアルバムでやれていなかったことも、今回はトライしていこうと。

──なんと言っても、今作はさまざまなアーティストとコラボをされたのが大きなトピックですね。

DYES 前作は客演を一切呼ばなかったんですよね。メジャー1作目のアルバムですし、自分たちの力を示したかったので。「FAKE SWING」でそれがちゃんと形にできたと思うから、今度は間口をもっと広げていく意味で「アーティストさんをいっぱい呼ぼうね」という話を2人でして。

──自分たちだけで曲を完結させる場合は、制作のペースをある程度コントロールできると思うんですけど、第三者を招くと時間のかけ方や気を使う部分が変わってくるんでしょうか?

TOPHAMHAT-KYO ペース配分というよりも人選で気を使う部分が大きいですね。ラッパーの方を呼ぶ場合は、ラッパーを見つけるだけでいいんですよ。でもシンガーの方を客演するとなると、曲を書いてみて「誰がいいんだろう?」って一度悩むんです。この曲調ならパワフルな声のほうがいいとか、こういう曲調なら柔らかい声のほうがいいとか。誰をお呼びしたらいいのかなとなって、難航したタイミングはありましたね。中には、この曲はこの人を入れる想定で書こう、と当て書きすることもありました。

DYES IWASAKI

DYES IWASAKI

TOPHAMHAT-KYO

TOPHAMHAT-KYO

ようやくDEMONDICEを呼べる

──1曲目「Toon Bangers feat. DEMONDICE」に参加しているDEMONDICEさんとは以前から交流があったそうですね。

TOPHAMHAT-KYO 交流はかなり長いですね。彼女はもともとFAKE TYPE.のリスナーで、俺らが2014、5年くらいにヴィレッジヴァンガードでインストアライブをやったときに、海外からわざわざ観に来てくれたんです。

DYES そうそう、熱心なファンだったんです。ツアーにもお客さんとして来てくれていて「すごい情熱のある子だな」という認識でした。そしたらFAKE TYPE.のファンアートみたいな形で「FAKE!FAKE!FAKE!」のアニメーションMVを作ってくれて。それがすごく素敵な映像で気になっていたんです。

TOPHAMHAT-KYO そこから僕がソロ名義で発表した「Princess♂」のMVを作ってもらって。それを機に、FAKE TYPE.の曲でもMVを作ってもらう仲になったんですけど、まだ一緒に曲を作ったことがなかったので、ここまで来たら中途半端な形でコラボするのではなく、「ガツンとくる楽曲ができたときに呼びたいよね?」というDYESとの共通認識があって。それで今回「Toon Bangers」のトラックをDYESが作ってきて、「これはめちゃめちゃいい曲だから、ようやくDEMONDICEを呼べるんじゃないか」となりました。

──「Toon Bangers」のサウンドを聴いて、遊郭の情景や花魁の姿が思い浮かびました。

DYES 「Toon Bangers」は僕の中で“ジャパニーズエレクトロスウィング”なんですよ。和楽器の三味線と尺八を取り入れた新しいエレクトロスウィング。そんな和の要素を感じるエレクトロスウィングに、アメリカ人であるDEMONDICEを呼ぶのが面白いかなと思って、そこは最初から狙って作りましたね。

FAKE TYPE.

FAKE TYPE.

──歌詞に関しては「開口一番に邂逅する」で歌が始まるように、アルバムのオープニングにふさわしくて、メッセージ性というよりも勢いを感じました。

TOPHAMHAT-KYO 正直に言うと、歌詞にはそんなに意味がなくて(笑)。単純に勢い任せではあるんですけど、「Overseas!」と歌っていたり、サビがすべて英語詞になっていたりと、海外の方に意識を向けた曲になっています。DEMONDICEのパートは、彼女が日本で住んでいた場所が歌詞になっていてパーソナリティを感じました。あと、FAKE TYPE.もDEMONDICEもMVがアニメーションという共通点があって。どちらも音楽にアニメをうまくかけ合わせていることから「アニメを使って盛り上げる」というコンセプトがピッタリだなと思い、タイトルを「Toon Bangers」にしました。

──「無敵素敵汽笛鳴れば あぁしらのお通りです」というフレーズもいいですよね。すごくオリジナリティがある。

TOPHAMHAT-KYO ハハハ。普段聞き慣れない言葉が並んでいると面白いですよね。あえて間違った日本語とか「普段の会話でこんな日本語は使わないよね」というフレーズを入れると、響き的にも面白く聞こえるので、そこは意識的にやっています。

DYES よくこんな言葉を使うなとか、どこで覚えたんだろうと毎回思います(笑)。

──「情状酌量の余地がない程に狂気的」も語呂が気持ちよくて、思わず口ずさみたくなるフレーズなんですよ。

TOPHAMHAT-KYO 回りくどい言い回しが好きなんです。ひと言で済むこともあえて長ったらしくする、みたいな。そうすると言葉数が増えるので、ラップとしてもいいのかなって。