FAKE TYPE.|メジャー1stアルバムは純度100%の仕上がり、トップハムハット狂&DYES IWASAKIが追求するエレクトロスウィング

FAKE TYPE.が11月16日にメジャー1stアルバム「FAKE SWING」をリリースする。

2022年の興行収入1位を獲得するなど大ヒットを記録中の映画「ONE PIECE FILM RED」で、劇中キャラクター・ウタが歌唱する楽曲を提供したことでも話題を集めているFAKE TYPE.。メジャー1作目のアルバム「FAKE SWING」には、代表曲「FAKE STYLE」「Nightmare Parade」などをリバイバルした楽曲や、彼らが得意とするエレクトロスウィングのサウンドを存分に楽しむことができる新曲など全10曲が収録されている。

音楽ナタリーでは、FAKE TYPE.のトップハムハット狂とDYES IWASAKIにインタビュー。2人にとって飛躍の年となった2022年を振り返ってもらいつつ、「FAKE SWING」の制作秘話や各楽曲に込めた思いについて話を聞いた。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)

思いがけないところにまで届いた

──現在上映中の映画「ONE PIECE FILM RED」が大きな話題を呼んでいますね。興行収入180億円(2022年11月現在)を突破し、今年公開された映画の1位に輝いただけでなく、日本の歴代興行収入ランキング9位になりました。お二人は、Adoさんが劇中キャラクター・ウタとして歌唱している楽曲の1つ「ウタカタララバイ」を提供していますが、反響はどうですか?

DYES IWASAKI 反響はめちゃめちゃあるよね!

トップハムハット狂 うん。反響で言うと、自分よりもダイス(DYES IWASAKI)の身の回りで面白いことがあったよね。そんなところまで届いているんだとびっくりした。

DYES そうだね! FAKE TYPE.の活動を知らないであろう地元の人たちにまで、「ウタカタララバイ」が届いていて。中学の同級生からいきなり連絡が来たりとか、そういう予期しないことがけっこうありました。

FAKE TYPE.

FAKE TYPE.

──それだけの出来事ですからね。

DYES 僕らは何もしてないのに、Twitterのトレンドに頻繁に「#ウタカタララバイ」が上がっていて。もはや、この曲が1人歩きしているんですよ。あと自分の中で一番衝撃だったのが、FAKE TYPE.の曲は難しいので、カラオケでほとんど歌われない印象があったんですけど、「ウタカタララバイ」がカラオケの月間ランキングの上位に入ったみたいで。それを知って「本当に流行っているんだな……」と実感しました。

──カラオケとはまた違いますけど、メジャー2ndシングル「真FAKE STYLE」のインスト音源を使った歌唱動画をYouTubeやニコニコ動画、TikTokにて指定のハッシュタグとともに募集し、その中から優勝者を決める企画「『真FAKE STYLE』の歌ってみろ選手権」が開催されましたね。

トップハムハット狂 8月から募集しまして、とても多くの方から応募がありました。その結果をこのインタビュー後に生放送で発表するんですよ。

──応募数はどうでした?

トップハムハット狂 80人くらいですね。1人ひとりちゃんとチェックしたうえで、優勝者を決めました。

──DYESさんが言ったように曲の難易度が高いにも関わらず、そこに80人も応募があったのは、それだけ楽曲が多くの人に届いている証拠ですね。

トップハムハット狂 そうですね。昔はインストを公開することに抵抗があって、頑なにやらなかったんです。でも2020年に活動を再開したら時代も変わっていて、誰かが歌ってくれることによって曲が広まって、自分たちの元曲も伸びる流れができあがっていたので、自分が前時代的な考えだったと気付きました(参照:トップハムハット狂とDYES IWASAKIによるFAKE TYPE.、約3年ぶり活動再開)。再開後に「インストもどんどん公開していったほうがいいよね」という思考になれたのはすごくよかったと思います。その結果、インストではないですけど「FAKE LAND」(2021年2月発表のアルバムの表題曲)がTikTokでバズるということもありました。そうやって誰かに曲を歌ってもらったり使ってもらったりする機会を、こっちから積極的に作っていくべきかなと。

FAKE TYPE.の純度100%な作品を

──8月に実施したインタビューでは「僕らのリスナーからしたら『FAKE TYPE.の曲も作ってよ』みたいな声があると思うんです。でも、その人たちに伝えたいのは、大丈夫! めちゃめちゃ作ってるから!」と話していました(参照:FAKE TYPE.「真FAKE STYLE」インタビュー)。で……そのあと9月に、メジャー1stフルアルバム「FAKE SWING」がリリースされると聞いて「そんな近々の話だったんだ!」と驚きました(笑)。

トップハムハット狂 ハハハ、そうですね(笑)。「年内に出すよ」という意味で、あのメッセージを残したんです。ありがたいことに「FAKE TYPE.として歌った曲が聴きたい」と言ってくれる人がいるし、僕らも「FAKE TYPE.の純度100%な作品も届けたい」という気持ちがずっとあったので、それを形で表しました。

トップハムハット狂

トップハムハット狂

──このアルバムには今年配信された楽曲が5曲入っています。もちろん前から聴いていた曲ではありますが、1枚のアルバムとして聴いてみると、すごくまとまりがいいんですよね。もしかしたら、配信リリースしてからアルバムのどこに楽曲をはめようか考えたのではなく、すでにアルバム全体のイメージができていたうえでリリースしていたんじゃないかなと思ったのですが、いかがでしょう?

DYES あ、まさにそうなんですよ。アルバムを作る前から曲順を考えていて。1曲目はちょっと明るめとか、2曲目は激しく盛り上がる感じとか、「こんな曲順だといいよね」と最初に決めたんです。それで軸になるような曲を作っていって、そこから色分けするよう制作を進めていました。

──今年1月に「At Atelier」を配信した時点で、アルバムの構想は固まっていたんですね。

DYES 去年の11月ぐらいには、トラックはほとんどできあがっていましたね。アルバム全体のテーマとしては、僕がアッパーな感じが好きなので、なるだけ盛り上がる曲を多く入れたいというのはありました。あとはエレクトロスウィングオンリーの10曲で固めようと。とはいえ同じテイストの曲調ではなくて、ちゃんと棲み分けをさせることを意識しました。

ストーリー性を意識したリリック

──リリックに関して、アルバム全体でイメージされたことはありますか?

トップハムハット狂 前作「FAKE LAND」のときに、自分の感じたこととか内面の部分をちょっと出しすぎちゃったので、「FAKE SWING」ではストーリー性のある曲を入れたかったんです。それこそ「真FAKE STYLE」を除いた先行配信曲「At Atelier」「Deep Sea Swing」「Beauty Unique Boutique」「Knickknack Kingdom」は、ちょっとした物語性のあるリリックになっているので、自分の目標は達成できましたね。

──逆に、6曲目の「I'm out」以降はトップハムハット狂さんの思いや考えが全面に出ていて。

トップハムハット狂 ハハハ、そうですね(笑)。

──後半の曲たちも最高でした。

トップハムハット狂 ダイスとの打ち合わせで「こういうトラックを作るからね」と仕事の話をしたあとに、いつも世間話をするんです。そこでわりとディープな話をして、その内容がリリックに反映されることが多い。まさに後半の曲たちはそんな感じで、「こんなリリックになったよ」と歌詞を送ると「あれ? この前話したことじゃない?」って感想がダイスから届くんです(笑)。

DYES リリックに最近の心情が出ることが多いので、「あのときの話がここに反映されたのか!」と察しちゃいますね(笑)。

DYES IWASAKI

DYES IWASAKI

──メジャーで作品をリリースするとなったら、幅広い層に届けることを意識して聴く人を限定しないリリックにしがちですよね。いい意味でメッセージを薄くすることで、誰にでも親しみやすいようにする傾向がある。ただ、このアルバムはこれまでのFAKE TYPE.らしさを損なわずに、さらにアップデートされて、メッセージのパンチ力も上がったように感じました。

トップハムハット狂 そうですね。作品の方向性とか魅せ方について誰かに舵を取られちゃうなら、メジャーでやりたくない、という気持ちがあって。そもそも「今までと変わらず自分たちのやりたいようにやらしてもらえるなら、ぜひメジャーでやりたいです」というスタンスで契約したんです。レコード会社もそれを受け入れてくれたので、本当に楽しくやらせてもらってますね。