──eillさんにとって「仲間」とは?
今のバンドメンバーやスタッフのチームですね。よくほかのアレンジャーさんに「いつもどうやって曲を作ってアレンジしているんですか?」と聞かれるんですが、「いや、わかんないんですよね」としか言えなくて(笑)。いつもスタジオに入って、セッションしているといつの間にか曲ができているから本当にわからないんです。みんなのパワーや知恵が、ギュッと濃縮されて1曲になるみたいな感じで。
──つまり「eill」とは、eillさん本人のことであると同時に、チーム全体のことでもある、みたいな感覚ですか?
そうですね。今のチームから1人でも欠けたら“eill”にはならないと思います。チームのメンバーも、みんな勝手に「俺がeillだから」とか言ってるんですよ(笑)。ただ、「MAKUAKE」のときは本当にすんなり曲が書けたのに、最近は客観的に「eillはこうだよね」「eillだったらこうすべきだよね」みたいなことを考えすぎてしまう。チームのみんなで「あの頃の気持ち、取り戻したい!」ってよく叫んでいます(笑)。
──2ndアルバム「SPOTLIGHT」のジャケットを地元のコンビニの駐車場で撮影するなど、地元を大事にしている印象もあります。
地元は大事ですね。「20」という曲のMVに出演してくれた子たちも地元の友人たちなんです。1人はプロのネイリストになって、今は私のネイルもやってくれていたり、撮影中はお腹に赤ちゃんがいた子が今は2児の母になっていたり。「みんな、一緒にがんばろうぜ」と励まし合いながら、それぞれの道を少しずつ前に進めていけていることが、本当にうれしくて。そういうリアルな気持ちを自分は楽曲にしていきたいし、まずは近くにいる人を応援する曲を作りたい。自分の周りにいる人たちこそ、最高のインスピレーションをもらえる存在ですね。
──eillの世界観を、自分をよく知る仲間たちでクリエイトしていきたいという「DIY精神」みたいなものもありますか?
それはあるかもしれないです。そのほうが私の素に近い部分を出せるかなと思うし。最近お友達がお洋服のブランドを立ち上げたので、衣装を作ってもらったり、いつかコラボもしてみたいなと思っています。
──eillさんは、どんな「自分磨き」をしていますか?
もともとファッションには興味がなかったんですけど、eillとして人前に立つようになってからはファッションへの関心が高まりました。スタイリストさんからいろいろ教えてもらったり、自分で勉強したりしているうちに、気付いたらお洋服が大好きになって、今では海外から通販で買ったりもしています。
──おしゃれの楽しさって、どんなところにありますか?
お洋服は私にとって“強くなれるアイテム”なんです。ライブでは赤リップを付けているんですけど、そうしないとeillになれないというか、弱い私が強い私になるための魔法みたいなものなんですよね。よくファンの方から「eillちゃんを好きになって、いつもの自分とは違う種類の洋服を買いました」とか「似合うかわからないけど赤リップを付けてみました」「衣装を真似してみました」みたいなメッセージを、お手紙などでいただいて。ファッションは、そうやって誰かのマインドをポジティブに変えていく力があるんですよね。ファンの子にとって自分がそのきっかけになっていることも、すごくうれしいし光栄です。
──特にお気に入りのブランドはありますか?
ステージではマニッシュな格好が多いので、普段はガーリーなものを身に付けることが多いです。最近はHOUSE OF SUNNYというブランドがすごくお気に入りですね。カラフルで着ているとハッピーになれるんですよ。
──先ほど赤リップの話がありましたが、ほかにメイクでこだわっていることはありますか?
いつも目元に跳ね上げラインを引いています。私は丸顔でほっぺが出ているのがすごいコンプレックスなんです。韓国の美女みたいになりたいのに、自分の童顔を鏡で見て「全然違う!」っていつも思う。だからメイクはいろいろ研究していますね。最近はファンの方からも「跳ね上げラインのやり方を教えてください」と言われることも多くて、研究のしがいがあったなと思います。
──新曲「ここで息をして」は、アニメ「東京リベンジャーズ」エンディング主題歌として書き下ろされたものですが、オファーが来たときにはどう思いましたか?
「本当に?」と思いました。「絶対にいい曲にしてやる!」「最高の90秒尺を、死ぬ気で作るぞ」みたいな感じで、チームみんなで気合いを入れて取り組みました。
──そもそもeillさんはアニメが好きなんですか?
大好きです。“妹系”アニメが特に好きで、好きなアニメからインスパイアされてできた曲が「Ma boy」なんですよ。普段からアニメにはインスピレーションをたくさんもらっています。
──なるほど。そんなアニメ好きのeillさんは「東京リベンジャーズ」を観てどんなふうに感じましたか?
タイムリープものってやっぱりいいなと。ヤンキーマンガが原作なんですけど、1人ひとりキャラが立っていて“全員主人公”みたいな感じで誰でも楽しめるアニメだと思います。ビジュアルもすごくカッコよくて、3月のワンマンライブでは作品の中にも出てくる特攻服を着させてもらったんです。
──とても似合っていました(笑)。曲の中に、アニメの世界観をどう取り込んでいきましたか?
この曲は、物語のヒロインである橘日向ちゃんの気持ちを書いた歌詞なんです。彼女はとてもまっすぐな性格の子なんですよ。周りの人たちみんなを幸せにするような、太陽のような女の子。でも運命は死に向かっていて、それを(花垣)武道が助けようとする話で。私は日向ちゃんみたいなタイプじゃないから、「彼女のまっすぐな笑顔の裏には何があるんだろう?」「私が日向ちゃんなら、きっとこう思うだろうな」みたいなことを考えながら歌詞を書いていきました。
──ジャズ、ソウル、ロックの要素もブレンドされたアレンジで、目まぐるしく変わっていく展開も今までのeillにはなかったタイプの楽曲だなと思いました。
いつも一緒に曲を作っている宮田“レフティ”リョウさんと一緒に作ったんですけど、今までチャレンジしたことがなかったビッグバンドっぽいアレンジを取り入れてみたり、ロックっぽい要素も入れてみたりしました。おっしゃるように、「新しいeill」を感じてもらえる1曲に仕上がったかなと思います。
──サビのメロディも、実は歌うのがすごく難しいのではないかと思いました。
そうなんですよ。「ここで息をして」というタイトルなのに、「どこで息をしたらいいの?」という感じです(笑)。サビは一度作ったものを組み替えたんですけど、そしたら息継ぎする場所がなくなっちゃったんですよね。でも、音源としてはすごくカッコよくなったので、もうライブでは気合いを入れて歌うしかないなと思っています(笑)。
──日本語だからできる言葉遊びも印象的です。
「SPOTLIGHT」という曲を書くまでは、歌詞よりもメロディやサウンドを優先させていたんです。歌い方も今とは全然違って、「カッコよく聴かせるにはどうしよう?」ということばかりを考えていて。でも「SPOTLIGHT」を書いて、その歌詞に共感したと言ってくれる人がいることがわかってからは、その考え方も変わってきて。言葉遊びも含めて日本語だからこそできる歌詞や、聴いてくれた人にいろいろなことを考えてもらえるような歌詞を書きたいと思うようになりました。
──楽曲やファッションなどさまざまなことで、ファンのリアクションやメッセージに気付かされることが多いのですね。一緒に成長しているというか。
まさに。ファンの人たちは、私の成長過程を見守ってくれているように思います。
──最後のキーワードは「ヒカリ」です。
「ヒカリ」は、これから私が歌っていきたいこと、伝えていきたいことです。
──というのは?
「自分の人生は一度きり。誰かに光を当ててもらうのではなく、自分で光を当てるものなんだよ?」って。例え今は暗闇の中にいたとしても、自分は光を持っているのだということを忘れないでほしいんです。歌を通して、みんなが自分の中にある光を探す手伝いをしたい。自分が光を与える存在にないたい気持ちはもちろんあるけど、そうなれなかったとしても、光のある場所を指し示せるような、そんな存在になりたいと今は思っています。
ツアー情報
- eill Live Tour 2021
-
- 2021年6月25日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2021年6月26日(土)大阪府 Live House Anima
- 2021年7月15日(木)東京都 TSUTAYA O-EAST
衣装1
ジャケット、パンツ / KAIKO
インナー / VIAVANDA
アクセサリー / すべてスタイリスト私物
衣装2
シャツ、インナー、パンツ、ブーツ / すべてVIAVANDA
アクセサリー / すべてスタイリスト私物
2021年4月19日更新