私立恵比寿中学|そんなこんなで10周年 これがエビ中の「MUSiC」

フェス対応のエビ中楽曲

──事前にどんなアルバムになるかという話は皆さんにもあったんですか?

星名 具体的な資料をもらいました。秋ツアーのときかな? みんなで焼肉を食べに行ったとき「今度のアルバムはこんな作品にしようと思う」と資料を渡されて。そのときにはもう「MUSiC」というタイトルが付いてました。10周年だからこれまでお世話になった作家さんに曲を書いてもらいたいとか……ほぼほぼ決まった状態で教えてもらったんです。

──ではその「MUSiC」を構成する12曲について、順を追って話を聞かせてください。オープニングの「Family Complex」は、すっかりライブ定番曲となった「サドンデス」の作者である岡崎体育さんによる2曲目のエビ中提供曲となります。

安本 最強だよね。

星名 めっちゃ好き。絶対フェスで歌いたい。

真山 体育さんの得意とするEDMバチコンの曲で、初めて聴いてもノれると思います。

小林 私もまあエビ中にそんなに長いこといるわけではないので、大きいことは言えないですが……。

真山 いや、わりと長いこといますよ?(笑)

小林 エビ中を知っている人が書いた曲だからこその愛を感じる曲がこのアルバムにはたくさんあって、体育さんの歌詞からも愛を感じました。

安本 体育さんも「エビ中のスタッフよりエビ中のことを知っている人の歌詞だ」と言われたらしくて。私たちのことをいろいろ知ってくださっている方だからこその歌詞で……「体育さあーん」と思いました(笑)。

──「サドンデス」はメンバーがバトルするというギミックありきの曲でしたが、今回はエビ中が外へ向かっていくうえでの心意気を力強く書いた内容で。

小林 曲の展開はすごく目まぐるしくて、最初はイケイケだったのに最後はエモい気持ちになって「私は何を聴いていたんだろう」みたいな気持ちになります。

中山 普通は5分に詰め込める内容じゃないなと思いました。

──2曲目の「イート・ザ・大目玉」は恒例の野外イベント「ファミえん」のために作られた楽曲で、この夏を盛り上げた1曲ですね(参照:エビ中、平成最後の「ファミえん」昼夜で2つの表情見せた2DAYS)。

真山 夏を盛り上げたし、年末まで活躍してくれた勝負曲です。

──フェスに出るときはロック調のガツンと仕掛ける曲が多く選ばれますけど、「イート・ザ・大目玉」もその中の1つとして定着しそうな感じでしょうか。

星名 エビ中の攻め曲。

柏木 メンバーでセトリを決めるとそういう曲を選びがちです。闘争心むき出しになるから。全曲「怒り!」みたいになっちゃう(笑)。

安本 自分たちが解放される瞬間がそういう曲を歌っているときだから、フェスとかに出るときはそういうところを観てもらいたくて。

VTuberも現役高校生も取り込んで

──3曲目の「明日もきっと70点 feat.東雲めぐ」はVTuberとのコラボレーションという新機軸ですが、作詞作曲はインディーズの頃からおなじみの、さつき が てんこもりさんですね。

真山 今回のアルバムでは私たちが初めて、ゲストを迎え入れるというコラボをいくつかしていまして。これはその中の1曲です。めぐちゃんの声がエビ中になじみすぎていて、全然違和感がないんですよ。

星名 MVも撮ったんですけど、かわいらしい感じになりました。振り付けはすごくわかりやすくて、今流行りのTikTokみたいな(笑)。

──VTuberやTikTokなど、リアルタイムのユースカルチャーを取り入れるのはエビ中としては珍しいですね。

柏木 確かに“今感”がすごい。MVの撮影をしているときはめぐちゃんがいないからイメージで演じるんですけど、彩花が誰もいないほうを向いて「ねー、ねー」ってやってるのが面白かったです(笑)。

真山 曲の雰囲気自体は、昔からのエビ中らしい雰囲気があると思うんですけど……メロディラインにブルーノート(ジャズなどに用いられる音階)が使われていたりして。てんこもりさんもエビ中に大人感を出してきたなと思いました。

──エビ中が昔から持っていた雰囲気を守りつつ、密かにスケールアップを図っているという。

真山 そうなんですよ。ありがたいですよね。

──4曲目の「踊るロクデナシ」は現役高校生のMega Shinnosukeさんによる書き下ろしということで、同世代どころか歳下からの楽曲提供です。

小林 私と莉子ちゃんが同い年なんですよ。びっくり。同い年でこんな曲が書けるなんて……私も才能が欲しかった!(笑)

真山 しかも人生5曲目ですよ(参照:エビ中「MUSiC」収録曲を追加発表、高校生が書いた「人生5曲目の曲」採用)。

星名 18歳が書いた曲とは思えない。

──ソリッドなファンクで、歌詞も不思議なセンスですよね。

安本 でも本人はめっちゃ普通の高校生で。レコーディングにも来てくれたんですけど、スタッフさんがお菓子を持ってきたら「……これ食べてもいいんですか? よっしゃー!」って。

星名 かわいい(笑)。

安本 でもディレクションのときは、しっかりモットーを持っているから「僕はこういうイメージで書いたんです」と真剣に教えてくれて、そのギャップがすごいなって。

──ずっと大人に囲まれてきたエビ中が、ついには同世代、歳下と一緒に作品作りをする日が来るとは。

星名 歳下の方とこういう形で仕事をする年齢になったんだと思うと、本当に大人なんだな私たちって。

真山 歳下に使われる敬語がもどかしい(笑)。

シリアスな大人で勝負するエビ中

──そして5曲目の「曇天」はこれが3曲目の提供となる吉澤嘉代子さんの作詞作曲です。牧歌的な雰囲気だった「面皰」「日記」とは違ってシリアスなムードで、大人びた雰囲気ですね。

星名 これは発注をするときから「大人な曲を」とお願いしているんです。

小林 すごい好き……。

中山 振り付けも合わせるとさらにいいんですよ。

小林 嘉代子さんの世界観がすごく出ていて……現実を突き付けられるような気持ちになるけど、それを「ケセラセラ」というファンタジーな言葉で包み込んでいるんです。

安本 エビ中の曲ってさ、歌詞でガールズトークできるものが少ないけど、この曲は同年代の女の子にも上の人にも、この歌詞をテーマにガールズトークを繰り広げてほしい。

真山 このアルバムの中でも際立ってわかりやすく「勝負」をしている感じがしました。MVをイラストにしたのもそうだし、アルバムのジャケット写真にもアーティストっぽさがあって、「試しにこの方向性やってみるか」みたいな。こんなエビ中を皆さんがどう受け止めてくれるのか、すごく楽しみです。

──アルバムの情報が出た最初のタイミングで発表されたのがこのMVとジャケット写真だったので、ファンは驚いたかもしれませんね。シリアスかつ大人なエビ中になっていたので。

真山 テレビで「金八DANCE MUSIC」を聴いてエビ中を知ってくださった方にぜひ聴いてほしい1曲ですね(笑)。ギャップがすごいと思うので。

──たむらぱんさんが「大人はわかってくれない」「誘惑したいや」「ポップコーントーン」「感情電車」などでエビ中の1つのトーンを作り上げてきたように、吉澤さんも新しいエビ中の色を付ける作家として定着しつつありますね。

真山 そうかもしれない。「面皰」は学生のほろ苦い恋愛の曲で、「日記」では結婚を妄想して、「曇天」ではいろいろ経験して傷付いちゃったんだね……みたいな(笑)。

柏木 だんだん大人になってる(笑)。

──そして問題作「でかどんでん」と。

真山 落差!

小林 どんてんからでかどんでん、って響きだけでつなげたんじゃないかなあ(笑)。

真山 「でかどんでん」は発売してしばらく経ってから反響をいただくことが増えたんですよ。ご挨拶に来られた方のお子さんが大好きだとか。

柏木 私は最近大好きなの。インストがめちゃめちゃカッコいいんですよ。

──リリース時は、6人体制の1発目が「でかどんでん」?という戸惑いもあったかもしれませんけど(参照:私立恵比寿中学「でかどんでん」インタビュー)。

星名 ライブで歌っているうちにどんどん好きになりました。